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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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3章・7新学年

「そう、ぶうたれるな」

 と前に座ったウォルフガングに頬を摘ままれ、その手を振り払う。

「だって聞いてないよ」

「知らなかったお前が悪い。豚の顔から戻れなくなるぞ」

 ん?それは今の顔がすでに豚ってこと?

 むぅとしていると、またウォルフガングの手が接近してきたので、さっと交わす。

「…お前、素早く動けたんだ」

「さっきから失礼すぎない?」

 あたし、これでも元運動部。…と言いたいけれど、もう丸7年も前になる。さすがにちょっと鈍くなってきたような気がしないでもない。


「気軽にヴィーに触らないで」

 いつの間にか隣に立っていたミリアムが怒った顔をしている。

 そうだった。あたしは本当は女子だった。ウォルフガングめ、かわいい女の子のあたしに豚とは失礼な。


 新学期。あたしたちはシュシュノン学園の二年生になった。先程始業式を終えて教室へ戻ってきたところ。ゲインズブールが来るのを待っている。

 クラス替えがないことも、担任が変わらないことも聞いていたけど、委員も継続だなんて知らなかった。

 正確には再度選び直すらしいのだけど、ほぼ確実に一年と同じメンバーになるらしい。

 学園の常識らしくて、あたしが知った上で立候補したのだとみんな思っていたそうだ。


 委員会メンバーは好きだけどさ。ゲインズブールの手下をあと二年もやるのは、うんざりだ。


「ケチケチしない」となぜかジョー。「ヴィーが面白い顔をしているから、しょうがない」


 いつもと変わらないメンバーで新しい学年になった気が全くしないけれど、教室だけは違う。


「せっかくだから俺にも見せろ」

 ん?と振り向くとなぜか隣のクラスのはずのバレンがいて、がっつりと頬を摘ままれた。

「痛いよ!」

「バレン!」

 ミリアムが怒るより先に手は離れて、じゃあなガキとバレンはさっさと教室を出ていく。

「ごめん、ヴィー」となぜか謝りながらやってきたアル。隣にはレティ。「バレンのやつ、僕に用があっていたんだ」

「なるほど」

 とうなずいたジョーは然り気無くレティの腰に手を回して、アルにはたかれている。

 …なんだろう、ここは関係性にちょっと変化があるのかな。

 バレンの方はまだ留学中。だけど6月の王妃慰霊祭に臨席するペソアのお偉方たちと共に帰国するらしい。あんなヤツに淋しいなんて絶対に言ってやらないんだから。


 でもそれ以外にあたしたちには何の変化もない。

 つまりあたしはまだ、打ち明けていないのだ。だけど、たくさん沢山話し合って、いつにするかは決まった。



 ゲインズブールが颯爽と教室に入ってくる。

 教壇に立つと、

「連絡事項、なし。クラス委員は明日の入学式の準備があるから講堂へ行け。以上、解散」

 そして来たときと同じように颯爽と出ていった。

 みんなぽかんとしている。

 生徒はまだ席にすらついてないよ。出席は取らなくていいの?形だけでも委員の選出は?明日は入学式で二年三年は休みだと聞いてるけど、それは言わなくていいの?


「相変わらずね」とレティ。

「いや、悪化してないか?」とジョー。

「機嫌が悪そうだったな」とウォルフガング。

 マリアンナの特別指導がまたうまくいってないのだろうか。


 彼女の姿を探すと、カバンを持って席を離れるところだった。

 フェヴリエ・パーティーの後から人が変わったように大人しくなって、指導も真面目に頑張っているようだ。心底バッドエンドが怖いらしい。

 でももう年度も変わって、完全にゲームのエンド後だ。心配することはないんじゃないだろうか。


 目で追っていると気がついたのかこちらを見た。けれどあたしの周りのメンバーを確認するとすいっと顔を背けて教室を出ていった。

 アルに心残りはあるらしい。でもそれよりもバッドエンドがイヤだから彼のことは諦めると言っていた。


 マリアンナは好きじゃないけど。入学して以来、楽しいことはあったのかなと考えてしまう。春休みも帰省しなかったらしい。またお人好しねと嫌みを言われそうだからほうっておくけどさ。


「そういえば遠乗りは楽しかったかい?」とアル。

 昨日ようやく文化祭のご褒美の遠乗りに行った。

「うん…。楽しかった…」

「なんだよ、ビミョーな反応だな」とジョー。

「フェルも行ったのよね」とミリアム。

「フェルディナンドさんも?」とウォルフ。

「うん…」

 夏に行った湖畔に行ったんだけどね。

 急にフェルも久しぶりに遠乗りに行きたいと言い出して。アンディも大賛成。あたしのご褒美のはずなのに、あたしのほうがオマケみたいだった。色々相談したかったのに。

「…二人はすごく楽しそうだったよ」

「親友ですものね」とレティ。

「久しぶりに羽を伸ばせたんだろ」とウォルフ。「今度、オレと行こう」

「ダメよ」とミリアム「予科練生程度の腕じゃヴィーを守れないわ」


 当たり前だけどアンディにはあたしがモヤモヤしていたのはバレていて、相談はまた今度なと謝られた。お詫びに美味しいご飯屋さんに連れていってくれると約束したけどさ。

 あたしはご飯屋さんじゃなくて遠乗りに行きたい。だけどアンディは忙しい。しかもまた昇進して、中隊長になり更に仕事が増えたらしい。学校も始まってしまったし、今月はもう休みが合う日がない。来月は出張だし、再来月は慰霊祭でまた忙しい。

 正直なところ、怒っている。子供っぽいとは思う。二人が親友なのは分かっている。けどさ。すごくすごく楽しみにしてたのに。何ヵ月も待ったのに。

 それに…。


「じゃあ帰りに何か食べて帰ろう」とウォルフ。「どうせ委員会でこき使われて、帰れるのは昼頃だ。どうだ?」

 よし。モヤモヤはアンディにぶつけるとして、今日はそれを楽しみにがんばろう。

「久しぶりに委員会のみんなで行く?どこがいいかな?」

 なぜかジョーがため息をついて、アルが笑っている。またジョーはレティに何かしようとしたのかな。

「ジョー。レティにいたずらしてばかりじゃダメだよ」

「え、俺?」

 とびっくり顔のジョーと真っ赤な顔のレティ。

「そうだよ。レティとアルを困らせたらいけないよ」

「…なんでそうなるかな」と呟くジョー。

「日頃の行いの結果だ」と澄まし顔のアル。

「そうよ」とミリアム。「最近のジョーは目に余るわ」

「ほらね!」

「ひどいな」

 ジョーはなぜかウォルフにお前のせいだと言いがかりをつけている。


 あたしが秘密を知ったと打ち明けたらどうなるだろう、みんなが気を使ったりしてギクシャクとしてしまうのだろうか。

 そうアンディに尋ねたけれど、それはないと断言してくれた。


 みんなはショックを受けるけど、それは呪いが解ける前に真実を知られてしまったことについてだ、だから心配することはないって。それにお前は気を使われるほど、深刻に悩んでいそうに見えないキャラだから大丈夫だって。一応アンディ的には、褒めているらしい。複雑な気分だよ。


 ウォルフの友達たちが、お先にと声をかけて帰っていく。

 多分、いや絶対にもうホームルームが終わったのはうちのクラスだけだ。講堂に行くにしても早すぎるだろう。


 だけどウォルフは立ち上がり、行くかと言う。

「早くない?」

 と答えると、医務室に寄ってから行こうと言う。それならいいか。

 あたしたちはみんなに別れの挨拶をして教室を出た。地階の医務室へ行くために、人のいない階段を降りる。


「なあ、ヴィー」

「なあに?」

「さっき聞いてたか?遠乗り、オレと行こう」

「僕は馬に乗れないよ」

 知っていると笑われる。

「大丈夫、オレだってヴィーを乗せられる」

「誰か行くかな?」

「二人で」

「二人?」

 それは街歩きより危険な気がする。ウォルフにチョコを贈ったお嬢さん方から、剃刀でも送られてきそうだ。

「オレはそんなに遠くは連れていけないけど、弁当と菓子を持って行こうぜ。今時期はどこへ行ってもいい光景だ」

「…」


 どうしよう。

 ウォルフと二人で遠乗り。

 考えたこともなかった。


 ウォルフが足を止めてあたしを見た。

「オレは約束をしたらすぐ連れていくぞ。5ヶ月も待たせない」

「…アンディは仕事が忙しかったからしょうがないよ」

「…だとしても。オレはお前が行きたいと言ってくれたら、死に物狂いでフェルディナンドさんから許可を取る。そんなしょぼくれた顔はさせない」

 真剣な顔と声。

「僕はそんなしょぼくれた顔をしている?」

 ああと頷かれる。

 靴の爪先をみつめる。そうか。顔に出ていたのか。

「ダメだね、子供で。ちょっと思い通りにならなかったからってさ」

 言ってて自分で情けなくなってきた。

「ありがとう、ウォルフガング。気を使ってくれて」

「そうじゃない!ヴィー、オレは、」

「ん?」

 顔を見上げると、しばらく黙っていたあとにウォルフは長いため息をついた。

「気を使っているわけじゃない。友達が落ち込んでいたら、励ますもんだろう?」

「うん。ありがとう。ウォルフっていいヤツだよね。アンディも言ってた」

 ウォルフはまたため息をつくと再び階段を降り始めた。

「で、どうする?行く?行かない?」

「じゃあ、せっかくだから行こうかな」

「え!」

 ウォルフはびっくりしたように声をあげて振り向いた。

「あれ、行く選択は間違いだった?」

「いや、間違いじゃない、行くよ、勿論」

「ウォルフガングのお勧めの場所はあるの?」

「ああ、うちは近郊の観光案内もしているから」

「なんでもやっているねえ」


 ま、剃刀が来たらそれはそれで。せっかくウォルフが心配して誘ってくれたのだ。気分転換に楽しむのもいいだろう。

 あたしはいい友達がいて幸せ者だ。

 呪われている身なのに、こんなに良くしてもらえるもんね。


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