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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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3章・9カウントダウン 1

 二年に進級したと思ったらあっという間に日は過ぎて、もう五月も半ばだ。今頃アンディが率いる騎士団の中隊は国境でペソアの使節団と合流しているだろう。

 あたしがみんなに自身の秘密を知ったと告白するまでひと月ほどとなった。


 望んですることなのに、不安がいっぱいだ。みんながどんな反応をするのか、アンディの立場が悪くならないか、と答えの出ない問いを考え続けてしまう。


 出立前にアンディは、こんな時期に側にいてやれなくてごめんなと、沢山たくさん頭を撫でてくれた。

 あたしがあまりに不安そうに見えたのだろう、額にキスもしてくれた。

 あたしが前世の記憶を取り戻す前は、寝る時いつも、フェルとアンディにしてもらっていた。取り戻してからは二人のイケメンぶりに心臓が耐えられず、遠慮するようになったのだった。

 小さい頃に戻ったようで余計に不安になったけど、それは黙っていた。重要な任務に赴くアンディに、これ以上の心配をかけたくなかったからね。

 だけど感情は読まれているんだから、バレバレだっただろうけどさ。アンディは黙って最後にもう一度頭をわしゃわしゃして、旅立って行った。


 フェルの話では迎えの騎士団はアンディの隊にしてくれと、ペソアの大師から指名されたんだそうだ。

 アルと共に滞在した一年で相当な信頼を得たらしい。さすがだね。おかげであたしはひとりで不安を抱えなければならない。でもそのくらいガマンしなきゃ。

 幸い帰途の護衛にはつかなくていいそうだ。告白する前と後、どちらにいてほしいかと言えば、絶対に後の方だから。



 あたしは以前より見た目が女の子になってきている。二年ほど前、ミリアムにドレスを着せられたときも女の子に見えたけれど、そんなものじゃない。

 顎や肩のラインが前は多少は骨ばって固そうだったのに、今はすっかり丸みを帯びている。お菓子の食べ過ぎで太ったのかとも考えたけれど、違うようだ。

 顔も確実にフェルよりもミリアムに似てきている。

 このまま呪いが解けて女の子になれればいいのに。そうしたら誰かの命をかけて解呪する必要もなく、みんな大喜びだろう。

 実際に父様やフェル、ミリアム、アルたちも最近はその可能性を考えていると、アンディが話していた。


 そう思うとあたしが呪われた日、つまり先の王妃様の本当の命日はひとつの区切りだ。10年目の今年、その日に何かが起きるのをみんな期待しているらしい。

 そうなったらいいけれど。そうならなかった時のみんなの落胆を考えると胸が潰れそうになる。とても怖い日だ。



 なるべく気を付けているのだけれど、どうしても考えこんでしまう時間が増えている。おかげでミリアムをはじめ、みんなを心配させてしまっているようだ。

 ただ、塞ぎがちなのは、アンディがいなくなって淋しがっていると勘違いしているみたい。本当のことは言えないので、その勘違いに乗っかって、ごまかしている。


 おかげで放課後は、王宮に集まったり、仕事もないのに委員会室に長居をしたり、ウォルフが街歩きに連れ出してくれたりと、かなり充実している。

 気を紛らわすのにはちょうどよい。ありがたいことだ。


 ウォルフなんて、店頭に立つ日が減ったのか、やけに一緒にいる。予科練もあるはずなのに大丈夫なのかと訊いたら、しょんぼりしている友人をほっとけないだろうと言ってくれた。本当にウォルフっていいやつだ。


 お礼に、いつかウォルフに好きな女の子が出来たら全力で応援するよと言ったのだけど。そうしたら盛大なため息とともに余計なお節介はいらないと怒れてしまった。

 だってウォルフがしょんぼりするときがあるなんて思えなかったからさ。代わりに何が出来るかと考えた結果だったんだけどな。気に入らなかったらしい。

 まったく、偏屈なんだから。



 ところで。

 アンディ以外で唯一、あたしが秘密を知ったことを打ち明けているキンバリー先生。このキンバリー先生へのフェルの風当たりが急激に強くなった。医務室に寄るな、仲良くするな、信用できないと否定の言葉を重ねるのだ。理由は教えてくれない。

 そんな頭ごなしの態度には、フェルらしさがない。あたしにあれこれ禁じていたときだって、もっともな理由をつけていたのに。


 もっともあたしもミリアムももう17だ。いくらフェルでも理不尽なことには従いたくない。黙って医務室に遊びに行っている。

 キンバリー先生にフェルとの間に何があったか尋ねても、困った顔をするだけでフェルと同様に教えてくれない。


「ちゃんと説明したんだけどね」と先生。「元々信用がないから、納得してもらえないんだよ。アンディが帰ってきたら取りなしてもらうよ」


 心配かけてごめんと謝る先生。だけどそれだけ。


 先生にはあたしが、いつどのように告白するかは話してある。だからアンディがいないこんな時に相談に乗れないことも真摯に謝ってくれている。


 その気持ちは嬉しいけれど。結構な仲良しだと思っていたし、あたしは何でも話していたつもりだったから。何があったのか教えてもらえないのは淋しい。





 早く、全てが終わってほしい。

 女の子に戻りたいかどうかは、まだわからないけれどその日に呪いが解ければみんなは喜ぶ。

 だめなら告白。その先がどうなるのかは全くわからないけれど、あたしは女の子に戻らなくても構わないし、みんなにはあたしから解放されて自分の未来を考えてほしい。


 あたしの未来は。

 夏は海。冬はスキー。旅に出る約束があるから、大丈夫。それを楽しみにがんばれるもの。



 ◇◇



 そんなある日。

 授業中にマリアンナが倒れた。このところ疲れた顔をしていたから、また疲労かもしれない。

 クラス委員であるウォルフとあたしとで医務室に連れて行った。だけれどキンバリー先生は不在で、用件がある場合は事務員を呼ぶようにとの張り紙がしてあった。


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