プロローグ
「ふふっ。朝ごはんできてますよ、涼介さん」
「あ、あぁ。ありがとう?浅井さん」
「……琴音」
「え?」
「涼介さん、私の事名前で呼ぶって約束しましたよね?なんで名字で呼ぶんですか?もしかして他に女でも作ったんですか?私というものがありながら?そいつはどこですか?」
「いやいや、作ってないから!単純に間違えただけだから!」
「そうですか?……まあ、人間誰にも間違いはあるでしょうからね。でも次間違えたら……切り落としますよ?」
「ヒェッ」
「だってそうでしょう?そんなモノがついているから目移りさせて盛るんです。だったら無くしてしまえばいいだけの話ですよね!…違いますか?」
にこやかに笑いながらもハサミをいじっている目の前の女の子、浅井 琴音に、俺は背筋が凍る思いをしながらもそこは隅に置き、そもそもの問題から話すことにした。
「そ、そうだな。それよりも、琴音」
「なんですか?涼介さん」
「俺、琴音を家に呼んだ記憶もないし鍵を渡した覚えもないんだけど……」
「……いつまでたっても合鍵作ってくれないから…」
「から?」
「自分で作って来ちゃいました!」
「いや怖いわ!?」
「え?誰でもやってることですよ?」
「いやいや、そんな子普通はいないから…」
「そうですかねぇ?」
「そうだよ」
何でこんなことになってしまったんだろう。そのきっかけは今から半年くらい前に遡る。