2
加筆修正をたくさんしました…前の文章だと納得できず、改善しました。
またこちらの話を読んでいただけると幸いです。
2020/6/17 00:10
まだまだ早朝でがらんとした道路に一台の車が走っている。
ガタガタと揺れる車中の中で俺は目を覚ました。
「あら、起きた?」
「ここは…って、お前!!!」
意識が覚醒すると俺は見知らぬ車の中で驚き、飛び上がる。
きょろきょろと車中を見渡すと隣には先ほどの綺麗な女性。
彼女はレースがあしらわれた白のブラウスにふわふわとしたピンク色のスカートをきている。
運転席には無精ひげが目立ち、黒い前髪でまったく瞳が見えない陰気な男が運転をしている。
30代くらいだろうか。
ぶかぶかのジャージはところどころ穴が開き、だらしなさそうだ。
操縦しているこの車はそこまで大きくなく、内装も凝っていないいたって普通の車であった。
青年は飛び上がった拍子に頭をぶつけ悶えてると、そこにお前って呼ぶなと綺麗な女性から拳がいれられる。
「いってえな!!なんで俺は車の中にいるんだよ!」
「なんでって復讐したいかって聞いたらあなたが私の胸に飛び込んできたからよ。これって承諾したってことでしょ?」
「復讐...?っ...!!」
俺は泣き疲れて女性の胸に倒れた事実に赤面する。
同時に母の無残な死の光景が蘇り顔をゆがませ、目をつぶる。
そんな俺にお構いなく女性は言葉を俺に投げつける。
「あなた、最近巷で噂になっているクレアトールってしってる?」
「…テロリスト集団だろ」
「あなたのお母さんは彼らに殺された確率が高いわ」
「やめろ!!!!母さんが殺されたなんて嘘だ!死んでなんかいない!!!」
違う、母さんは生きてる。
おかえりっていってくれた。
俺が謝ったらそんなことで一日悩んでたの?って優しく許してくれて...
母さんの死を受け止められなくて、認めたくなくて俺は喉が潰れそうなほど声を張り上げる。
目をつぶり、頭を振り、現実逃避をする。
「ぐっ…!!」
突然、女性に胸ぐらつかまれ、車の窓に勢いよくたたきつけられる。
みしりと車がゆがむが運転手は全く気にしていないようだ。
静かに前だけをみて運転をしている。
「あなたの!!!お母さんは!殺されたの!!いい加減、現実をみろ!!!」
「うるさい、うるさい!!!」
胸ぐらをつかまれ、息が苦しいはずなのに喉から声が出る。
声を絞り出して怒鳴り、女性を鋭く睨んだ。
「いつまでも悲劇の自分に浸かるな!お前みたいなやつはたくさんいるんだ!」
「ぅう…ぐっ、」
彼女の声が胸に突き刺さる。
つかむの力はどんどん強くなっていき、女性の手首をつかむ。
呼吸が出来ず、頭は熱いのに背中はヒヤリと冷えていた。
分かってる、けど受け入れられないんだ。
「浩司さん、それ以上やるとそいつ死にますよ」
「あら、ごめんなさい、つい熱くなっちゃって」
運転手がぼそぼそと女性に言うと、女性は手を緩めた。
すとん、と椅子に崩れ座ると顔をぐしゃぐしゃにして俺は女性にすがり泣いた。
手は弱々しく彼女のふわふわとしたスカートを掴み、頭を膝におしつける。
微かに彼女の甘い匂いが鼻をかすめる。
膝の上に置いた俺の頭を泣き止むまで彼女は撫でてくれた。
その手が優しすぎて、それが余計に心にきた。
「整理できたかしら」
ひとしきり泣いて、心が落ち着いた時を見計らって隣の女性はそう聞いてきた。
「心の整理なんかまだつくはずがなだろ。…でもこれだけは分かる。母を殺したやつが憎い。見つけて生きてるのが辛いって絶望させてからめちゃくちゃに殺したい、復讐をしたい!!!!」
「そう。我々はあなたを歓迎するわ。」
女性をみると残酷なほど綺麗な顔で微笑んでいた。
「…そういえば自己紹介がまだだったわね。私は原田 浩司。でも名前は可愛くないからシブチョーって読んでね」
「原田…浩司…浩司ってあんた男!?…っぐふっ」
「私は男じゃない!神秘的な生物なのっ!!」
ふと思い出したのか彼女は自己紹介をしてくる。
否。彼女ではない。
シブチョーの名前と性別に驚き思わず声をあげると彼(彼女?)の鉄拳が腹にクリーンヒットした。
容姿からは想像できないほど強烈な一撃に腹を抱えて崩れ落ちる。
ってか神秘的な生物ってなんだよ。
俺、男にいい匂いだと思ったのか...すがり泣いたのか...衝撃的な事実に思わず遠い目をする。
いや、男と思わなければいいんだ。
そうだ、シブチョーは神秘的な生物なんだ!!!
うん、そういうことしておこう。
「それで、運転手は猫橋 辰っていうの。見てくれは小汚いし無口だけど実力は確かよ」
シブチョーは軽く咳払いし、気を取り直して紹介に戻る。
シブチョーの言葉に運転手は振り返って、俺に軽く会釈をする。
実力は確かってそもそも俺はこれから何をするんだ...?
疑問は多々あるが、とりあえず自分も自己紹介をすることにした。
「俺は笛村 砂月っす。よろしく。…ぐっ」
「よろしくお願いしますでしょ」
「…よろしくっす」
俺の言葉遣いにまたシブチョーの鉄拳が今度は頭に飛ぶ。
俺は痛みに悶えながら言い直した。
「ところで、なんで今回はクレアトールの犯行だって分かったんだ…ですか」
「あなたの目は節穴?内臓は綺麗に取り除かれ、部屋にはクレアトールのシンボルが血で描かれてたわ」
「母さんしか見てなかったんっす」
敬語が抜けかけてシブチョーにじろりと睨まれる。
見た目以上に上下関係に厳しい神秘生物みたいだ。
また、当たり前な事を聞いたからか、シブチョーは呆れたように俺を見てきた。
俺は思わず膨れっ面になりふてくされる。
「そういや俺たちはどこに向かってるんだ?」
「それは着いてからのお楽しみ♡詳しいことは着いてから話すわ」
そういうとシブチョーはいたずらを思いついた子供みたいにニヤリと笑ってウインクをしてくる。
性別が違うと分かっていてもその顔は綺麗すぎて見ほれた。
しかし、俺は復讐を決意したはいいものの、先行きが不透明すぎてため息をついた。
しばらく、ぼーと窓の外を眺めていた俺だったが車が急停止したことによって無理やり現実世界に引き戻された。
「どうしたんっすか」
「あらあら、さっそく復讐対象と鉢合わせたみたいよ」
「は!?」
シブチョーの言葉に驚いて窓から身を乗り出して前を覗くと車の前方に三人の男性が立っていた。
彼らは全員白いスーツの様な服を身にまとい、目を白い布で覆っている。
「あいつらが…クレアトールなんですか…」
「あなたのお母さまを殺した人かは分からないけど、あの格好はクレアトールよ。」
シブチョーがそういった瞬間、俺は勢いよく車から出る。
母の死がフラッシュバックして心臓がギュッと縮み、頭が真っ白になる。
目の奥がちかちかと光りクレアトール達の姿がぶれる。
こんなに頭に復讐の事しか浮かばないのは自分でも驚いた。
クレアトールに会ったら恐怖や悲しみで動けないと思っていたが、全くそんな感情は浮かび上がらなかった。
ひたすらに、目の前のクレアトール達を倒したかった。
「クレアトオオオオオオオオルウウウウウ!!!!!!」
「あのバカ!ただ無鉄砲にツッコめばいいってものじゃないのよ」
「大丈夫です。俺がカバーしにいきます。それにいい機会じゃないですか、あいつらは"白色星無し"です。弟子の実力を見極めてきます」
クレアトールに叫びながら一直線に向かう砂月に呆れるシブチョーを運転手はなだめる。
そして砂月の後ろ姿をじっと見つめながら腕まくりをし、車から出て、追いかけていった。
主人公の砂月は無鉄砲にも敵へ一直線!
復讐にとらわれ正気を失ってる砂月に運転手は厳しい目を向ける!?
次回 クレアトール初戦闘!!!
デュ〇ル スタンバイ!!