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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・王子の追及

第二王子アルベールのお話です。

 朝からノンストップだった一行がようやく止まり、昼食用にと案内されたのは、清潔ではあるけれど、一般市民向けの食事処だ。長い道中、格式のある飲食店以外に寄らざるをえない時もある。これも社会勉強のひとつだ。

 店の主人や店員が平身低頭して僕を迎えている。王子様スマイルを浮かべ、二言三言、言葉を交わす。僕が寄るために貸し切りになっているのだ。いくら金払いがよくても、通常客を入れられないのは痛手だろう。


 店で食事をするのは、僕と侍従侍女の5人だけ。警護の騎士団たちは何十人といるので、とても店には入りきらない。道中彼らは基本的に、旅用の携帯食なのだ。


 店内に入り席につく。僕はテーブルに一人。やや離れたテーブルに侍従侍女たち。僕の周りに警護のためにアンディを含めて騎士が3人が立哨。

 なかなかシュールな絵面だけど、何があるかわからないから仕方ない。とはいえ小隊長自らご苦労なことだ。


 食事は既に用意されていたのだろう、前菜らしきものがすぐに運ばれて来た。

 この時間に、彼に聞きたかったことをぶつけよう。


「アンディ」

 と呼び掛けると、仕事には忠実な古馴染みは、 辺りの警戒を怠らないまま

「なんでございましょうか」

 と答える。仕事中の彼は敬語を使う。

「きのうはヴィーを街に連れ出したんだって?」

「約束でしたので」

「ミリアムが怒っていたよ。『ヴィーを連れまわして鼻の下を伸ばして喜んでいる変態』って」

 ぶふっ、という音に振り向けば、他の席について食事をしていた侍従が、口から吹き出た何かを慌てて拭いていた。

 アンディ自身はややうんざりした表情だったけれど、小隊長らしく動じた様子はみせなかった。つまらない。


 王宮を出る前に、双子の父であるシュタイン公爵にウォルフガングの件を確認したのだが。そのときにフェルディナンドから聞いたのは。


「ヴィーから、女性に不誠実な点さえなければミリアムの結婚相手に推すのに、って言われたんだって?」

 フェルディナンドは爆笑していた。

 アンディは今度こそ、はっきりとうんざりした表情を見せた。周囲への警戒は怠ってないけれど。


「ミリアムが聞いたら、髪を逆立て怒りそうだよね」

「最近の彼女は私への風当たりが強すぎます」

「アンディがヴィーを甘やかしすぎるからだろう」


 彼女はそれが面白くないのだ。大事なヴィーをアンディに取られてしまいそうな気がしているらしい。ヴィーのいないところでは、アンディへの態度の冷たいことといったら、見ているこちらがハラハラするぐらいだ。もっとも大人のアンディは余裕の対応でかわしているけれど。

 ミリアムは、ヴィーがいるところではそんな態度は一切見せない。だから今日のあの台詞には驚いた。よほど腹に据えかねたのだろう。


「実際どうなんだい?なんだかんだいっても、大親友の妹じゃないか。ミリアムを妻に迎える気はあるの?」

 アンディは初めてちらりと視線を寄越した。

「…ヴィーにもフェルディナンドにも言いました。7つも年下の子供を妻にして喜ぶ変態じゃない、と」

「ふうん」

 確かにアンディと噂になるのは、いつもちゃんとした大人だ。

「よかったよ、護衛のトップが変態じゃなくて」

「…私も誤解が解けて嬉しいです」


 政略結婚の多い貴族社会では歳の差婚なんて珍しいものではない。けれど僕たちを生まれ落ちたころから知っているアンディにとって、僕たちはずっと『子供』なんじゃないだろうか。


「彼女も私がいなくなって、ほっとしているでしょう」

 真顔のアンディ。それは僕も否定しない。だが。

「でも置き土産をしてきたじゃないか。ウォルフガング・ブラン。彼女、カンカンだよ」

「ヴィーにも友人は必要です」

「だから嫌われるんだよ」

「双子のためには嫌われ役も必要でしょう」

『双子のため』だって。言い方がずるいなあ。そう言えば僕が黙ると思っているのだ。もっとも今更文句を言ってもしょうがない。僕もアンディも一年戻ることはできないのだから。


 ウォルフガング・ブラン。なかなか侮れないヤツだ。

 お茶会が終わった後すぐに、親子で謝罪に来た。そのことはみんなに話してあるが、実は黙っていることもある。

 お詫びとしてブラン伯爵家は、この旅路で途中購入しなければならない、騎士団の携帯食と馬の飼い葉を全額負担すると申し出たのだ。

 そこまでされたら、こちらも矛を納めないわけにはいかない。あの騒動はそれで手打ちとなった。


 その話がまとまったところで、ウォルフガングが言い出した。この件は内密に、特にヴィーの耳には入れてはいけない、と。知ればきっと大人しくはしていないから。

 その通りだ。ヴィーはきっと自分にも責任があると騒ぎだす。

 しかしウォルフガングはヴィーとの付き合いは全くないのだ。ただあの一瞬で、そうするだろう性格だと予測をたてたのだ。

 商売人らしい観察眼、なのか。









 僕がいない間に。

 もし…。







 いや、考えてはいけない。

 余計な気持ちを押し込んで、意外に美味しい料理を黙々と食べることにした。


読んでくださってありがとうございます。


ブックマークしてくださった方、励みになります。ありがとうございます。


次回、本編に戻ります。

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