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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・赤毛とデート大作戦

赤毛のウォルフガングの話です。

 時々、ヴィーは突拍子もないことを言い出す。夏休み近いとある日のこと。

『デート大作戦』をやるから協力よろしく!と宣言をされたのだった。





 ◇◇




 なんだよ、『デート大作戦』と思ったら、ジョーとレティに素敵なデートをこっそりプレゼントする、ってことらしい。郊外学習で森の湖畔に行ったときに、ジョーがこんなところでデートをしたいと呟いていたんだそうだ。


 お人好しでお節介のヴィーだ。そんな呟きを聞けば、叶えてやりたいと考える。そこまではいい。けれどオレが手伝う前提って。

 やっぱりミリアムと双子なんだな。

 と、ため息が出た。


 だがよくよく話を聞くと、作戦の輪郭は出来上がっていた。

 すでにアンディに、森の湖畔のデートスポットをリサーチ済み。学校で行ったのとは別の場所だ。

 郊外学習が自分のせいで早退になってしまったからという理由で、ヴィー主宰の自主学習会を開催。ジョー、レティ、ミリアム、アルを招待。特別講師はキンバリー先生。

 学習ついでにオリエンテーリングを楽しむ。もちろん二人組で、ジョーとレティが組めるようにする。


 オリエンテーリングってなんだよと思ったら、あちこちにランダムに置かれたチェックポイントをヒントを頼りに探すゲームらしい。侍従や護衛がつくから完全な二人きりではないにしても、ロマンチックな湖畔散歩ができる、という訳だ。


 ヴィーにしては、いい作戦かも。


 と一瞬思ったが、そのチェックポイントやらはどうやって設置するんだ?と尋ねたら。

 ああもう、腹が立つ。


「魔法の勉強をしている間にアンディが用意してくれる。だからアンディが休みの日にやるよ」


 と無邪気に言う。

「あのなあ」

 と言いかけたところで。

「わかってるよ!エリートで多忙のブルトン小隊長にそんなことをさせるなって言いたいんだろ」

 その通り。

「でもアンディもノリノリだよ。ジョーを見てるともどかしいんだってさ」


 まあ、確かに。しかもあいつは、どこかずれている。レティをかわいく思ってはいるようだけど、気の引き方がたまにおかしい。


「二人組…。許可が出るかな。それに先生とブルトン小隊長はその間、どうするんだ?」

「二人組がダメなら殿下チームだけ四人組。ジョー、レティでしょ。ミリアムとアル。ミリアムにお願いをしてアルと二人で、なるべくジョー、レティから距離をとってもらう」

「…なるほど。それで?」

「先生には参加してもらう。で、アンディ。ここは絶対に二人にするよ。で僕とウォルフガングね」

 まさか。

「お前、先生とブルトン小隊長をくっつけようとしているのか?」

「うん。やっぱり二人はお似合いだと思うんだよ。素敵湖畔で二人っきり、良い感じになれること間違いなし」


 脱力する。ヴィーのこの無駄にお節介な部分はなんなんだろう。

 でも反論する気力もない。


「ウォルフガングだけかわいい女の子とじゃなくて申し訳ないけどさ。好きな子ができたら協力するから、今回は頼むよ」

 思わず深いため息がこぼれる。

「お前には絶対、教えない」

「ええ!?なんで?めっちゃ頑張るよ、僕!」

「自分でなんとかするし。ヴィーに引っ掻き回されるのはごめんだね」

「なんでさ!?」

「お前、思い込みが激しすぎるんだよ!」




 ◇◇




 なんて愉快なやり取りを経て、無事に迎えた『デート大作戦』当日。よく二人の殿下に遠出の許可がおりたよ。

 と思うと同時に、ヴィーもまたよくおりたと思う。昨年の秋以降、外出の制限があったのに。

 やっぱりフェルディナンドのブルトン小隊長への信頼なのか。


 そして今回ももめた馬車の席順。

 片側にアル、ミリアム、ヴィー、ブルトン小隊長。反対側に、オレ、ジョー、レティ、キンバリー先生。

 ジョーはレティの隣を譲らないし、ヴィーはなんとかブルトン小隊長とキンバリー先生を並ばせようとするし、ミリアムはヴィーの隣にぴったりついて離れない。

 しかも。ジョー、レティ、ミリアム、ヴィーが片側に並べばいいんじゃないかと提案したら、なぜかヴィーにおもっいっきり足を踏まれた。なんでだ?理不尽すぎる。


 そんなこんなで目的地の湖畔につき、沢山の騎士に見守られる中、キンバリー先生の特別レッスンを受けた。ほとんど遊びだったけどな。

 で、ヴィー曰く、リベンジランチを楽しく食べて。午後はいよいよ主目的のオリエンテーリング。


 ヴィーとオレは首尾よく、ジョー、レティ、アル、ミリアムの四人を送り出すことが出来た。もちろん侍従と騎士付きだけど。

「えへへ、うまくいったね」

 黙っていれば美人の顔を、幼く崩して気持ち悪い笑い声をあげるヴィー。よほど嬉しいらしく、ブルトン小隊長とハイタッチをしている。

 と思ったら、オレのところへ来てハイタッチ。ついでにキンバリー先生とも。どうやら先生も作戦を知っていたらしい。にやりとした悪役っぽい笑みを浮かべてのハイタッチだった。


「じゃあオレたちも出発するか?」

 ヴィーを見る。ヴィーの作戦では大人二人と別れて回ることになっている。だがオレたちに付いているのは侍従だけ。騎士団は二人の殿下の護衛だからだ。当然ブルトン小隊長はヴィーから離れないだろう。


「えっと、せっかくだから競争しようよ」とヴィー。「先生チームと学生チーム。アンディ、先生に答えを教えたらダメだからね」

 …ヴィーよ。それが通ると本気で思っているのか。それがお前が考えた『いい案』なのか。そんなので超絶過保護の兄上様をかわせるはずがない。


「わかった。競争な」

 とブルトン小隊長。思わず、えっと声をあげた。

「…いいんですか?」

「なんだ?」

 小首をかしげる小隊長。

「だって、オレだけじゃ心配じゃないですか?」

「別に」とこの人は笑みを浮かべた。「お前は護身術もかなり上達しているし、周りに騎士がうじゃうじゃいるんだ。問題ないだろう」

「あらまあ」とキンバリー先生。「ずいぶんウォルフガングを買っているね」

「ヴィーを頼んだよ」

 ぽんと肩をたたかれる。


 信頼されている!

 予想外のことに胸が熱い。

 と同時にこの人のことが、ますますわからなくなる。


「よし、行こう!」

 ヴィーはオレの腕をとり、走り出さんばかりだ。


「でもまずいんじゃないかしら」

 とキンバリー先生。「私と君が二人で回っていたら、うじゃうじゃいる騎士たちになんて言われるか」

「言わせておけばいいだろ」


 ヴィーはオレに片目を瞑ってみせる。いい感じ、とでも思っているのだろう。


「じゃ、僕たちは…」

 とヴィーが言いかけたところでミリアムが駆け足で戻ってきた。アル、騎士団、侍従と続く。


「どうした?」

 とたんにブルトン小隊長は仕事の顔になり、ヴィーは青ざめてミリアムに駆け寄った。


「よかった、間に合ったわ!二人はおいて来たわよ。さあ一緒に行きましょ、ヴィー」

「え?」


 アルを見る。目が合うと彼は肩をすくめた。

「相思相愛双子だがらね」

 と言う。

 まさかミリアムはヴィーと回るために戻って来たのか。


「ごめん、ミリアム。僕はウォルフガングとまわるよ。ミリアムはアルとまわってよ」

「そんなことだろうと思って戻って来たの!ウォルフガングと二人きりなんてダメよ。心配だわ」

「えー、アンディは大丈夫って言ってくれたよ!」

「アンディは甘すぎるのよ!」


 こんなところに伏兵がいたか。

 オレが信頼を得られるのはまだまだ先らしい。

 がっくりと肩を落とすと、右からブルトン小隊長が、左からアルが背中をポンポンと叩いた。

「がんばれ、負けるな少年」

 キンバリー先生がキャッチコピーのようなセリフを吐く。


 くそっ。いつか誰にも文句を言われない男になってやる。







 ☆☆おまけ小話 ジョー編・作戦の行方☆☆


 素晴らしい景色の中をレティ、アル、ミリアムと歩く。周りは騎士団に囲まれているけれど、なかなかいい気分だ。

 ヴィーが自主学習なんて言い出したときは驚いたけど、これはなかなかいいんじゃないか。

 これで二人きりだったらもっと最高なんだけど。


「あっ!」

 後ろを歩いていたミリアムが声をあげた。何かと思い、足を止めて振り返る。

「ねえ、向こうも四人よね?」とミリアム。「ヴィーったら、絶対、そうだわ!アンディと先生の二人きりにさせるつもりよ!」

 俺はレティと顔を見合わせた。


「別にいいじゃん」と俺。

「ダメよ!」目をつり上げるミリアム。「ヴィーがウォルフガングと二人きりになってしまうわ!あっちには護衛がいないのよ!」

 なるほど。ヴィーの危険を心配しているのか。さすがミリアム。

 アルはもう諦めたのか、長く息を吐いた。

「私、戻るわ!みんな先に行っててね」


 駆け出すミリアム。

 そういうことで、とアルは言って後を追う。更に騎士たちとアルの侍従が後を追う。慌ただしい。

 ミリアムももう少しウォルフガングを信頼してあげればいいのに。あいつは本気で頑張っているぜ。


 だがこれはラッキーだ。

 隣を歩くレティをの手を繋ぐ。びくりと驚くところがかわいい。


「ねえ、レティ。あれ見てよ」

 と遠くを指差す。素直に従う彼女の柔らかそうな頬に素早くキスをおとす。 またしてもびくりとして、顔を真っ赤にする。かわいいなあ、もう。


 と、

「そこまでです!」

 とレティの侍女が駆けて来て、俺達の間に割り込む。

「やめてくれるか?」

「それはこちらのセリフです!」

 小さいくせに俺を睨みあげて、レティをぐいぐい追いやる。

「油断も隙もない!こんな、こんな衆目の中で!」

「じゃあ人がいなければいいんだな」

「そうじゃありません!」

 侍女の金切り声にうんざりする。

 せっかくいい気分だったのに。


「…手を繋ぐのもダメなのかしら」

 消え入りそうな声の、真っ赤なレティ。

 初めてだ、レティからそんなことを言われたのは!

 侍女も彼女のあまりの可愛らしさに眉を下げている。


「…じゃあ、手を繋ぐ、それだけですよ」

 やった、お許しが出た。

 俺は握りしめた手を、指をからめる恋人握りにかえる。

 レティが俺と手を繋いでもいいと思ってくれた!

 嬉しくて舞い上がりそうだ!


 繋いだ手を持ち上げて、彼女の手の甲にチュッと唇をつける。

 レティはまた赤くなって。


 今日はいい一日だ。

 ありがと、ヴィー。


読んで下さりありがとうとございます。


ブックマークや評価、とても励みになります。

重ねてありがとうとございます。


次回、本編に戻ります。

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