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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
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第七十七話 同類

 Aクラス、Bクラスの生徒が特訓をしている頃、同じくCクラスの生徒も訓練場で自主訓練に励んでいた。だが、そこには代表選手五人すべては揃っていなかった。


 「やっぱり桜田君は来る様子がないね・・・・」


 Cクラス代表選手の一人である女子生徒、華美ハクは小さく呟いた。その言葉に代表の男子生徒の一人がハクに言った。


 「放っておけばいいだろう。どうせ声を掛けても無視されるだけだぜ」


 彼の言葉にハクも内心でおもわず頷いてしまっていた。クラス内で見る彼の姿にはクラスメイト達に対する仲間意識はなく、近づくもの全てを拒絶している。一緒に訓練をしようと誘っても一蹴される未来が簡単に予想できてしまう。

 

 「まあ、アイツなら訓練しなくても余裕なんだろうけどな・・・・」

 「それに一人で相手クラス全員次々と片付けそうだよね」


 確かにそうかもしれない。でも、それでいいのだろうか?仮に桜田君が自分一人の力ですべてを圧倒して勝利を収めたとしても、そこには信頼などは存在しない。

 そんな形で勝利などして・・・・他のクラスの皆に勝ったと言えるのだろか?いや、違う。そんな信頼もままならない自分たちが勝てるとも思えない。

 そう考えると、ハクはある決心をする。


 「みんなは訓練を続けていて。私は図書室に行ってみる、あそこによく桜田君は居るみたいだし」

 「放っておけよ、あんな奴」


 クラスメイト達はわざわざ声を掛けに行く必要もないと言うが、彼女は図書室へと結局向かった。やはり同じ代表選手として話し合う必要はある。




 図書室へと行くと、室内にはちらほらと数人の生徒が居た。そして、その中には自分の探していた桜田ヒビキの姿も確認できた。

 彼は予想通り図書室で読書をして過ごしていた。


 「(よし・・・・!!)」


 ハクは目的の人物が座っている席に意を決して接近する。

 そして、彼の隣まで近づき、声を掛けるハク。


 「桜田君、少しいい?」

 「・・・・何だ?」


 もしかしたら無視を決め込まれると思っていたが、返事を返して会話をしてくれることが分かりとりあえず一安心するハク。だが、まだ自分は一言声を掛けただけに過ぎない。ここからがいわば本番である。


 「桜田君・・・・みんな今第三訓練場で訓練してるの。・・・・桜田君も一緒に・・・・」


 「特訓をしよう」と彼を誘おうとするハクであったが――――


 「断る」


 ヒビキは彼女のセリフを最後まで聞こうともせず、速攻で断り入れる。その反応に少し怯んでしまうハクであったが、此処で引くわけにはいかない。ヒビキが拒否の言葉を告げて来ても、ハクはあ諦めずに再度訓練へと誘う。


 「他のクラスの人達は皆、勝つために一丸となっていると思う。桜田君の強さは私もよく知っているけどやっぱりみんなで協力しあって戦うべきだと私は思うな・・・・」 


 彼女の言葉を聞き、ヒビキが更に口を開いた。


 「だったら尚更俺を一緒に訓練に誘うべきじゃない。他の四人とは考えがまるで違う人間が一人いるだけでも場の空気というものは大分違う。そしてそこからチーム内には不穏和音は広まる。・・・・分かったらもう消えろ」


 ヒビキは話を終えると再び本の方に意識を傾けだした。彼の言葉を聞き、ハクもそれ以上は何を言っても駄目だと観念し、とりあえず今日のところは引き下がることにした。だが、去り際に最後に一言だけヒビキに告げておく。


 「平日の放課後、第三訓練場にいるから・・・・・・」


 そう言って彼女は図書室を退室して行った・・・・。




 「はあ・・・・」


 図書室の外に出たハクは小さくため息を吐く。分かってはいたがやはり取りあってはくれなかったヒビキであったが、それでも返事を返してくれたことから少しは期待してしまったハク、結局彼は一緒に来てはくれなかったが。


 「一応訓練場に居る事は言っておいたけど・・・・」


 だが、あの様子では来てくれるとも思えない。

 ハクは沈んだ気分のまま訓練場へと戻ろうとする。だが、そこへ声を掛けて来る生徒が居た。


 「あれ~ハクさんじゃん。どうしたの~こんな所で?」

 「東堂さん・・・・」


 自分の前に現れたのは同じクラスメイトの東堂ムラクモであった。彼女はハクに近寄って来て、話しかけて来る。


 「確かCクラスの代表の人は訓練場で特訓らしいけど?」

 「うん、桜田君を誘いにね、ちょっと図書室に来てたの」


 彼女の言葉にムラクモはああっといった納得の顔をする。確かに彼なら皆と共に訓練なんて想像できない。一人図書室で本を読んで過ごしているだろう。

 ムラクモがへらへら笑いながら落ち込んでいるハクの肩を軽く叩く。


 「まあ彼なら仕方ないよ。気にしない、気にしない」


 そう言って彼女なりにハクを慰めようとするムラクモ。

 とりあえず気を使ってくれた事にお礼を言うハク。その後、ハクはムラクモンに一つ質問する。


 「東堂さんは・・・・桜田君とよく一緒に居るよね。・・・・どうして彼と?」


 これは以前から気にはなっていたことだ。恐らくクラスのみんなもそうだろう、何故目の前の少女は桜田ヒビキにやけに接近するのだろう?ムラクモはハクのその質問に一瞬〝えっ?〟といった顔をするが、すぐにいつもに笑顔に戻る。


 「ん~~そうだねぇ~、彼が僕と似ているからかなぁ~」

 「え、に、似てる?」

 「うん、そだよ~」


 いったいどこが似ているというのだろう?正直この二人に似通っている部分など何一つある様には思えない。ハクはさらに深く質問をしていく。


 「似てるって・・・・一体どこが?」

 「うんとね~、彼は――――」



 「〝僕と同じで〟基本誰も信用していないんだよ」

 「え・・・・・・?」


 

 そう言ったムラクモの顔は、今までとは違い感情が一切感じられない無表情なものへと変わっていた。

 図書室前の廊下に居る二人の少女、その周りは無音に包まれていた。



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