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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
34/169

コゴロー大暴れ!

「前門の虎、後門の狼」と言うことわざがあるが、今のアケチ探偵とコバヤシ青年が、まさに、その状況だった。

 夜の路上で、凶悪犯罪者のクモ男とニジュウ面相に、前後から挟み撃ちにされて、今のアケチたちは、文字どおりの絶体絶命の状態にと追い込まれていた。いちおう、アケチの方も、コバヤシと一緒で二人組だったのかもしれないが、でも、実質上、クモ男とニジュウ面相のコンビの前では、実力差がありすぎなのだ。

「クモ男くん。ただ殺すのでしたら、すぐに終わってしまいます。我々は超一流の殺し屋なのですから、少し、アケチくん達にも、ハンディを与えてやりませんか」冷ややかに、ニジュウ面相が提案した。

「そうだな。では、先に、我々のエモノだけでも、こいつらに見せてあげる事にするか」

 クモ男は、そう言うと、先ほど、庄太郎を殺すのに使った拳銃を取り出して、片手に構えてみせたのだった。

「お前の殺人道具は、ナイフじゃなかったのか?」と、アケチが指摘する。

「ふふふ。まあ、これを見ろ!」

 クモ男が、ばあっと自分のジャケットを広げてみせると、その内側には、一面にナイフが隠されていたのだった。やっぱり、ナイフが武器なのは、間違いではなかったのだ。しかも、ちょっと変わった形のナイフなのだった。柄の部分が丸い円柱状なのである。これは、庄太郎を殺害しただけではなく、玉村邸の倉庫の壁に「6」の数字を描いた時にも使われていたナイフだったのだ。

「このナイフと拳銃は、実はセットなのだよ。ほら、このように、ナイフを拳銃の先にと装填する。そしたら、ナイフを、まるで弾丸のように発射できる訳だ」

 事実、クモ男は、それを実演してみせたのだった。彼は、拳銃の先に取り付けたナイフを、アケチの足元の地面めがけて、発砲してみせたのだ。ナイフは、鋭く、路上へと突き刺さった。こんな遠くから放ったナイフでも、固い路面へと、深々と食い込んだのである。

 なんて、驚くべき発明品であろうか!

 クモ男は、ナイフも拳銃も、このように使用する為に、あえて改造したのだ。そして、この特殊拳銃があったからこそ、玉村邸の倉庫の壁にも、あの奇妙な「6」のカウントを刻む事ができたのである。さらに、このナイフ銃は、殺人道具としても、十分に有効なのだ。

「遠くの獲物にだって、がっちりと正確にナイフを当てる事ができるし、しかも、銃弾以上の深い致命傷を与える事もできる。まさしく、これこそは、殺人の芸術品だろう?」クモ男は、得意げに笑ったのだった。

「さて、お次は、私の方を見てもらいましょうか」今度は、ニジュウ面相が喋り出した。

「まさか、また、青銅の魔人に化けるつもりか?」と、アケチ。

「いいえ。一度、敗れた変身で戦うような事はいたしませんよ。今回、私が選んだ変身は、これです!」

 そう言って、二十面相は、ガバッと、着ているインバネスコートをひるがえした。すると、彼の姿は、一気に変形メタモルフォーゼしたのだった。彼が身に付けていた衣類は弾け散り、彼の体は、みるみる膨れ上がった。それも、人間の形にではないのである。全身が黒い毛で覆われており、明らかに、動物の姿に変わっていくのだ。

 ニジュウ面相の体は、特に、左右へと広がっていった。5メートル近くまで、両手が伸びてしまった。もはや、それは腕なんかではないのだ。翼なのである。黒い、毛むくじゃらの大きな羽なのだ。同時に、ニジュウ面相の頭と体の方も変身していた。頭部はネズミのような形状となり、腹も毛に包まれたケモノの胴体になったのである。

 そこに出現したのは、どう見ても、悪魔を彷彿させるような大コウモリなのだった。

「いかがでしょう、アケチくん。今日の私は人間コウモリです。蜘蛛男スパイダーマン蝙蝠男バットマンの包囲網を前にして、果たして、君はどう立ち向かいますか?」

 大コウモリのニジュウ面相は、巨大な翼をバサバサと振りながら、楽しげに笑ったのだった。

「さあ、アケチくん!君も、早く、コゴローに変身しなさい。それでこそ、倒しがいがあると言うものです。ほら、早く!」

 前後から強敵にロックオンされて、アケチも、いよいよ、本気モードになったのである。

「言われなくても、分かってるよ!コバヤシくん、頼む!」

 アケチとコバヤシは、お互いの顔を見合った。もはや、彼らの方も、心は決まっているのだ。

「目覚めよ、コゴロー!」真顔のコバヤシは、アケチに向かって、大声で呼び掛けた。

 すると、アケチも、たちまち、もう一つの体質であるコゴローへと変わっていったのである。顔つきも変化し、肉体もモリモリと筋肉隆々となり、そこに居たのは、早くも、普段のアケチなどではなかった。彼の第二の姿であるコゴローなのだ。

「よおし!あとは、俺に任せとけー!ヨシオ、お前は、隅の方にでも引っ込んでいろ。ヘタに決闘バトルに巻き込まれて、ケガをしても、面白くないからな!」コゴローは、意気揚々と怒鳴った。すでに、彼は、完全に、荒々しいコゴローにと変わってしまっているのである。

 コバヤシも、コゴローの忠告に素直に従って、こそこそと、道路のはじの方まで移動したのだった。

 あらためて、コゴロー一人が、クモ男と大コウモリの間に挟まれた布陣となった。いよいよ、両者の格闘が始まるのである!

 真っ先に動いたのは、案の定、クモ男だった。クモ男は、装填したばかりのナイフを、いきなり、コゴロー目がけて、発砲したのであった。

 今度は、さっきのような威嚇射撃ではない。本気で、コゴローを狙って、撃ったのだ。クモ男も、そうとうな銃の腕前なので、決して、狙いを外す事はないのである。

 しかし、コゴローは、敏速な動きで、軽く、ナイフをかわしたのだった。体質変化を起こす事で、コゴローは馬鹿力になるだけではなかったのだ。運動神経や動体視力の方も、それ相応にアップしていたのである。そんなコゴローにかかれば、いくら銃で発射していると言っても、しょせん、投げナイフをよける事など、目じゃないのだ。

「ちくしょう!」

 クモ男は、舌打ちしながら、次のナイフを拳銃に装填しようとした。そうなのだ。でかいナイフが弾がわりだと、さすがに連射はできず、新しいナイフを、毎回、装填しなくてはいけないのである。

 そうやって、クモ男がモタモタしているうちに、コゴローは反撃に出ようとした。クモ男むかって、ダッシュで近づき、組みつこうとしたのだ。

 しかし、ここは、1対2の変則マッチだった。コゴローが動き出す前に、続いて、ニジュウ面相の化身した大コウモリが、コゴローへと襲いかかってきたのだ。

 大コウモリは、覆いかぶさるように、コゴローの上に飛び乗った。それを、コゴローは、すかさず迎撃して、ぐっと大コウモリの体を押さえると、逆に突き飛ばしたのである。

 見かけの迫力の割には大した事なくて、大コウモリは、あっさりと押し飛ばされてしまったのだった。そうして、いったん身が自由になったコゴローのことを、クモ男のナイフの第二弾が早くも狙っていた。

 不意打ちするように、ナイフは飛んできたのだ!だが、一瞬、コゴローの方が、それに気が付くのが早くて、紙一重で避けてしまったのだった。襲ってきたナイフは、コゴローの顔のそばをかすめて、空を切って、いずこかへと飛んでいった。

「この野郎!」と、怒ったコゴローは、再び、クモ男の方に体を向けた。

 動揺したクモ男が、なかなか、次のナイフを準備できないでいるうちに、たちまち、コゴローが、彼のそばにまで走り寄ってしまった。今度は、大コウモリのサポートも間に合わなかったのだ。

 クモ男は、やっと、ナイフを拳銃に込めて、コゴローの方へ銃口を定めたが、その寸前に、その拳銃をコゴローにぶん殴られてしまったのだった。ナイフを発射する時間もなく、あっけなく、ナイフ銃はクモ男の手から叩き落とされてしまったのである。

 しかも、コゴローの攻撃は、それだけでは終わらなかった。そのまま、コゴローはクモ男にとぶつかっていって、クモ男の首をグイグイと締め上げたのだ。さすがの殺人狂博士も、こうも力づくで圧倒されてしまったら、全く、手も足も出ないのである。

 ようやく、態勢を整え直した大コウモリが、クモ男を攻めているコゴローへと、真後ろから、飛びかかっていった。コゴローは、前後から、敵に押さえ込まれてしまったのだ。

 しかし、この程度の事で参るようなコゴローではなかった。

 しばらく、こう着状態は続いたものの、ついには、コゴローがぐーんと手足を押し広げて、クモ男のことも、大コウモリのことも、周囲に弾き飛ばしてしまったのだ。

「なんて、怪力だ!」

「いやはや、ここまでのパワーの持ち主とは、計算外でした」

 クモ男も大コウモリも、すっかり焦燥してしまい、もはや、戦意喪失しているのである。

 一方のコゴローは、まだまだ元気が有り余っていて、なおも戦うのをヤメようとはしなかった。彼は、動きの鈍くなった大コウモリへと、思いっきり、突進していったのだ。そして、ぐいっと、大コウモリの頭を掴んだのだった。

「やい、ニジュウ面相!ちょうどいい機会だ!このコウモリの仮装をはいで、てめえの素顔を拝ませてもらうぜ!」コゴローは、元気に、うそぶいたのだった。

「こら。やめろ!やめるんです!」

 大コウモリのニジュウ面相はうろたえて、必死に抗った。でも、こんな大きな被り物をしていたのでは、なおさら、ろくに抵抗もできなかったのである。コゴローの方も、とことん調子に乗ってしまい、絶対に手加減はしなかったのだ。

 その結果、ついに、大コウモリの頭は、コゴローによって、もぎ取られてしまったのである!コウモリの形をした頭部は、首の根元から引きちぎれてしまい、その内側にあったニジュウ面相の頭がむき出しになってしまったのだ。

「あ!」と、コゴローは、呆気にとられた。

 コウモリの頭の下から現われたニジュウ面相の顔とは、なんと、アケチ探偵の顔だったからである。

 もちろん、ニジュウ面相の正体が、アケチ探偵であるはずがない。恐らくは、次の計画の準備か何かで、ニジュウ面相は、あらかじめ、大コウモリの下に、アケチの姿にも化けていたのであろう。

 しかし、オツムの方が弱くなっていた今のコゴローでは、その事がすぐには理解できなかったらしかった。ニジュウ面相が自分であった事に、頭が混乱してしまい、彼は、うっかり、動きが止まってしまったのである。

 この瞬間を逃すニジュウ面相とクモ男ではなかった。彼らは、この絶好のチャンスに、急いで、コゴローのそばから離れたのだ。二人は、寄り添って、コゴローのいない方向へと走り出した。不利になったら、あっさり逃げ出すのも、戦略の一つなのである。いわゆる、三十六計と言うヤツだ。しかし、コゴローの方は、まだ狼狽したままで、動こうとしなかった。

「クモ男くん。ナイフ銃は、装填するのに時間がかかり過ぎです。もう少し、改良した方が良さそうですね」

「ニジュウ面相。お前こそ、そのコウモリの変身は何だ?コウモリなら、せめて空ぐらい飛べなきゃ、ちっとも役に立たないじゃないか!」

「お互い、まだまだ、反省点はありそうですね」

 アケチの顔をしたニジュウ面相とクモ男の二人は、互いに肩を貸しあって、寄り添った状態で歩きながら、そんな事を呟き合っていたのだった。

「ああ、もう!コゴローさん、早く、追い掛けて!逃げちゃいますよ!」

 ずっと硬直しているコゴローを見ていて、ついシビレを切らしてしまったギャラリーのコバヤシが、思わず、大声で訴えた。

 それを耳にして、コゴローも、ようやく、ハッとなったのだった。彼は、さっそく、逃走中のニジュウ面相たちを追い掛けようとしたのだ。

 その時、クモ男がちらっと振り返った。その手には、いつものステッキが握られていた。彼が、このステッキを振り上げると、ステッキの先からは、パアーッとネットが飛び出したのだった。それは、近づいてきたコゴローの上に降りかかって、彼を拘束してしまった。

「うわっ!何だ、これは!」

 その網が体じゅうにからまってしまい、コゴローはもがいた。どうやら、クモ男が用いる網だけあって、この網は、ネバネバと粘着するみたいなのである。コゴローは、どうにもこうにも、自力では、この網の束縛からは抜け出せられないようなのだ。

 ここにきて、終始、観戦に徹していたコバヤシも、やっと、動き出したのだった。彼の目の前には、網で身動きのできないコゴローと、どんどん逃げ去っていくニジュウ面相たちがいる。

 恐らくは、いくら手負い状態とは言っても、コバヤシの力では、ニジュウ面相たちの事は捕獲できそうにはないのだ。となると、コバヤシとしても、判断は早く、この場にとどまって、まずは、コゴローの救出を優先する事にしたのだった。

 そんな訳で、ここまで追い詰めながらも、クモ男たちには、結局、またしても逃げられてしまったのである。

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