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第三話 ダンジョン攻略

あの日の俺の記憶はいきなり途切れている。周りからは自分の適正魔法を使わずに特訓してきたので疲れが溜まっていると言われるが、いつも自分を追い込んでいるのであの日だけということは無い。


(そして、あの夜以来全く魔法が使えなくなっている)


あの夜に何があったのか思い出せず、時間だけがすぎている。あの夜以来、佐伯とつるんでいる橋田と莅戸芽が特訓に参加せずにずっと部屋にいる。


そして明日は、ついに王都にあるダンジョンでの実践訓練だ。明日には、バレるかもしれないこの状況が俺の思考を大幅に狭めていることが自分でも気付かずにいた。



ーダンジョン訓練当日ー


俺はダンジョンに向けて、準備を念入りにしていた。

いくら初日で、浅い階層しか行かないと言っても魔法が使えないのだ。


そして全員が集まる。

「「おはよ〜灰利」」

幼馴染二人から挨拶される。

「おはよ」

俺は魔法が使えないのをバレたくなくてそっけなく返してしまった。

「おいおいおい、そんなんじゃダンジョンなんて行けないぞ!!」

そう言ってきたのは佐伯だった。

「すまない、初めてのダンジョンで緊張しているんだ。」

「ハッ、そうか、まぁせいぜい頑張れよな」


笑いながらそう言葉を残し、手をヒラヒラと振りながら去っていく。

集合時間ギリギリになって、橋田と莅戸芽が来た。二人とも表情が暗くて元気がないみたいだ。


ダンジョン訓練に行く最中も二人は変わらない。


ダンジョンに着く。

そこで俺は苦し紛れの提案をする。

「なぁ、みんな今回は魔法をできるだけ使わず近接戦闘だけで行かないか?もちろんピンチになったら遠慮なく魔法を使う。どうだ?」

「初めてのダンジョンで少し怖いけど……灰利が言うなら危なくなるまでは、それでやってみよう」

「そうだね、魔法なしの実力も知りたいし」


ダンジョンは徒歩や馬などの移動手段が使えない密林の中にあるため、ダンジョンに向かうためには、常備されている魔力で浮いて動く移動床に乗っていく必要がある。


移動床のところに案内人の人に連れてきてもらい、すでに浮いている床を見て、天羽がはしゃぐ。


「おぉ!すっごいファンタジーって感じ!!」

「それでは、皆様いってらっしゃいませ。無事に帰ってきてください。」


移動床は六畳ぐらいの広さがあった。案内人に見送られて俺たちは床に乗り込む。乗ると車や自転車などとは違う新しい感触だった。全員が乗り、案内人が床に少し魔力を流す、すると床が少しひかり動き始める。


◇◇◇


それから移動床に乗って数十分経ってやっとダンジョンに着いた。このダンジョンは、洞窟型のよく小説であるような物だ。


「洞窟なのに薄く光っていて明るいね」

「以前の探索で行った人達がつけて行ったって確か王様が言ってたわね」

「さて、いつまでもここにいる訳にもいかないから入ってみるか」


このダンジョンには、ゴブリンやコボルト、水辺には蜥蜴のような魔物がいるらしい。

ダンジョンの中を進んで曲がり角につくと何やら声が聞こえてきた。


「ギャッ、ギュッ」

「ギッ、ギャッ」


といった声が聞こえてきた。これはゴブリンの鳴き声だ。


「みんな静かに、この先にゴブリンがいるみたいだ。慎重に近づいて奇襲を掛けよう。前衛は俺と佐伯でタンクの役割を、俺たちが凌いでるあいだに天羽達が攻撃をしてくれ」

「分かった、それじゃあ合図を出すから一斉に行こう。

三、二、一、GO」


合図を出し、俺と佐伯がゴブリンに剣を振り下ろしながら角から飛び出る。ゴブリンは驚きながらも持っている棍棒で防ぐ。防がれたのを確認して、俺と佐伯は盾の仕事に回る。そして、すぐにゴブリンの攻撃が来るが盾で防ぐ。


「千歳、天羽、安曇、今だ!」

「莅戸芽、橋田、お前らもだ!」


「おう!」「うん!」「分かった!」

「「う、うん」」


盾で俺と佐伯がゴブリンの視界と棍棒を遮る。ゴブリンの死角から天羽と千歳の剣が振り下ろされる。剣はゴブリンの腕に当たるが力が足りなく、浅くしか傷がつかない。その後に、安曇が剣を横に全力で振りゴブリンの首を半分斬る。


「よし、そいつは致命傷だ!あとは莅戸芽と橋田に任せて、もう一体をやるぞ!」


そして佐伯の抑えている方のゴブリンにも、同じように攻撃を仕掛ける。今度は、天羽と千歳が同時に突きを放ち、ゴブリンの背中に突き刺さり絶命させる。莅戸芽と橋田に任せたゴブリンも止めが刺されている。


「よし、初めてにしては上出来じゃないか?」

「うん!こっちの被害はないし、連携もいきなりだったけど結構動けたしね!」

「この調子でどんどん倒そう!」


そうして、休憩を挟みながら1階層にいるゴブリンを倒して行く。たまにコボルトも出るがゴブリンよりやや腕力が強いくらいなのであまり変わらない。

持ってきた弁当も食べ、午後からも狩りを続ける。


「よし、今日はここまでで戻ろう」

「そうだね、結構体力も使ってあまり激しい戦闘はできないし」


俺たちは来た道を引き返す。戻る最中もゴブリンやコボルトなどの敵がいたが、とくに苦戦する訳でもなく無事に戻ることが出来た。


移動床の所に戻ってきてみんなが乗り、魔力を流す。来た時と同じように床が浮き移動を始める。

来た時はわからなかったが、あのダンジョンはかなり広くて、移動床が通る経路もその上を通っていた。

ところどころ、洞窟が隠されている密林に大きな穴が空いている。その穴は、ダンジョンの深くに繋がると言われる穴だ。


「ねえ、灰利あの穴ってなんなの?」

「あの穴はね……」


この瞬間、移動床に衝撃がはしった。


「なんだ!?」


俺は慌てて衝撃が来た下を見る。そこには、例のダンジョンの穴があった。その穴を見ていると、炎の柱が突き上げてきた。俺は驚く、なぜなら炎の柱はダンジョンの穴からではなく、ダンジョンと移動床の間の何も無いところから出ていた。突き上げてきた炎の柱は直径三メートルぐらいだった。


「おい、橋田!このレベルの炎を今操れるのはお前しかいないんだ!お前がやったのか?」

「違う!!俺じゃない、信じてくれ!!」

「だったらお前以外に誰がいる?」

「だって俺は魔法が使えなくなったんだから!!俺だけじゃない莅戸芽だって使えなくなった!!」

「…なんだと、お前も…」

「お前も、ってことは(つなし)お前もか?」

「ああ、俺もある夜に突然意識がなくなって、朝起きたら使えなくなっていた。」

「俺も同じだ。あの日、寝る前に琉生と話して突然意識がなく……」


その瞬間、再び炎の柱が現れた。その衝撃で、床の端で話していた俺と橋田が、突然の浮遊に見舞われる。そう、衝撃で床から追い出されたのだ。


「「きゃああああああ」」


千歳と天羽が叫ぶ


「うわぁあああ」

「うおおおおぉ」


魔法が使えない俺たちは、落ち続ける中何も出来ない。そして、落ちる先には、ダンジョンの奥深くに繋がる穴がある。


(あぁ、俺はここで死ぬんだ…)


落ちていく中、なんの手段も取れずに絶望する。

突然、落ちるスピードが緩やかになる。

天羽の自然適正の派生で風を起こしたのだ。

しかし、魔法の使い慣れていない天羽や俺たちは、スピードを緩めるのが限界だ。


(ありがとう、天羽、最後まで助けようとしてくれて)


落ちるスピードが再び戻る。天羽の魔力が底をついたのだ。その時、落ちている俺と橋田の上に人の影がひとつ指す。


・・・・・・・莅戸芽も落ちてきたのだ。


移動床の上には、口を三日月のように曲げて笑っている佐伯がいた。


「あははは!!お前達には教えてやるよ、俺がお前達の適性を奪った。今のお前達は何も出来ない!!」


(思い出した…あの夜俺は佐伯と話して意識がなくなったんだった)


俺と橋田と莅戸芽が穴に落ちてゆく、すでに俺たちは真下にある暗闇に身を落とそうとしている。


「灰利ぃぃいいいい」


千歳の叫び声を最後に、俺たちは暗闇に飲み込まれて行った。


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