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琴音の事情と俺の記憶

 俺は、少女を連れて家に帰ってきた。


 「広い所に住んでるんですね」


 「まあな、それなりには稼いでるから」


 「お兄さん、いや涼介さんって今いくつなんですか?」


 「俺か?……俺は今26だけど」


 「へー、それでこんな広いマンションに住めるなんてお兄さんすごい人なんですね」


 ニコッと笑いながらそう話す少女、いや浅井さんに少しだけドキドキしつつもその気持ちに気づかれないように会話を続けた。


 「まあ俺なんかの事はいいんだよ。君の事情を聞かせてくれよ」


 「そうでしたね。私のことを話すために連れてきてもらったんですもんね」


 浅井さんはそう言うと、経緯を語り始めた。


 「まあ、かんたんに言えば学校で揉めたってだけの話なんですけど。見ての通り私ってかわいいでしょう?」


 「自分で言うのはどうかと思うけど、まあ否定はしないな」


 「だから、学校で妬みとかがすごくて。でもそれって私が悪いわけじゃないじゃないですか?」


 「まあ、そうだな」


 「なのに学校側はまるで私が悪いかのように扱ってきて」


 「なるほど」


 「その結果いじめに発展しちゃって、今日だってこうして服取られちゃったので家にも帰れずに公園にいたんです」


 「え?家に帰って親に相談したら良かったんじゃないのか?」


 そう言うと、浅井さんは苦笑いを浮かべさっき言わなかった親の事も話してくれた。なぜか口調も変わっていたけど…


 「私の家の親は……」


 「親は?」


 「ちょっと危ないんです」


 「……ん?」


 「さすがに学校を血の海にするわけにはいかないので」


 「ちょちょっ」


 「……どうかしましたか?」


 「親の話をしてるんだよね?」


 「そうですよ?」


 「それでなんで血なんていう物騒なワードが出てきた?」


 「ちょっとうちの親にはサイコの気質があるみたいで」


 思ってたよりもだいぶ軽い口調で話された重い事実に、もしかして助けたのはまずかったかと若干背筋を凍らせながら話を聞き続けた。


 「浅井さんの親はそんなに危ないんだ」


 「そうですね。私でも怖くて怒ったときには家にいられないくらい危ないです。まあ、普段はとても優しいし私にキレるようなことはないんですけど」


 「……」


 「どうかしましたか?」


 「いや、なんかその特徴に当てはまる知り合いっていうか上司が約2名いるんだよなぁと思ってさ」


 「そうなんですか?」


 「まあいいや、とりあえず服からなんとかしないとだな」


 俺はそう伝え、浅井さんを連れて服を買い揃えに行ったのだった。


 「こんなに買ってもらってすみません」


 「いいんだよ。このくらいなら安いもんだって」


 「ほんとになにからなにまでありがとうございます!」


 「じゃあとりあえずは家に帰れるな?」


 「はい!……でも」


 「でも?」


 「もし良かったら神藤さんにも一緒に来ていただけると嬉しいかなと」


 「……マジで言ってる?」


 「本気で言ってます!」


 「……わかった。じゃあ俺も一緒に行くよ」


 「ホントですか!」


 「ただ、俺の後ろから離れるなよ?」


 「それってどういう……」


 「説明は全部終わったら君のお父さん辺りが言ってくれるよ」


 こうして、俺はたまたま助けた少女、浅井琴音の家に向かうことになってしまうのだった。


 (まさかここでも関わらないといけなくなるなんてな……)

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