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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・主人公の惑乱 2

主人公マリアンナの話です。

「…解呪方法は見つかってないと聞いてる」

 ゲインズブールの顔が強張っている。キンバリーも。

 眠っているヴィットーリオとその兄は穏やかな表情だ。


「ヴィーがかけられた呪いについてはな。だが、どんな呪いでも解ける最高位の呪文というのがある。大師が隠していた」

「それは…」

 ゲインズブールが言葉を飲み込む。

「ペソア王家の秘中の秘らしくてな。どのみち大師の力をもってしても使えるか分からない、どんな呪いと言っても本当にヴィーの呪いにも効くのかも分からない。だから隠していたそうだ」


「そ、そんなの、やめなよ」あたしは声を振り絞る。「ヴィットーリオはお兄さんのことが大好きだよ」

 ひと月ほど前にここで話したとき。アンディはまだ帰って来ないんだと淋しそうに言いながら、服の下に隠れたお守りを触っていた。たかだか何週間かいないだけであんな顔をする子なんだよ。大好きな兄が自分のせいで死んでしまったらどうなることか。


「これしか手がないんだ」と兄。「それに俺は死ぬつもりはない。大師が力を貸してくれる。二人でやればなんとかなるかもしれない」

「まさかそのために大師は来国したのか」とゲインズブール。

「そうだ。大師はペソア王家の至宝だ。他国が行う危険な解呪に公式に関わることはできない。今回ご好意で、秘密裏に、無理のない範囲で協力してくれる。大師はお年をめされているからな。シュシュノンに来れるのはこれが最後だろう。当然、呪いを解くチャンスも最後になる」


 兄は淡々としている。だけど。

 ゲームのマリアンナは、きっとこれに関わって死んだんだ。


「でも、万が一死んじゃったらどうするの」兄に問う。「ヴィットーリオは自分を責めるだけだよ」

 そんな簡単なことも兄はわからないの?

「だから、今日のことは忘れろと言っただろう」と兄。「俺が死んだ場合も考えてある。ヴィーの件と俺の死は別件になる手筈が整えてある。2年、計画を練ってきたんだ、手抜かりはない。だから頼む。今日のことは決して口外しないでくれ」

 兄の決意は固いらしい。2年って、なんなのよ。そんなに前から計画してたの?


「キンバリー!いいの!?ねえ、ヴィットーリオと仲良しなんでしょ?」

「私だって賛成はできない」キンバリーは苦しそうに目を伏せた。「でも私が協力を拒んでも、彼はやるよ」

「だってヴィットーリオは望まないよ」

「ヴィーだけのためじゃない」

 兄は初めて哀しそうな顔をした。

「俺は10年もフェルディナンドやミリアム、殿下たちが苦しむのをそばで見てきた。もう解放してやりたい。あの苦しみを見続けるのは、俺もキツいんだ」

「特殊魔力のせいか」とゲインズブールが呟いた。

「お前ならわかるだろ」と兄。


 なんの話かは分からないけれど、ゲインズブールも納得をしてしまったのか、険しかった表情が泣きそうな顔に変わった。

「マリアンナ」とゲインズブール。「こいつがこれからやることは、本来ならお前がやらなければならないことだ。そのためにお前の命が買われた」

「え!」

 命が買われた? じゃあ最初からあたしはヴィットーリオの生け贄だったの?

「こいつに万が一があれば全力で癒せ。それがお前の仕事だ」


「ダメだ」と兄。「ヴィーだけじゃない。フェルディナンドにも殿下にも、世間全てに知られる分けにはいかない。その子の力に影響が出るとまずい」

「馬鹿じゃないのか!」急にゲインズブールが叫んだ。「死ぬぞ!大師がどれだけの力があるのか知らんが、そんな最高位の魔法なんて現代の人間に使えるはずがない!死んだ王妃だって相当な魔力だったっていうじゃないか!」


「死ぬ気はない。万が一の備えはしてあるが、死ぬ気はない」

 そう言ってヴィットーリオの頬をまた撫でる兄は、どう見ても覚悟を決めているようにしか見えなかった。



 ノック音がして、扉が開く。騎士と老人が立っている。人数の多さに戸惑ったのか、二人は中へ入らず騎士は兄を見た。


 兄は大師と思われる老人に向かって無言で頭を下げ、ゲインスブールとあたしには、念のために下がっていろと言った。


 騎士と老人は室内に入ると扉を閉めた。

「アンディ」

 と騎士が兄に声をかけながら、あたしたちを見る。

「余分なのが増えた」と兄は余裕で笑っている。「気にするな。計画どおりで頼む」

 騎士も泣きそうな顔だ。これから何が起こるかわかっている、協力者なんだ。

 二人は肩を抱きあった。そして騎士はキンバリーに並んだ。


 ゲインズブールはその騎士の隣に立った。視線を交わしているけれど、言葉はない。あたしは手招きをされてゲインズブールに並ぶ。と、ヤツはあたしの耳に口を寄せて、ほとんど聞き取れない声で、心構えをしておけ、と言った。

 それは万が一のときに兄を癒す準備ということかな。

 何も知らずに眠っているヴィットーリオを見る。きっとあれは魔法で眠らされている。



 大師は懐から黄ばんだ紙を取り出した。兄が受けとる。すると大師は兄の斜め後ろに下がった。

 あの紙に呪文が書いてあるに違いない。






 いいの?ヴィットーリオ。

 あなたの大好きな兄は死ぬよ?

 だってゲームのあたしは死んだもん。

 大師がいたかどうかは知らないけどさ。

 夏服の時期だしさ。

 今すぐ起きないと、あたしのお墓の変わりにあなたの兄のお墓を見ることになるよ?



 こんなやつ、全然あなたの味方じゃないじゃん。

 一番やってほしくないことを、やるなんてさ。

 騙されちゃって。バカなヴィットーリオ。


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