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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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番外編・王子の鬱憤1

第二王子アルベールの話です。

番外編・王子のやっかみの後の出来事になります。


☆お知らせ☆

本日付けの改稿は誤字の訂正のみになります。

改稿と誤字についてのお知らせが、次ページの後書きと活動報告にあります。

「思い出したのだけど、手紙がひどかったの」

 そう言って僕の可愛いミリアムが苦い笑みを浮かべた。

 さっと血の気が引く。

 どの手紙のことだろう。最近は送っていない。毎日のように会えているからね。


 …本当は会えないたった一日のためにだって手紙を書きたいけれど、我慢している。バレンに焦らすことも大事だと教わったからだ。会えない日、便りすらない日が相手に、『早く会いたい』という気持ちを募らせるのだそうだ。


 本当は僕はそんなことはしたくない。だけど…。

 ミリアムは素晴らしい女の子だ。彼女は世界で一番優しい心の持ち主で可愛らしくて賢くて健気で思慮深い。

 だけど…ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、奥ゆかしすぎる。


 彼女が僕を好いてくれていることは十分承知している(なんて幸せなんだろう!)。だけど思慮深くて奥ゆかしいミリアムは、どんなときだって上品な振る舞いを崩さない。


 ヴィアンカなんて。たった三日の出張に行ってただけのアンディが帰ってくると、まるで一年も会っていなかったかのような笑顔を浮かべて全力で駆け寄る。


 …いや、わかっている。

 昔からヴィアンカはそういう、少しばかりやんちゃな女の子だったし、一方でミリアムは完璧に淑やかな女の子だった。

 比べるなんて酷い話だ。


 だけどやっぱり羨ましい。僕もあんなに激しく『アル!!』と名前を呼んでもらいたい。駆け寄ってもらいたい。


 …もっとも僕が先に駆け寄っちゃうだろうけどさ。

 アンディだって公共の場で、愛しのヴィアンカに駆け寄って力一杯に抱き締めていた。その代償にフェルディナンドに殴られていたけどね。


 いやこんなことを考えている場合じゃない。手紙だ。

 沢山書いたのはペソアにいた時だ。書きすぎて、内容はほとんど覚えていない。気を抜くと彼女への思いを滔々と書き綴ってしまいそうだったから、近況報告に徹していたけど、それが悪かったのだろうか。


 どうしよう。


「だいぶ前に、アンディがいつからヴィアンカを好きだったのか、という話をみんなでしたでしょう?キンバリー先生のところで」

 返事を返しながら、それと手紙がどう繋がるのかを考える。


「ヴィアンカがペソア滞在中のアンディに書いていた手紙の8割がね、ウォルフガングについてだったの」

「8割?」と聞き返し、それからもしやと思う。「酷い手紙って、ヴィアンカがアンディに書いたもの?」

「ええ。あら、最初に話したわ」

 ミリアムが不満そうに口を尖らせた。可愛い。その口に…


「アル?」


 はっとする。そうだ。さっきも僕は彼女に見惚れていた。その時に聞き逃したのだろう。


「ごめん。君があまりに可愛くて、聞いてなかったんだ」

 彼女の頬が赤くなる。

「いやね、バレンの影響かしら。アルがそんなことを言うなんて」

「違う。本当に君は可愛い」


 もう、と怒りながらも耳まで赤くなっているミリアムは、可愛い以外の何者でもない。不埒な思いが駆け巡る。


「それでね、手紙」

 彼女が強引に話を戻す。

 仕方ない。僕たちはまだ学生で、婚約しかしていない。節度をもった振る舞いをしなければならないのだ。

 あのアンディですら、ひたすら耐えている。僕だって耐えてみせる。


「…8割がウォルフガングというのは?」

「書き上げた手紙をヴィアンカが読ませてくれていたの。おかしなところがないか、添削をしてほしいと言って。そのほとんどが、ウォルフガングと何をしたか、どこへ行ったか、彼がどうだったか、という内容」

「…それは…」


 アンディの主張によれば、ペソアにいた頃はまだヴィアンカを弟妹のように思っていたという。だとしても8割他の男の話では、面白くなかっただろう。


「当時、ヴィアンカに尋ねたの。なぜウォルフガングのことばかりなのって」

「それで?」

「アンディが心配しているだろうからって答えだったの」

「どういうことだ?」

「アンディはふたりを引き合わせてすぐに旅立ってしまったでしょう?仲よくしているか、彼女が楽しく過ごせているか、絶対に心配をしている、って。だからウォルフガングのことを書くんだって言ったわ」

 ふふっとミリアムは笑った。


「ヴィアンカは一生懸命に、楽しく過ごしていますアピールをしていたの。あの恐ろしい事件のことだって、怖かったなんて一言も書かなかったのよ。いかにウォルガングが頼りになったかだけ」

「なんだかアンディがかわいそうだ。今読み返したら嫉妬で悶死するんじゃないか」


 ミリアムはまた笑った。

「思い出してすぐ、アンディに尋ねたの。あの数々の酷い手紙をどう思っていたか。ヴィアンカと兄さまとエレノアの前で」

「君もやるなあ」

「アンディったら、仏頂面になって黙ってしまったわ」

「やっぱり面白くなかったのか」

「兄さまが答えろとしつこく迫ったのよ。そうしたらアンディがね、『今にして思えばだぞ』と何度も念を押してから白状したのよ」

「なんてだい?」

「たまらなく悔しかったって」

「それがヴィアンカへの気持ちが変わった契機かな」

「きっとね」にこりとするミリアム「ヴィアンカは真っ赤になって謝っていたわ」




「ところでミリアム」

「なあに?」

「今はとても貴重な時間だ。手紙の話も素敵だったけれど、僕はもっと素敵な時間を過ごしたい」

 ミリアムは真っ赤になってうつむいた。


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