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第十一話 パワーアップ

岩で作ったカプセルに入って一晩を過ごした。


「おはよう」

「おはよ…っ!」


莅戸芽は起きて挨拶すると、何かを思い出したみたいに俺に抱きついてきた。


「どうした?」

「顔」


どうやら強酸で半分ただれてしまった顔を、見せたくないみたいだ。口元まで爛れていたのを木の粉による回復と、水魔法による洗浄で何とか治して左の額から頬までに抑えられた。

俺は抱かれたまま質問する。


「左目は見えるか?」

「……無理、くっついて開かない。たぶん目ももうダメ……」

「…そうか」


すぐに対処したつもりだったが間に合わなかったか。

莅戸芽には、強酸から助けてもらったからどうしても治してやりたかったが。きっと助けたい理由はそれだけじゃないだろう。


(まだ力が足りない)

「…ねぇ…」

「なんだ?」

「この顔」

「顔がどうかしたか?」

「……気持ち悪くない?」

「そんな事は無い、ちょっと安全になって気を抜いたら少し怪我をしただけじゃないか」


俺の背中に回してある莅戸芽の手が、少し力が入り震えている。


「…どうした?そんなに心配か?」

「……うん」

「大丈夫だ、そんな怪我だけで俺はお前から距離をとったりはしない」

「ホント?」

「あぁホントだ」


俺は自分の心に聞いて本音で答える。

あと莅戸芽には言わなければいけないことがある。

俺も莅戸芽に片腕を回して抱き寄せる。


「莅戸芽、あの時俺を助けてくれてありがとう」


莅戸芽の両腕に力が入る。

莅戸芽の鼓動が自分に伝わってくる。


「そして……好きだ。これからも一緒にいてくれ」

「!!!」

「今顔は見えないけど相当驚いてるみたいだな」

「なんで?」

「お前を好きになった理由か?」


莅戸芽はコクリと頷く。


「実を言うと俺もあまりわからない。なんとなく一緒にここまで過ごしてきて、居心地がよかったしいつの間にか大切な、特別な人に俺の中ではなっていた」

「……こんな顔でも?」

「どんな顔でも関係ない、俺はお前がいいと思った」


俺は莅戸芽と過ごしてきて、気がついたら惹かれていた。いや、たぶん二人で過ごし始めてすぐに惹かれたんだと思う。ただ、これまでがいろいろあり過ぎてこの気持ちに気づくのが遅れただけだ。


「もう一度言う。俺は莅戸芽のことが大切で特別な存在だ」


莅戸芽の腕から力が抜け、顔が見える位置まで動く。

お互いの顔が見える。莅戸芽の顔が朱に染まっている。

俺の顔も耳の先まで熱くなり、熱を持っているのが分かる。

お互いの顔が近づく。目を閉じて互いに引き寄せ合う。

そして、唇が重なる。



少しして離れる。


「ありがとう、これからよろしくお願いします」

「ああ、俺からもよろしく頼む」


お互いに見合わせ微笑み合う。

まったく、初めの告白が魔物の腹の中とは我ながらすごいことをしているものだ。


「なぁ」

「何?」

「莅戸芽は…」


そこまで言って言葉が遮られる。


「む、名前で」

「穂澄は俺とで良かったのか?」


穂澄は納得がいったように頷いてから、俺の方を見る。


「やっぱり気づいてない」

「なにがだ?」

「私がもっと前から灰利のこと好きだったこと」


莅戸芽は少し頬を膨らませるような仕草を見せて、はにかみながら言う。


「ちなみにいつから?」

「気づいたのは、ここで生活するようになってから。だけど現世でも好きだったと思う」


マジか、まったく気がつかなかった。

まさか俺って鈍感?



その時、再び魔物の叫び声が響く。


「そうだった、俺たち今魔物の中にいるんだった」

「早く抜け出して、地上で二人で暮らしたい」

「はぁ、こんな時に」

「いや?」

「そんな訳あるか、そうだなさっさと抜け出して地上で暮らそうぜ」


俺たちは魔物の頷きあってから、脱出を試みる。


「さて、どうやって出ようか」

「これを倒す」

「それが手っ取り早いけど、どうやるかだな」

「レーザーで内側から焼き切る」


なかなか酷いことを思いつくものだと、少し引きながらもその案を採用する。


「穂澄、俺がレーザー撃ったら魔力がなくなるから脱出は任せるぞ」

「任せて」


俺は光魔法で光エネルギーを作り出し圧縮してゆく。


あれ?なんかけっこう余裕があるぞ、前回使った時よりも魔力が増えてる?


それもそのはず、ピンチを乗り越えるために魔力が無くなり次第粉を飲み、回復したら再び魔法を使い魔力を無くす。これの繰り返しだったのだ。逆に何も無かったら恐ろしく感じる。


「穂澄なんか、魔力にかなりの余裕がある」

「サポートいらない?」

「ああ、大丈夫だ!それじゃあいくぞ!」


水魔法のレンズを作らなくとも、今なら自分の力だけでエネルギーを圧縮して放出できる。


真上にレーザーを放つ。

魔物の身体を突き破ってレーザーが貫通する。

レーザーを出したまま、一回転させる。

魔物の身体が内側から破られて、遂にはレーザーによって千切れる。


俺たちはレーザーによって空いた隙間から飛び出る。飛び出た先が地面だったら困ったが、最初に落ちたところぐらいの大きさの空間だった。


魔物の方を見てみるとそこに居たのは、巨大なミミズみたいな魔物だった。あの時、固定した魔力を追ってきた魔物は、たぶんこいつだろう。けっこうな長さ魔力を流したから、一気に食おうとしたのだろう。


魔物は焼き切った身体を地面に打ち付けて、のたうち回っている。それだけで地響きがする。

正面から戦っていたら、以前なら簡単に負けただろう。この短期間でいろいろと強くなったので、今では負けないだろう。

ミミズみたいな魔物は、しぶとく動いて息絶える気配が全然ない。


(かなり生命力は高いみたいだ、試しに他の魔法でとどめを刺すか)


水魔法の派生、氷の魔法でミミズの上に大量の氷の槍や剣、細剣、戦斧を作り出す。


「おお、さすが」

「これくらいやらないと、穂澄は守れないからな」

「んっ!」


穂澄が嬉しそうに頷く。

それを見てから、ミミズに視線を戻す。


「さて、これで終わりだ」


そう言って、作り出した全ての氷の武器をミミズに向けて放つ。


ミミズに武器が突き刺さり、刺さったところから凍っていく。身体の肉の内部から凍らされるので、抵抗することも叶わず凍った部分から崩れ落ちていく。


ミミズの叫び声がどんどん弱まっていく。命が消えるさまを見届ける。


「すごい」

「これなら穂澄を守れるか」


ミミズが完全に氷の破片になった。

ホントにやっと落ち着くことができるな。

疲れたぁ、連戦で身体に魔力に強制的に回復させまくったからな。

思ったよりも身体にきてるな。


「ゆっくり休む」

「ああ、少し無理をしすぎた」

「すぐに用意する」

「ありがとう、穂澄」


この後、めちゃくちゃ二人で爆睡した。


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