4 カバトンは欠席
「あれ?今日はカバタ君お休み?」
ウチのクラスの担任であるカサノハラモモエ先生は、その日の朝礼で教室を見渡して言った。
「連絡はなかったんですか?」
手を挙げて尋ねるオレに対し、モモエ先生は首を横に振りながらこう答える。
「いいえ、カバタ君のおうちからは何も聞いてないわ。何かあったのかしら?」
ちなみにカバタとは通称『カバトン』の事や。
食いしん坊で、ナーナー弁というちょっと変わった言葉を喋る。
学校を無断欠席するような奴ではないんやけど、一体どうしたんや?
あいつの事やから朝飯を食べすぎて、腹でも壊したんやろうか?
今日は始業式なので授業はなく、午前中だけで学校は終わった。
そして終礼を終えて教室から出て行こうとすると、モモエ先生がオレに声をかけてきた。
「キタヤマ君、ちょっといいかな?」
「え?何ですか?」
オレが立ち止まって振り返ると、モモエ先生は数枚のプリントを差し出して言った。
「悪いけどこれ、カバタ君のおうちに届けてくれない?」
「はあ、まあいいですけど、あれからカバトンの家から連絡はあったんですか?」
「ううん。だからさっき私の方からカバタ君の家に連絡したんだけど、
カバタ君は今朝、学校に行く為にちゃんと家を出たんだって」
「ええ?じゃああいつ、学校に来んとどっかに行ってしもうたんですか?」
「そうみたいなの。もしかしたら学校に来る途中に、事故にあったのかも」
「う~ん、でもそうやとしたら、すぐに家や学校に連絡がいくでしょ?
きっとどっかで道草でも食ってるんですよ」
「そうだといいんだけど・・・・・・」
「とりあえず、そのプリントを持ってカバトンの家に行ってみます。
で、まだ家に帰ってなかったら、あいつが行きそうな所を探してみますよ」
「ありがとう、そうしてくれると助かるわ」
「いやいや、これくらいお安い御用ですよ」
そう言いながらモモエ先生からプリントを受け取っていると、
オレの首に腕をまわしながらマサノブが言った。
「よかったなぁヨシオ。これでまたモモエ先生の好感度が上がったで」
「なっ⁉アホか!別にそんなつもりないわい!ていうかお前も一緒に行くやろ?」
「あー、おれはパス。帰ったら母ちゃんに買い物頼まれてんねん」