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俺だって、普通に怒ることくらいある 前編

 まぁ、要約すると、ギルドに助けを求めに来た、【堕悪皇帝(ブラック・エンペラー)】の構成員は偽物の可能性がある。

 とっても怪しいってことだ。


「でも、誘い出すって、なんでまたそんな回りくどいことを?」


 ラインハルトは疑問をぶつけてくる。


「そこまではさすがにわからないな」


 考えることなら出来る。

 でも、それが正解とは限らない。

 俺たちは、更に先へ進むか否かで話し合うことになった。

 ラインハルトやミーアが、俺の発言によって一度戻った方がいい、と提案したのだ。


「よし、んじゃ、二手にわかれよう」


 グチャグチャ話し合うのはゴメンなので、俺は逆にそう提案した。

 正気か、こいつ、という目で見られる。

 いや、推理披露したら想像以上にエールのこと怖がらせたっぽいからなんだけど。

 まぁ、それだけが理由ってわけでもない。


「だってその方が効率いいだろ。

 俺が奥に進む。

 三人が一度街に戻って報告する」


 その提案に、声を上げたのはなんとエールだった。


「え??」


「あ、エールは俺と一緒に来たいか??

 どっちでもいいけど、どうする??」


 怖がってそうだったんだけど、そうでもないのかな?

 俺としては、回復魔法の使い手がいなくなるのは正直痛手だから、エールが残ってくれるならそれでいいんだけど。


「なに言ってるんですか?」


 何故か涙目で、声も震え出した。

 え、あれ??


「だから、俺と来てもいいし。

 帰っても、どっちでも、いでっ?!」


 とりあえず、もう一度選択肢を提示しておこう。

 いきなりミーアに軽く叩かれた。

 殺気も怒気も無かったから、反応遅れた。


「お前が自己犠牲精神の持ち主だったとは意外だ」


 そして、胸ぐらを掴まれて凄まれた。


「はい?

 いや、そんなつもり欠片もないぞ?」


 俺はパタパタ手を振って答える。


「少なくとも、一連の出来事に作為的なものを感じるだろ?

 俺はそれを確かめたいし、なによりも、ビクターのクランを壊滅させるだけの力を持った何かがいるのは確かなわけで。

 俺はその何かと戦ってみたい。

 まぁ、まだ居ればの話だけどさ。

 だから、一度街に戻るなんて非効率なことしたくないってだけなんだけど」


 と、そこでエールが口を挟んできた。


「じ、じゃあ、なんで私に帰れなんて言うんですか!!」


 パッと掴まれていた胸ぐらを離される。


「いや、俺の考えで怯えさせちゃったみたいだから。

 罪悪感、みたいな??」


「驚きはしましたけど、怯えてはいませんよ!」


「あ、それなら良かった。

 じゃ、俺とエールで先に進む。

 アンタらで街に戻る。

 これでいいだろ」


 はい、話は終わり。

 となったんだけど、何故か三人は滅茶苦茶疲れたようだった。


「どったの?」


 こてんと首を傾げて聞いてみる。

 しかし、3人から返ってきたのは呆れを含んだ視線だった。

 二手に分かれるのは無しにしたらしい。


 そして、俺たちは三十階層を進んだ。

 やがて次の階層への道を見つけた時だ。

 それは、現れた。

 いや、正確には次の階層へ繋がる通路の真ん前で、人の死体を頭からバリバリと食べている魔族がいたのだ。

 その食べられている人間を、俺は見た。

 見てしまった。

 見間違いかと思った。

 でも、あれは……。


「…………」


 頭には大きな角が二つ。

 背中には、真っ黒な蝙蝠を連想させる翼。

 身体も、とても大きい。

 以前捕まえた、盗賊団の首領よりも大きかった。

 父親によく読み聞かせてもらった、昔話に出てくる鬼を連想させた。


 三人が咄嗟に身を隠し、様子を窺いはじめる。


「魔族がなんで、こんなところに?」


 エールが動揺する。

 ミーアが、真剣な顔で返す。


「わからない。

 だが、アイツが食っているのはおそらく、【堕悪皇帝(ブラック・エンペラー)】の構成員たちだ」


 死体こそ全裸だが、その横には死体から剥ぎ取ったであろうあの黒ローブが山になっていた。

 魔族。

 いまや、世界を手中にすべくあちこちで人間と戦争を繰り広げている種族だ。

 この事態を憂いた神様が、とある人間に加護を与え派遣したと聞いた。

 それが勇者だ。

 勇者の存在は、人類の希望となっているらしい。

 その勇者だが、巷では世界のあちこちを旅して魔族、というよりも魔王軍と戦っているという話題で持ちきりだった。


「仕方ない、ここは慎重にって、あ、あれ?

 ウィンはどこいった??」


 背後で戸惑ったラインハルトの声が聞こえてきたが、気にせず俺は通路を塞いでいる魔族に近づいた。

 魔族も俺に気づいて、こちらを見た。

 そして、声をかける。

 我ながら、とても低い声がでてしまった。


「よぉ、デカ物。

 良い(もん)持ってんじゃねーか」


 魔族はニタニタと笑った。

 そして、


「ほんとに来やがった!!」


 そう嬉しそうに叫んだ。

執筆の励みになるので、もしよろしかったら、


・面白かった

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そう思ったら【☆☆☆☆☆】をタップしてください。

広告の下あたりにあると思うので、よろしくお願いします。


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