6 カバトンは挟まっていた
「おいおいマジかよカバトン⁉」
オレは思わずそう叫んだ。
・・・・・・え~と、改めて状況を説明しよう。
カバトンが、挟まっている。
確かに、そこはかなり狭い路地や。
ガタイのごっつい大人では、到底入る事はでけへんやろう。
しかしカバトンの場合はガタイがどうこうより、
そのデップリ膨らんだドテッ腹が完全に塀と塀の間につっかえていた。
それはもう見事なまでにギッチリつっかえていて、どう見ても自力で外に出るのは無理そうやった。
そんなカバトンに、オレはとりあえずこう叫んだ。
「お前はサンドウィッチの具か!」
それに対するカバトンの答えはこうやった。
「ナンドウィッチは大好きだよう・・・・・・」
こいつ、この状況に置かれても食べる事が一番なんやな。
ある意味たくましいな。
そやけどこのままほっとく訳にもいかへんので、
とりあえず何でこんな事になったのか聞いてみる事にした。
「お前、何でそんな所に挟まっとんねん?誰か悪い奴にそこに詰め込まれたんか?」
するとカバトンは苦しそうな声で答える。
「ニ、ニがうよ。ニつは今日の朝、ナっこうに行く途中にここを通りかかった時、
ニゅうに強い風が吹いて、ノくの帽子がこの路地の奥に飛ばされちゃったんだ。
ノれで帽子を取ろうと路地に入ったら、ノの通りお腹がつっかえちゃって・・・・・・」
「それで今に至ると・・・・・・」
「ヌン・・・・・・」
「それにしてもお前、よくその状態で今まで耐えたな。誰にも助けを求めんかったんか?」
「ナいしょは助けを求めたんだけど、
ナれもここを通らなくて、ノれで段々眠くなってきて・・・・・・」
「今までその状態で寝とったんかい⁉」
「ヌん・・・・・・」
「そこに挟まってしまうだけでも凄いのに、そのまま寝てしまうとは。
カバトン、お前凄いやっちゃな」
「ネヘ~、ノれほどでも~」
「決して誉めてる訳ではないけどな。で、どうする?このままずっとそこに挟まっとくか?」
「ノれは嫌だよ!ナやくここから出たいよ!ノなかすいたよ!ノうちに帰りたいよ!」
「分かった分かった、そんなに泣き叫ばんでも助けたるがな。ホラ、手ぇ出せや」
オレがそう言って右手を差し出すと、カバトンもオレよりふたまわりくらい太い右手を差し出した。
オレはその手を掴み、気合いを入れて引っ張った。