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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・兄の動揺 2

兄フェルディナンドの話です。

 馬車に乗り込むとバレンは堰を切ったように話始めた。


「ペソアにもゲインズブールと同じ能力を持った女がいる。あそこまで感度はよくないが、触れれば相手がどの程度の魔力の持ち主かわかる。だがあえてその力について口外していないから、知っている者も少ない。だからアンディ・ブルトンも油断したんだろうな。その女は最初は、単純にヤツを口説こうとして触れたらしい。だが、」

 バレンは僕を見た。


「日を追うごとに、その魔力が強くなっていることに気づいた。魔法の勉強に来ているアルベールの護衛であると同時に兄のような存在であることは知られていたから、共に切磋琢磨しているためだろうと考えたそうだ。あまりに脈がないから口説のをやめて数ヶ月後、何気なく触れて驚愕した。莫大な魔力にはね上がっていたそうだ。慌てて高官に報告した。それがもう留学が終わる時期だった」


 不安で鼓動が早い。嫌な予感がする。


「考えられるのは、ただひとつ。ヤツはアルベールがいない間も秘密の図書室に入室を許可されて、空き時間はほぼそこにいた。秘密の図書室の実質の管理は大師だ。ヤツは内密のうちに大師に師事して魔力を磨いていたんだ」


 ミリアムが握りしめた手に力を込めている。彼女も不安でたまらないのだろう。


「すぐに大師から事情を聞いた。だけど大師は何も教えていないと言う。きっと魔法書を読んで独学したのだ、と。ブルトン家は元々戦においての重鎮だろ?古い家柄で魔力も強い。あり得ない話じゃない。ペソアの高官は焦った。もしやシュシュノンは呪いの調査を装って、ペソアの秘術を盗み出して戦をしかける気かってな」


 アルベール殿下が首を横にふる。


「俺が留学した理由のひとつが、これだ。シュシュノン政府とアンディ・ブルトンの意図を探ること。だがこちらに来てすぐに、ペソアの考えすぎだとわかった。どう調査しても、そんな様子はない。そうだ、俺の侍従、ヨハンとオットーな、あの二人はその辺り凄腕だぞ」


 バレンは得意げな顔をした。


「そして。そんなアホな可能性よりも確実なのは」とバレンはまた僕を見た。「ヴィーの呪いを解くための下準備だ」


「…ブルトン家も呪い(まじない)魔法の家柄だ」

 僕の言葉にアルベール殿下も頷く。


「僕は去年の夏にバレンからこの話を聞いた。フェルディナンドに伝えるか迷ったよ。だけど君たちの間柄に僕が割り込むべきじゃないと考えた。アンディが自分で呪いを解くつもりでいるにしても、その方法は見つかってない。それに今はもうマリアンナもいる。だから急いで僕が暴露することもない、そのときが来たら彼の出方によって対処すればいい、そう思ったんだ」


「ところで」とバレン。「叔父上は旅立ちからこっち、大師に密偵をつけて様子を伺ってきた。そうしたら今日の昼ごろにマッシモ・ジュリアーニと不穏な話をしていたそうだ。マッシモ、わかるか?」とバレンはミリアムを見た。「アンディ・ブルトンの副官だ」


「そもそも大師がアンディを迎えに指名したのもおかしかったんだ」とアルベール殿下。「大師がシュシュノンに来るのは三度目だ。そんなに慣れない旅でもないだろうに」


「そう」とバレンが言葉を継ぐ。「だから不審に思った叔父上が密偵をつけていたんだ。アンディ・ブルトンは一切ボロを出さなかったがな。大師とマッシモは不穏な会話をしたあと、二人だけでシュシュノン学園の見学に出掛けた。日曜だぞ?ろくに職員もいない。護衛はマッシモ・ジュリアーニだけ。お気に入りのアンディ・ブルトンじゃない。というかヤツは非番でどこにいるかわからない。そして学園にはヴィーがいる」


「それで」とウォルフガング。「オレたちも学園に向かっているのか」


「そうだ。実は解呪方法が見つかっていて、アンディ・ブルトンがお前に」とバレンは僕を見る。「止められないよう秘密裏に呪いをとこうとしている。そう考えられる」




 僕は息を吐いた。

 なんでだ。

 なんでなんだ、馬鹿が。

 言ったじゃないか。

 僕は双子と同じようにお前も大事だと。

 どうして何でもかんでもひとりで抱えるんだ。

 僕たちは親友じゃないのか。



「フェル…」

 ミリアムが僕の顔をのぞきこんでいる。

「ミリアム。僕はアンディにそんなことをさせられない」

「ええ、そうね。わたしだって嫌よ。なによりそんなの、ヴィーが泣くわ」


「アンディのことだ。万が一のことがあっても、ヴィーのこととは関係ないと思わせる綿密な計画を立てているのだろう」とアルベール殿下。

「マッシモとキンバリーが協力してるのか」とジョシュア。

「こうなってくると、そうだろうね」とアルベール殿下。


「実は」とバレンは表情を曇らせた。「ひとつ懸念がある」


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