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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・友人と婚約者 1

友人ジョシュアの話です。

昔のことだ。

かなり昔。

相当昔。

ヴィーが死にかける前だったのは確かだから、10年近く昔のことだ。


あのとき俺は、アル、レティ、ミリアム、ヴィーの五人でかくれんぼをしていた。

王宮の薔薇の中庭だった。まだ花は満開にほど遠かった気がする。

ヴィーとレティが鬼だった。


俺が隠れた茂みにミリアムが駆け込んできた。お互いびっくりして、だけどちょうど話し声が聞こえてきたから二人でそこにしゃがみこんでいた。


近づいてきた話し声は、どこぞのお嬢さんたちのものだった。なにやら楽しそうに笑いあっていたのだが、中のひとりが


『恋をしているの』


と言い出した。

きゃあきゃあ悲鳴があがり、ちょうど隠れている俺たちの前で立ち止まった。

そのうち誰かが、


『恋ってどんなもの?』


と尋ねた。その質問に他のお嬢さんたちが


『ドキドキする!』

『胸が苦しくなるときもあるわ』

『そばにいられるだけで幸せ』

『どう思われているか不安になるわ』


と口々に答え、それから素敵な男子について話しながら去って行った。


恋って病気だ、と思った。

ミリアムは、楽しそうと目を輝かせていたけど、俺はちっとも楽しそうには思えなかった。




あれからだいぶ経ち、いつの間にか周りの友人たちが、どこぞの女の子がかわいいだとか好きだとか告白したいだとか言うのを聞くようになった。


その話を聞いて、なるほど、これが昔聞いた恋というものかと思ったものの、俺にはちっとも楽しいとは思えなかった。


アル、ヴィー、ミリアム、レティと遊んでいるのが一番楽しかったから。





卓上には小さなプレゼント。

聖マルグリーテ教会の護符だ。


先月足を伸ばしてもらってきた。

金曜の放課後すぐに旅立って、急ぎに急いで、なんとか月曜中には帰宅できた。みんなには、腹痛で学校を休んだと話してある。

ただひとり、ウォルフガングだけが俺が何故休んだかを知っている。護符のリメイクを注文したから。


ウォルフガングは俺の要望を聞いて、補強をしリボン紐をつけてブレスレット状にしてくれた。

今時期なら袖の下に隠れる。けれど長めのリボンが少し見え隠れする。

夏になれば、肌着のボタン穴にリボンを通して身につけられる。加工前の問題点である落としてなくす、ということもない。

ついでに、リボン紐には聖マルグリーテ教会のイニシャルとブラン商会のマークが刺繍されている。


ブラン商会、すごいぜ。

しばらくこれで稼ぐ気なのだろう。


ウォルフガングは友人特権で、頼んだ翌日に仕上げてくれた。

けれどそれもだいぶ前のことだ。

俺はこの小さなプレゼントを、レティに渡せずにいる。



レティとはずっと友達だ。


王族は三歳になると同じ歳の子供と引き合わされる。その中から選ばれた何人かと、遊ぶことを通じて社会性を身につけるらしい。

そうやって、アルと俺、ヴィー、ミリアムは知り合った。


ひとつ年下のレティはいつの間にかミリアムとヴィーにくっついて遊ぶようになり、自分用に引き合わされた子供たちとはまったく馴染めなかったらしい。


気づいたら俺たちは五人で遊ぶようになっていた。

アル、レティ、ミリアム、ヴィーは俺の一番の友達だ。


だからレティが、意味のないひどい婚約をすると聞いたときに腹が立った。なんで友達の俺に相談してくれないのかと。

友達が辛い思いをするのを、黙って知らぬふりをするほど薄情じゃない。


レティが助かるなら、仮初めの婚約くらいなんてことはない。

それに俺は友人たちみたいに、好きな子もいない。どうせいつかは親が選んだ女の子と婚約して結婚するのだ。

だったら仮初めのまま、結婚したってなんの問題もない。



そんなふうに思っていた。






いつも気高いレティが、俺の前で泣いたり、赤くなったりするのがかわいかった。

かわいいレティが俺のことを好きになってくれたら、楽しそうだなと思った。

レティがいつも俺のことを考えてくれて。バレンなんかを褒めないでくれて。俺といて楽しいと思ってくれればいいのに。


俺はレティと結婚していいと思っているけれど。

レティは、一体どう思っている?この仮初めの婚約をいつまで続ける気なのだろうか?





ウォルフガングの言う通りだ。

俺と最期のときまで一緒にいたいなんて、微塵も思ってないかもしれない。


そうしたらこんなお守りは、ありがた迷惑なだけだ。




そう考えると、俺はこの護符を渡せなくなってしまった。





学校は文化祭が終わると、次の行事であるクリスマス会の話題一色になるらしい。


学校側のメインは有志による降誕劇らしいが、生徒のメインは劇のあとの舞踏。体育祭でみっちり学んだダンスを復習するための時間だそうだ。

体育祭同様制服着用だけれど、それ以外に決まりはないらしい。誰と踊ろうが、何回踊ろうが、自由。

だけど時間は小一時間ほど。


だから生徒は、早いうちから一緒に踊りたい相手に予約を入れるそうだ。人気がある生徒には多くの予約が入るという。そこで暗黙の了解で、予約を入れていいのは文化祭後の平常授業初日から、と決まっているそうだ。


それが、明日だ。


レティはかわいい。

きっと予約は殺到する。

婚約者はいるけれど、誰と踊ったっていいことになっているのだから。


俺は小さなプレゼントをつかむと立ち上がった。




◇◇


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