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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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番外編・王子とやっかみ

第二王子アルベールの話です。

「素晴らしい桜だ」

 そう言うと、隣を歩いていアンディが一瞬、顔を向けた。


 今日は王子としての公務で、都近郊の農家組合を視察に来ている。昼食のためにやってきた豪農の屋敷には立派な桜の古木が満開となっていた。

 今回の警備担当であるアンディは僕の右隣。左には一歩下がって副隊長。もちろん他に政府高官や騎士がうじゃうじゃいる。


「聞いたぞ。昨日はヴィアンカとお花見デートでいちゃいちゃしてきたそうじゃないか」

 仕事中のアンディは、決して臣下としての姿勢を崩さない。僕の口を塞ぎたくともできないはずだ。


「花見なんて王立植物園で充分だろうに、騎士たちから人がいない穴場スポットをわざわざ聞き出したんだって?」

 高官たちがにやけた顔をアンディに向ける。

「ヴィアンカはお前を信頼しきっているもんな。なんで近場で賑わいのあるスポットじゃないのか、なんて思わないのだろうなあ」


 背後で副隊長が笑いをこらえているようだ。笑うと飛ばされるぞというマッシモの小声が聞こえた。

 ついでに前を行く平騎士たちも肩が震えている。

 散々浮き名を流してきたはずの男が、困ったように赤らめた顔をしている。


「そんなデートができるなんて、羨ましいよ。さすが義理の父からの信頼が厚いだけあるね。で、どうだったんだい?ヴィアンカは楽しんでいた?確かちょうど一年前だよな。彼女をめちゃくちゃがっかりさせた遠乗りは」


 ついに、ぷっ、と吹き出す声がした。これはきっとマッシモだ。


「あれは酷かったね。しょんぼりしたヴィアンカは、それはそれで可愛かったけれど。まさか可愛らしくしょんぼりした姿を見たくて、フェルディナンドを誘った訳ではないよな?」

 アンディは渋い顔になっている。


「まあ、彼の馬鹿兄っぷりも突き抜けているけどさ」

 文官のひとりが僕に顔を背けて肩を揺らしている。確かアンディたちの同級生だ。


「昨日の遠乗りも、散々釘を差しておいたと言ってたな。フェルディナンドにはなんて言われたんだい?」


 にやけすぎて気をとられたのか、年配の高官が段差に蹴つまづいた。悪いな、まきこんでしまって。


「いつも通り『清く正しく』かい?」

 ぷふっと吹き出す声が幾つか聞こえた。ますます渋面になるアンディ。



 桜の古木の元に来た。足を止めて見上げる。


「桜とヴィアンカ、どっちがきれいだった?」

 誰も僕を、公務中です、と止めない。一応休憩時間だからね。

 なによりみんな興味津々なのだ。普段は何事にも動じず泰然としている彼が骨抜きになってしまった恋について。


「中隊長?質問したよ?」

 意地悪く階級を呼んでやる。


「…分かりました」となぜか澄まし顔のアンディ。「殿下はデートができないフラストレーションがお溜まりのご様子。ご公務に支障をきたしてはなりません。陛下にご報告致しておきましょう」


 ぶっ、と離れたところにいた僕の侍従が吹き出した。

 なぜかアンディに向けて親指を立てている。最近流行りの仕草だけれど。

 なぜアンディが『ぐっじょぶ』なんだ!


 周りのみんなが肩を震わせていたり、ニヤニヤしていたり。

 おかしい!さっきまでそれはアンディに向けられていたものだったのに。


「殿下は婚約者殿をお連れしてのお花見視察をお望み、と。次官、報告書に記載を」

 真面目な顔でのたまうアンディ。うなずく王宮庁の次官。

 そんなことを書くな!

「まだミリアム様お一人ではご不安のことでしょう」真面目な顔で高官が進み出てきた。「今回はご姉妹揃って、当然姉君にもご婚約者殿をお連れいただいての視察が最善かと考えます。さっそく明日の議会にかけましょう」


「おいっ!」

 僕が叫ぶのと、クスクス笑いが広がるのと同時だった。

 アンディも普段より強く、口を引き結んでいる。


 もう一人の高官が脇から、

「これほどまでに重大な視察には、レティシア殿下もご参加なさるべきではないだろうか」

 と真面目な顔で言う。最初の高官も大きくうなずく。


「いいなあ、トリプルデートだ」

 とどこからか笑いを含んだ声がした。

「誰が一番手が早いのかな?」


「聞こえてるぞ!」

 僕が叫ぶと、一瞬で辺りは静かになった。


 案内をしていた豪農の主人がひとりオロオロしている。

 そして。


「さ、桜でしたら、どうぞうちの庭で!出来うる限りのご宴席を用意いたします!」


 またも肩を震わせる騎士や高官。

 震える病か!

 そんな中で震えていない、三人目の高官が進み出た。よかった、彼はいつも真面目な人物だ。


「ありがとうございます」と高官。恭しい態度で軽く頭を下げた。

「明後日またお伺いすることになるでしょう。思春期爆発中のバカップルだけなのでどうぞお気楽に!」


お読み下さり、ありがとうございます。





ただただ、楽しいだけのお気軽な話を書きたくなりました。

そして絶対にアルは、気軽にデートしまくっているヴィーたちが羨ましくて仕方ないはずだよなあ、と思ったので書いてみました。

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