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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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2章・14医務室の密談 1

 マリアンナが転生者と確定できる発言をしたことは、その日のうちにキンバリー先生に報告した。

 配役決めの後のコマがラッキーなことに魔法の授業だったので、魔法を頑張りすぎて具合が悪くなったふりをして医務室に駆け込んだのだ。

 アカデミー賞もののあたしの演技に、心配したミリアムたちには申し訳なかったけどさ。


 報告したあたしは三人で話し合うことを提案したけれど、それは反対されてしまった。

 マリアンナは、転生者同士仲良くしよう、というタイプには見えないこと。かえってあたしに敵意を抱く可能性があること。それが理由だ。


 二学期に入ってから彼女があたしやミリアムたちに仕掛けてくることはなかったけど、アルやジョーのことは諦めていなくて、何かと周りをうろちょろしているのだ。


 今のところミリアムやレティが悪役令嬢になる予兆も、アルたちが攻略される可能性もないけれど、ゲームと同じように事故が起こったり、セリフが言われたりしている。

 用心するに越したことがない、との先生の説得に負けてしまった。


 とはいえ人の話に耳を貸さない、自分の利益のためには事故をも起こすマリアンナと先生とを二人きりで会わせるのはあたしも不安。

 でも先生は、教師を信頼しなさいと胸を叩いた。

 教師(特にゲインズブール!)は信頼しないけど、キンバリー先生は信頼している。

 あたしは先生にお任せした。



 そしてキンバリー先生は、拍子抜けするぐらいにあっさりとマリアンナから話を聞き出せたそうだ。

 彼女は最近少し、参っているらしい。おかげで、ちょっとつついたら素直に転生者だと認めたらしい。


 マリアンナはなんと、物心ついた頃から前世の記憶があったそうだ。

 自分の名前と容姿、それに国名から、わりと幼いうちにこの世界が大好きだったゲームの世界だと気づいたらしい。

『シュシュノン学園』は初めてやった乙女ゲームで、発売されたグッズは全て持っているほど、どはまりしていたそうだ。


「明言はしてないけど」とキンバリー先生は微妙な表情で言った。「前世の享年は40前後。若い頃はかなりモテたみたい。いまだに騙されている男子がいるのは、昔のモテテクニックを使っているからだろうね。けど、多分、年齢が上がるにつれ…ってことで、現実に自分に釣り合う男はいないって考え始めたころ、ゲームに出会ったみたい」


 自分が憧れの世界で主人公に生まれ変わったと気づけば、誰だって有頂天になる。

 マリアンナも大大大好きな王子アルベールに一刻も早く会いたくて、周りに訴えてまわったらしい。自分は稀有な魔力を持っている、いずれ国の宝となり、王子と結婚する身だ。どうか、王家に連絡をとってほしい。


 …ゲームが始まる時期まで待つ、という選択肢は彼女になかったようだ。

 違うように動いたら、まったく別の展開が起こるかもしれないなんて微塵も考えなかったらしい。だって彼女は主人公だから。


 きっと周囲は彼女をもて余したのだろう。容易に想像がつく。

 彼女の莫大な魔力に、入学検査の時まで誰も気がつかなかったのが、その証拠だ。


 ようやく自分の力を認められた彼女は、後半年を待つこともできずに、提案された契約に飛び付いた。

 まさか、すべてが上手くいかなくなるとも思わずに。


「なんだか気の毒だ」

 あたしの言葉にキンバリー先生は苦笑した。ヴィーちゃんは優しすぎる、と。

 違う。優しい訳じゃない。

「もし彼女が、前世の記憶を取り戻すのが入学直前だったら、こんな風にはならなかったかもしれないじゃない」

「なったよ」と先生。「人の性格なんて早々変わらない。ゲームと同じ展開になっていたとしても、マリアンナは誰も攻略できなかったよ」


 そうだろうか。


「あの子は自分のことしか考えていないからね。どのみち、過去のことを仮定して推論したって無駄なことだよ。過去は変えられないんだ。後悔と反省は次に活かせるけどさ」

「…ああしておけば、こうならなかったかも、って考えるのはムダ?」

「無駄、無駄!そんなことをうじうじ考える暇があったら、クッキーのひとつでも作るんだよ」

「…なるほど」


 クッキーと言ったら食べたくなったのだろう、先生はテーブル代わりのチェストに乗っているクッキーを手に取って、美味しそうに食べる。


「ねえ、先生。やっぱりアンディと結婚しない?」

 あたし、キンバリー先生が好き。本当に彼女がアンディの奥さんになってくたら嬉しい。

「…今の話でなんでそうなるの?」

 先生は不審そうな目であたしを見る。

「お似合いだから」

 先生は深ーいため息をついた。


「言ったでしょ。ないから。向こうもそう思ってるよ」

「そうかなー」

「まったくこの子は。なにを見ているんだろうね」

 先生はやれやれと首を振った。

「ヴィーちゃんには素敵なお兄さんでも、あれはダメ。恋愛できない欠陥男だから」

「ひどいよ、そんなことないよ」

 弟と恋人は違うんだよーと言って、先生は笑った。そう言われてしまうと反論できない。


「で、マリアンナに話を戻すけど」

 先生は真面目な顔に戻った。



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