表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/186

2章・17文化祭 2

 暗闇迷路は楽しかった。

 バレンにもらったクッキーも美味しかった。

 お化け屋敷もジョーは楽しかったって。

 ミリアムとレティは真っ赤になって黙ってしまったけど。

 アルはなんとも言えない、ビミョーな表情をしていた。

 何をしたんだバレン。


 それから。えーと。


「ヴィー。緊張してるのね」

 劇の幕があがるまであと数分。下手に待機しているあたしは、どうしようもなく、緊張していた。

 だって劇なんて初めてだし。

 舞台に立つなんて前世では、学校の合唱祭と卒業式くらいしかなかった気がするし。

 そもそも…。


「ヴィー」

 ミリアムはあたしをぎゅっと抱きしめた。

「あたしの大好きなヴィー。本当はわたしがやらなきゃいけなかったジュリエットを代わってくれて、ありがとう。あなたはいつもわたしのヒーローよ」

 あたしもミリアムを抱き返す。

「何を言うのさ。ミリアムこそ、僕のヒーローだよ。いつも助けてくれる。泣きそうなとき、いつもこうやって抱きしめてくれるじゃないか」

「うん」


 そうやってしばらく抱き合っていると、アナウンスが流れ、緞帳が上がった。

 どちらからともなく離れる。


「ありがとう、ミリアム。落ち着いたよ。きみのために、がんばってくるね」



 ◇◇



 あたしは七歳より前の記憶がない。

 そんな幼い頃の記憶なんて、忘れてて当たり前。なくたってなんの問題もない。

 心の底からそう思う。

 でも、ミリアムは?

 一緒に生まれて一緒に育ったミリアムは?

 色んな出来事を覚えているかもしれない。

 たくさんの思い出をあたしと話して共有して笑いあいたいかもしれない。

 でも、それは不可能だ。

 なのにその哀しさや淋しさをあたしにぶつけたことは一度もない。

 時折、ひどく悲しい目をする。

 その目が何を見ているのか、あたしはわからない。

 ただ、これ以上あたしのせいでミリアムに悲しい思いをさせはしない。

 だからあたしはミリアムのためなら、なんだってがんばれるんだ。



 ◇◇



 劇のラスト。

 ジュリエットとロミオの亡骸の前で、モンタギュー家とキャプレット家が和解をすると、幕が降りる前から割れんばかりの拍手が沸き上がった。


 どうやら、お客さんちは大満足してくれたらしい。

 安堵で泣いてしまいそうになる。

 幕が降りても立ち上がれないあたしに、ウォルフが手を差し出してくれる。

 ウォルフ、かっこいい。あたし、かっこ悪い。

 悔しい!

 その思いに自分を奮いたたせ、手は借りたけど、しっかりと立ち上がる。

「大丈夫か?」

「大丈夫!」


 あたしたちキャストは手を繋いで、緞帳の手前に一直線に並ぶ。カーテンコールだ。

 幕が上がり、みんなで頭を下げる。

 で、気がついた。

 最前列ど真ん中にエレノア、フェル、アンディ、キンバリー先生が座っていた!

 緊張するからずっと客席は見ないようにしていたのだ。

 なんてこった。こんなにそばにいたんだ!

 うわあ、今すぐに逃げ出したい!


 幕が閉まる。

「いた!そこに!」

 これだけでウォルフは理解したらしい。

「気がついてなかったのか?オレは生きた心地がしなかったぞ」


「ほら、ヴィー!もう一度よ」

 クララに叱られる。

 最後は裏方さんも出て来てみんなでカーテンコールだ。

 再び幕が上がる。


 うわあ。見ない。絶対に見ない。

 視線を遠くにやると、壁にもたれているゲインズブールをみつけた。一応担任として、見に来ていたようだ。隣にはピンク色の髪が見える。


 ようやく幕が閉まると、クララが小さい声で

「撤収!」

 と叫んだ。大道具係りが棺や燭台を片していく。

 その間を縫って袖に下がる。


「ヴィー!!」

 ミリアムが抱きついてくる。

「素敵だったわ!さすがわたしのヴィーだわ!世界一のジュリエットよ!」

 あたしも負けじと抱き返す。

「ミリアムがドレスやメイクをがんばってくれたからだよ」


「相思相愛双子!先に撤収!」

 クララに怒られてしまった。

 みんな男子も女子も、持てるものを持ってクラス控え所に運ぶ。袖にはちゃんと搬入口があって、出たところに劇をする四クラス分の仮設テントがあるのだ。


 すべてを運び終えると、クララが小道具の椅子に飛び乗った。

「みんな!お疲れ様でした!すごくいい劇だったよ!お客の反応も良かった!今日の主役二人に拍手っ」

 クララ!キャラが変わってるよ!

 でもでも。なんでかあたしも嬉しい。

 ありがと、ありがとと頭を下げる。


 ミリアム、レティ、アル、ジョー、他の子たちに囲まれて、たくさんの褒め言葉をもらう。

 嬉しいな。がんばった甲斐があるな。


「ヴィー!」

 その声に振り向くと、フェルがいた。アンディとエレノアとキンバリー先生と、後ろにウェルトンも。

「あ、」

 来てくれたんだと言う前に、フェルが光の早さで飛んできて、あたしを強く抱き締めた。


「フェル!強い!苦しい!」

 あまりの馬鹿力に骨が折れそうだ。なのに、なかなか腕を緩めてくれない。

「フェルってば!」

 バコン、と音がして。

「いい加減にしろ」

 とアンディ。ようやくフェルの腕が緩くなった。でもまだ解放はしてくれないらしい。

「僕のヴィー!」

 フェルはそれだけ言うと、また無言になる。

「感極まりすぎだ」

 と親友からツッコミが入る。

「ねえ、フェル。ミリアムのおかげだよ。彼女が僕がかわいく見えるドレスとメイクを考えてくれたんだ。演技の指導も」


 ようやくフェルはあたしから離れた。

 目が真っ赤じゃないか。

 そんなに感動してくれたんだ。

 そのことにあたしは感動しそう。


「ミリアム、ありがとう」とフェル。「僕は素晴らしい双子の兄で幸せだよ」

 ミリアムは何も言わず、にっこりと微笑んだ。

「ありがと、フェル。エレノアも、アンディも、ウェルトンも。キンバリー先生も。見に来てくれて嬉しいよ」

「そりゃ、かわいいヴィーの晴れ姿だからな」と、アンディ。「しかしミリアムの腕はすごいな」

「だって世界で一番ヴィーのことを知っているもの」

 とミリアム。ね、とうなずき合うあたしたち。

「ああ。可憐なジュリエットだったよ。ヴィーもよくがんばった。普段とは別人だったな」

 そう言ってアンディはわしゃわしゃしてくれる。えへへ。

「恥ずかしかったんだよ。でも一生懸命、女の子に見えるように所作の研究をしたんだ。ミリアムと一緒に」

「お前には難しかっただろうなあ」

「それ、暗にディスってるよね?」

「僕のかわいいヴィーに失礼だな、この筋肉馬鹿が」とフェル。

「でも成果は出ていたぞ」とアンディ。

「ほんと?じゃあがんばったご褒美がほしい!」

「なんだ」とフェル。「二人にはなんだって買ってやるぞ」

「…本当に変態っぽい」とキンバリー先生。「エレノア、はやまったんじゃないの?」

 エレノアは笑っている。

「僕のご褒美は遠乗りね、アンディ。またサンドイッチを持っていこうよ」

 わかったとアンディ。わしゃわしゃ。

「ヴィー!それは違うだろ」とフェル。

「だってほしいものなんてないよ。アンディと遊ぶほうがいい」

 変態気味のフェルから離れてアンディの服の裾を掴む。

「む。こっちにおいで、ヴィー。そっちはニセモノの兄だ」

「やだよ。どう見てもフェルの方がおかしい」

「そうね」とミリアム。「恥ずかしいわ、兄さま」

 ずーんと落ち込むフェル。

 最近、劇の練習と、委員としての文化祭準備で忙しくてろくにアンディと出掛けてないのだ。行きたいお店だってたくさんあるのに。


「あの、」とウォルフガングがやってきた。「今日は来ていただいて、ありがとうございます」

「ああ、お前もご苦労だった」とアンディ。

「練習のときとは段違いだったぞ」とフェル。

「ありがとうございます」ウォルフは丁寧に頭を下げる。「ヴィー。もう解散していいって。バレンのところへ行こう」

「あ、忘れてた!」

「きっと待ちくたびれてるぞ」

「お化け屋敷?」とミリアム。

「そうなんだ。上演が終わったら衣装のまま来いって言われてるんだ」

「衣装のまま?」とアンディ。

「うん。客寄せになれだって」

「そんなの、行かなくていいわ」とミリアム。

「でも約束しちゃった。僕の頼み事もきいてもらってるし」

「こいつ」とウォルフ。「またバレンに餌付けされてるんだぜ」

「餌付けじゃないよ」

「クッキーもらってニコニコだったじゃなないか。ほら、行くぞ」

 ウォルフはフェルたちに、失礼します、と言ってあたしの腕をとる。

「待って、ヴィー。あそこはあまり…」

「行ってくるね、ミリアム。アンディ、フェル、エレノア、先生、と、ウェルトン。来てくれて、ありがと。ゆっくり出来なくてごめん」

 ウォルフガングがずんずん歩くので、あたしは慌ててみんなに手を振った。


「女子に声をかけなくていいの?」

「断られた」

「え、モテモテなのに?」

「お前が?」

「ウォルフガングが」

 ウォルフが足を止めてあたしを見た。腕も離してくれた。

「どこ情報だよ。朝はモテないってダメ出しくらったけど?」

「朝のは僕の意地悪だよ。モテるって話は女子の総意」

 ウォルフはため息をついた。

「オレがモテていたら、今頃お化け屋敷になんか向かっていない」

「なるほど」

 再び歩き始めたウォルフを慌てて追う。

「口だけだろ、女子たちの」

「そうかなぁ。だって本当はウォルフガングっていい男じゃないか。悔しいけど」

 再び歩みが止まる。


「…だよな」

「え?」

「オレっていい男だよな。すげえ頑張ってる」

 あれ、大丈夫かなウォルフ。目がすわっているよ。

「オレもたまには褒美をもらってもいいよな」

「どうしたの?ウォルフもご褒美がほしいの?フェルから?」

 ウォルフがあたしを見る。

「そんな訳あるか。ほら、行くぞ」

 ウォルフは再び歩きだす。

「ま、待ってよ!僕、ドレスで歩きにくいんだから!」

 ウォルフは足を止めた。

「…悪い。忘れてた」

 両手でスカートを少しつまんで持ち上げる。女子は大変だ。

「転ぶなよ」

 うん、と答えるより前に。

「あと、めくるなよ」

「もうしないよ!」

 よし、行くかと言ったウォルフは。

 優しいよね。

 ゆっくりと歩いてくれた。


読んでくださり、ありがとうございます。



お詫びです。


ロミオとジュリエットは見たことも読んだこともありません。

Wiki…様情報から適当に想像しました。

間違ったことを書いていましたら、すみません。

他にも色々とGoog…様に検索かけて書いてます。


おかしな箇所があっても、どうぞ目くじらをお立てにならず、無知を笑いとばしていただけると、助かります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ