Prologue:【おれとおまえ】
またしても新作です。
十話もいかないと思いますが、これを読んで少しでも感動してくれれば、僕もうれしいです^^;
ぜひ、こちらも読んでみてくださいm(_ _)m
朝、窓から射しこんでくる陽の光で、目が覚める。
ゆっくり体を起こし、一つ大きな欠伸をした。
俺は時計を見てギョッとする。
「げっ、遅刻!?」
慌てて制服に着替え、かばんを手に持ち、家をとびだした。
俺が通っている高校は、家に結構近い。
しかし、なぜか寝坊も多い。
つまり、俺はギリギリ遅刻の常習犯なわけだ。
よくクラス委員長とかに、ひどく怒られる。
その時、いつも俺に声をかけてくるやつがいた。
そいつの名前は【柊 美琴】。
何考えてるのか、よくわからないやつ。
でも、結構優しかったりする。
いつも、怒られて疲れた俺に、励ましの声をかけてくれるいいやつだ。
そんなことを考えたら、少し耳が熱くなったように感じた。
走っているせいだ、と俺は解釈をしたが、実際はよくわからない。
詳しく考える時間がないから、今走っているのだから。
と、ようやく校門が見えてきた。
「おーい!!もうすぐで予鈴鳴っちまうぞー!!」
校門の向こうから、教師が声をかけてきた。
意外に今日は、間に合うかもしれない。
「どうもっす」
俺はそう短く挨拶をして、通り過ぎていった。
大急ぎで靴を履き替え、階段を駆け上がっていく。
だんだん息が切れてきた。
自分の体力の無さを、毎日のように感じながらも、教室の前までやってきた。
力一杯にドアを開いた。
「ぎりぎりセーッフ!!」
この時、一気に力が抜けていくのを感じた。
今日はぎりぎり遅刻しなかったから、良いことがあるかもしれない。
そんなことを考えながらも、教室の床に座り込んでいた。
ふと、二人の女子が、俺に声をかけてきた。
「へぇ〜、今日はよく遅刻しなかったわね。褒めてあげる」
「すごいすごい、ナイスファイト!!」
「お、お前らなぁ・・・」
息苦しくも、かすれた声で返事をして、顔を上げると、いつものようにクラス委員長こと【柏木 智実】と柊がいた。
クラス委員長は、俺の頭をポンポンと撫でるように叩くと、自分の席に戻っていった。
柊は、俺の横に座わりこむと、いつものように声をかけてきた。
「おつかれさま。大丈夫?」
「あ、あぁ・・・わりぃ、な・・・」
俺はハァハァと息を切らし俯いていると、予鈴が鳴った。
柊はクスっと笑う。
「な、何だよ・・・?」
苦しそうに俺が聞くと、彼女は笑顔で答えた。
「結構、余裕だったね?さっすが!!」
俺は彼女の笑顔を直視できなかった。
というよりも、疲れきっていて顔をあげることすらできなかった。
「さっ、席に戻ろ?」
彼女は立ち上がり、手を差し出してきた。
俺は思わず息を呑んだ。
「じ、自分で立てるから」
そう言って、俺は窓際の自分の席に向かう。
窓際とは、なかなか悪くない席だ。
おさまりかけていた鼓動が、また高鳴りだすのを感じた。
胸に手をあて、落ち着いて、鼓動が静まるのを待っていた。
そんな時、ふと後ろから声をかけてきた。
「ねぇ、何してんの?」
「な、何でもない!!」
驚き混じりの返事を返した。
そう・・・柊は俺の席の後ろなのだ。
しかも、前の席では、さきほどのクラス委員長が目を光らせている。
何とも危険な席の配置なんだろうか、と改めて落胆していると、右隣の男子生徒が声をかけてきた。
「お前、よく生きてるよな」
「言うな」
彼の名は【桜庭 音駆】。
ずいぶん変わった名前だが、意外に中身は普通。
運動神経も結構人並みだが、唯一音楽のセンスはズバぬけている。
その名の通り、“音を駆ける少年”になったわけだ。
最近、俺はこいつと仲が良い。
と、そんな説明をしていると、音駆は耳打ちをしてきた。
「お前ら、雰囲気いい感じじゃんか。お前もビビッてないで、もうそろそろ―――」
「うっせーよ」
彼の言葉を遮るように、俺は言い放った。
音駆は、俺の好きな人を知っている唯一の親友だった。
しかし、それでも俺はあの言葉の続きが、どうして聞きたくなかった。
だから、俺は遮った。
俺は知ってたから・・・だから、遮った。
彼女はあの時言っていたから・・・。
たまたま下校のとき、柊と鉢合わせになった時のことだった。
「ねぇ、あのさ・・・好きな人、とかっている?」
「えっ!?お、俺は・・・」
俺は答えるのに困った時、彼女ははっきりと言った。
「ウチはいるよ」
思わず俺は「えっ」と、固まってしまった。
「その人は、全然ウチの気持ちわかってくれないんだ。ホント」
「そう、なのか・・・」
喉に何かが詰まり、声が出なかった。
俺が隠してきたモノの存在は無意味だったんじゃないか、そう思うくらい俺にとって衝撃的だった。
「それでさ、いるの?いないの?」
突然、彼女はさっきの質問に戻った。
俺は俯き、声を絞り出した。
「・・・いたよ」
気づいたその時には、俺は眠っていた。
机に顔を伏せた体勢で、すっかり爆睡してしまっていた。
顔を上げると、国語の教師が黒板に淡々と文字を書き続けていた。
背中につんつんと何かを感じた。
ゆっくりと振り返る。
すると、柊は頬を膨らませ、俺を睨みつけていた。
「寝るなっ」
彼女は小声でそういうと、適当にそれに答える。
「もう寝てない」
「じゃあ、無視しないのっ」
「はいはい」
「・・・」
「・・・」
会話が終了したようなので、先生に怒られる前に、顔を黒板の方に向けた。
しかし、授業をまともに受ける気にもならなかったので、窓の外を眺めてボーッとすることにした。
静かな風が吹き、雲が空に浮いていた。
ふと、外に小さな鳥が過ぎった。
木が風に揺れて、かさかさと音をたてている。
俺はふと見た、さっきの“夢”を忘れようとしていた。
そんな時、チャイムが鳴り、授業は終わった。
放課後、俺は足早となり、さっさと下校した。
そんな時、一匹の茶色の毛をした猫が、日向ぼっこをしていた。
俺は、夕方に日向ぼっこなんて変な猫だな、と視線を猫に向けながら、歩いていた。
そんな時、後ろから何かが走ってくる気配を感じた。
俺はゆっくりと振り返る。
柊だ。
彼女が何かに向かって走ってきてる。
どうやら、猫のようだった。
「かわいいー!!」
柊は猫が大好きのようだった。
しかし、猛スピードで迫ってくる彼女に、猫は驚いて逃げてしまった。
その様子に、柊は小さくため息をついて、下校中の生徒の中に紛れた。
俺もそれを見届けた後、背を向け歩き出した。
しかし、声をかけられてしまった。
「おーい!!」
またしても、柊だった。
とにかく俺は、俺のことじゃないと思い込み、振り返らず気にせず歩いた。
・・・が、そこまでだった。
「ちょっと待ってくれてもいいじゃない。ウチも猫に逃げられて、結構落ち込んでたんだからね」
「その割りには元気だな」
「もっちろん!!だって・・・猫見れたし」
俺はふと思う。
今の間は何だったんだ、というか猫で落ち込んでたんじゃないのか?
思わず、呆れてため息がこぼれた。
しかし、柊はその様子を気にせず、真剣な面持ちで話し始めた。
「ねぇ、ウチの好きな人・・・誰だと思う?」
「・・・さぁ?」
何となく、数人心当たりはあったが、答えたくなかった。
正解してしまった俺は、嬉しいことなど何もないから。
むしろ、適当に誤魔化すほうが、俺にとって良かった気がした。
「わかってよぉ〜」
「・・・何でさ?」
「それは・・・相談に乗ってほしいからなの」
俺は声が出なかった。
急に胸が痛くなり、心の奥のモノが溢れてきそうになった。
俺はその時、頭が真っ白になり、その場から逃げ出してしまった。
柊は俺に、何か言っていたような気がしたけど、もう何も聞こえなかった・・・聞きたくなかった。
俺は逃げた。
その場から、できるだけ早く・・・。
気づくと俺は、膝に手をつき、玄関の前で息を荒くしていた。
俺は一回深呼吸をしてから、玄関のドアノブに手をかけ、家に入った。
部屋に戻ると、急に疲れと眠気が俺を襲った。
俺は倒れ込むように、ベッドに入った。
それから眠るまで、そんなに時間はかからず、深く眠りの中に入っていった。
俺はもう、何もかもが嫌になった。
ただ一つ、俺は願い続けた。
「・・・お前のそばに・・・いつまでもいたい・・・」
修正多くてすいません^^;