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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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幕間・兄の落胆 1

兄フェルディナンドの話です。

 エレノアの子供だけあって可愛くて優秀なレオノールは、一歳前だというのにあんよが上手だ。

 雛鳥のようにヨタヨタと歩く愛らしい姿に昔の双子を思い出す。


 寝返りもお座りもハイハイも伝い歩きも、すべてヴィーの方が早かった。だけどミリアムが遅かったわけでもない。大好きなヴィーに遅れをとるまいと思っていたのかいないのか、2、3日の後には彼女も同じことをしていた。

 あの頃が懐かしい。


 あの赤ん坊だったミリアムがよちよち歩きのレオを目を細めて見ながら、エレノアと談笑しているなんて、不思議な感覚だ。


 昨日、フェヴリエ・パーティーのためにドレスアップしたミリアムの美しさは奇跡のようだった。本当だったらヴィーと二人でパーティーの主役になっていただろうに。

 込み上げる悔しさで、悲しい笑みを浮かべていたミリアムに何ら言葉をかけてあげられなかった。思いは一緒なのに、すまないことをしてしまった。


 解決の兆しが見えない暗闇に、身も心も侵食されそうだ。だけどそれを押し止めてくれているのは、ヴィー本人の天真爛漫さだ。

 おかしなことだけど、男の子として学園生活を満喫しているヴィーは幸せそうで、こちらも癒されるのだ。


 そのヴィーは、パーティーが余程疲れたらしく昼食の時間まで眠っていたようだ。

 それでも疲れが抜けなかったのか、腫れぼったい顔で現れたヴィーは、折よく帰って来たアンディを見ると途端に元気になった。

 おもしろくない。

 あいつは僕の親友で、それこそ双子の兄弟のように何をするのも一緒で育ってきた。

 そのせいで、あいつは双子を本当の妹のように可愛がっているし、双子はあいつを兄のように慕っている。


 だけど、双子ももう年頃だ。

 ミリアムはしっかり心得ているからいい。

 だけれど自分が実は女だと知らないヴィーは、いまだにあいつにべったりだ。というか、昔以上にべったりだ。

 事件の後、数年は男の子っぽく成長していたヴィーだが、ここ最近はそれが止まり、一見女の子にしか見えない。


 外見を気にしているヴィーのために、あえてその話題は避けている。むしろ、少し骨ばってきたねなんて嘘をついて誤魔化しているくらいだ。


 その可愛いヴィーがあいつにべったべたなんだ。おもしろくなくて当然だ。

 あまりくっつくなとあいつには言ってあるけれど、ヴィーの方が慕っているのだから、どうしようもない。


 まったく、腹が立つ。




 …もしあいつが、ヴィーをくれと言うのなら。考えるぐらいはしてやるつもりだ。

 だけれども、可愛い弟としか思っていないと言う。それどころか、ウォルフガング・ブランをヴィーの結婚相手にと目論んでいるのだ。

 確かにウォルフガングはいい男だ。だけどヴィーの夫に相応しいかは別問題だ。




 開いた扉からウェルトンが顔を出し、部屋を見回す。

「ヴィーはいないよ」

 彼ははい、と頷きながらも戸惑い顔だ。

「実は昼食の後からヴィー様のお姿が見えません」


 なんとはなしに窓の外を見る。茜色の空。室内も燭台がいくつか灯っている。


 今日は疲れがひどいから一人でゆっくりすると聞いている。だがもう夕方だ。


「アンディと一緒ではないの?」とミリアム。

「アンディ様は夜勤明けで、お休み中です」心配顔のウェルトンは続けて言った。「おやつの時間にもお戻りにならなかったんです」

「あら、それは…」

 ミリアムとエレノアが顔を見合わせる。

「ヴィーのことだから、どこかで寝入ってしまったのかしら」とミリアムは立ち上がった。「お気に入りの場所を見てみましょう」


 ミリアムとウェルトン、心配したエレノアの侍女も部屋を出ていくと、

「アンディの部屋は確認したのかしら」

 とエレノアが言った。

「休んでるだろう?」

 僕の言葉にエレノアは笑った。

「アンディは、倒れそうに眠かろうが死にそうに疲れていようが、ヴィーに愁い顔で相談があるなんて言われたら、決して拒まないわ」


 …確かに。

「って、ヴィーに悩みがありそうだったのか?」

 エレノアは黙って肩をすくめる。こういうところは双子の味方をするのだ。

「…見てくるよ」

 僕はエレノアには勝てないし、勝つつもりもない。


 しかしもしヴィーが本当にアンディといるなら、さすがに叱らないといけない。あれほど疲労困憊のアンディに無理をさせるのはかわいそうだ。ヴィーはそういう所は弁えていると思うが…。


 ヤツの部屋に、入るよと声をかけて扉を開く。

 中は暗いまま。誰もいない。

 そのことに安堵しつつ、ではヴィーはどこにいるのだろうと考えながら踵を返した。

 それから、はたと止まる。


 まさか二人でこっそり街歩きに出かけたってことはないだろうな?


 念のために確認しておくか、と再び部屋に戻り、奥の寝室を覗いた。

 よかった。アンディは寝台でぐっすり寝ている。

 その傍ら。

 床にこてんと座りこみ、頭と腕を寝台に乗せて。ヴィーが幸せそうに眠っていた。







「ヴィーーッ!!」


お読み下さりありがとうございます。


これまで幕間から本編に戻るときにアナウンスをしてきましたが、3章は行いません。


今後、特別にご挨拶する予定はありませんが、読んで下さること、ブックマークや評価には常に感謝しています。

皆さまのお力で書き続けることができています。


拙い作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

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