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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・赤毛と騎士

赤毛のウォルフガングの話です。

 鍛練場に入るとまだ誰もいなかった。

 一番乗りにほっと胸を撫で下ろし、剣を置いて準備運動を始める。


 基本的に騎士団に入ることが前提の予科練。オレのように家業を継がなければならない者が通常の予科練生と同等の扱いを受けるためには、他人の何倍もの努力をしなければならない。

 幸い好意的な仲間も騎士もそれなりにいる。


 今日の指導はブルトン小隊長の隊だ。少年団と比べて人数の少ない予科練の指導は、どこの小隊も半分ほどの騎士しか出てこない。その半分の決め方はそれぞれの隊によって違うが、大抵は若手が受け持っているし、隊長や副隊長はあまり見かけない。長がつくクラスになると格段に忙しくなるらしいから、仕方ないことだ。

 でもあの人の隊は隊長班と副隊長班とに別れて、きっちり二交代制だ。ベテランに指導してもらえる貴重な機会だ。


 ある程度の運動をして体が温まってきたところで柔軟を始める。ポツポツと他の予科練生も集まってきた。挨拶を交わす仲間もいれば、目も合わせない仲間もいる。本気で騎士になろうとしている平民なんかから見たら、オレはムカつく存在だろう。でもオレは、二度と誰かに庇ってもらうなんてご免なんだ。


 しかし今日は隊長、副隊長どちらの班だろう。


 やがて現れ始めた騎士の顔ぶれを見て、隊長の班だとわかった。嬉しい半分、複雑な気持ち半分だ。あの人は分け隔てなく指導してくれるからありがたい。むしろオレのことを買ってくれている。多分、というか絶対にヴィー繋がりだけど。

 一度、ポロリと言われた。早くフェルディナンドが安心できるといいんだが、と。

 つまり今のオレでは安心できないということだ。

 わかっている。わかっているさ。

 でも、悔しい。


 ブルトン小隊長がやって来て、よく通る声で集合をかける。まだ学園を卒業してたった四年と少しなのに、この貫禄。いるだけで場の空気が引き締まる。


 ヴィーは。こんな『アンディ』を知らないだろう。



 ◇◇



 休憩時間となった。

 またあの人はオレの元に来るだろう。

 滴る汗を拭きながら、上がった息を整える。だいたいの予科練生が同じような状況だ。

 隣で休んでいる仲間と二言三言、先程までの鍛練について意見を交わす。と、仲間が目で、来たよ、と知らせる。まったくめんどくさい。


「ウォルフガング」

 呼びかけられて、仕方なしに直立不動ではいと答える。いいよ、と許可が出て通常の姿勢に戻った。

「学校はどうだ?」

 いつもこの質問だ。

 はっきりと言われた訳ではない。だがこの人が知りたいのはオレの学校生活じゃない。双子の学校生活だ。

 特に変わりないと最初に伝え、さもついでのように双子それぞれの細かいエピソードを伝える。まるで密偵の報告だ。


 ヴィーが思っている以上に、この人も過保護だ。双子が心配でならないらしい。フェルディナンドと違うのは、それを口に出すか出さないか。一見ヴィーを好きにさせているようにみえて、がっつり周りを守っている。

 いつだって大人ぶって余裕を見せて理解ある兄の顔をして、その実上から目線でオレを半人前扱いだ。

 ああ、イラつく。


 だいたいこの人は、双子からしたら良い兄かもしれないが、女性関係に関して最低だ。

 黒歴史だからと口止めされているが、実はうちの一番上の姉と付き合っていたらしい。学生のころ、たった二週間だけ、手を繋いで終わりだったようだが。姉が言うには、来るもの拒まず去るもの追わずらしい。


 いつだったか、あんまりヴィーが無邪気にこの人を信じているから、ついつい意地悪をして余計なことを話してしまった。まるっきりガキのやることだ。だから半人前扱いされてしまうんだ。


「明後日は郊外学習ですからね」とオレ。「ヴィーは委員として準備をがんばってます。キンバリー先生の支度も手伝っていますよ」

 あ、つい嫌みを入れてしまった。我ながら、ガキだ。でも元カノの名前が出たくらいで動揺する人じゃない。


「すっかりなついているな。明日もせっかく委員会がないのに、医務室で遊んでくるから遅くなると言っていた」

 む。ほら、すぐに何でも知っている感を出す。

「そもそも医務室は遊びに行くところではないのにな」

 自分も行ってたんじゃないですかー、と言ってやりたいのを我慢する。

「遠足前にはしゃぎすぎて、また腹を壊さないといいですけど」

 ああ、お茶会の時な、とまたまた知っている感を出す。

「晩餐を食べすぎないよう気にかけておくか」

 晩餐?あんたまた?夕飯くらい自邸で食べろよ。

 …まあ、あまり父親とは良好な関係ではないとの噂だけどさ。

 にしてもシュタイン邸にいすぎじゃないか?だから結婚できないんだ。


 と、ブルトン小隊長の口角が僅かに上がった。笑った…のか?何にだろう。彼の視線の先に笑える要素はない。オレなのか?


 彼はオレの肩をポンと叩いた。

「ヴィーを頼んだ」

「…はい…」

 よくわからないけど、頼まれた。

 頻繁に脈絡なく頼まれるけど。何をそんなに頼みたいのか。この人の意図はわからない。


 去りながら、集合と声を張り上げる後ろ姿に首をかしげた。


読んで下さってありがとうございます。

次回、本編に戻ります。

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