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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
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第七十六話 Bクラスの特訓

 タクミ達が第一訓練場で特訓している頃、第二訓練場でもBクラスの生徒達が訓練を積んでいた。

 第二訓練場では代表に選ばれた五人の生徒による模擬戦が行われていた。ただし、その戦闘形式は四対一という不公平な人数組み合わせであった。

 しかし、その模擬戦で有利に勝負を進めていたのはは四人側の方ではなく・・・・一人の方の生徒であった。


 「ハアァァァァァッ!!」


 訓練場では勢いよく魔力を込めた刀を振るうシグレの姿が確認できた。その刀の向かう先は一人で自分たちを相手にしているカケルであった。

 

 「ん・・・・」


 カケルはシグレにより振るわれる連続の刀を背中から生やした翼で受け流し続ける。カケルの翼に刀が接触するたび、シグレはまるで鋼鉄に刀を振るっている感覚に陥る。


 「(くっ、硬い!!)」


 見た目はとても柔らかそうな美しい翼だが、それとは裏腹にその硬度は凄まじく硬く頑丈な物であった。


 ――ばしぃん!――

 「ぐっ!」


 翼を振るい刀ごとシグレの体を吹き飛ばすカケル。後方へと彼女を飛ばしたが、その背後から他の男子生徒が一人突っ込んできた。強化した拳を振るう少年だが、カケルはその攻撃をひょいっと躱し、至近距離から魔力弾を放ち男子生徒を吹き飛ばす。


 「ぐわぁっ!?」

 「群青!」


 吹き飛ばされた群青という名の男子生徒はカケルの放った魔力弾によってダメージを負う。すると、残り二人の生徒が魔力弾をカケルへと撃ってきた。迫りくる魔力弾、しかしカケルは翼で自分の体を包み魔力弾の攻撃を全て防ぐ。

 そして・・・・・・。


 「ん・・・・・・」

 ――ずばばばばばばばッ!!――

 「うおっ!?」

 「きゃっ!?」


 カケルは翼を振るい、そこから大量の白い羽根の遠距離攻撃を繰り出してきて二人の生徒に向け放つ。羽根を放たれた二人の男子と女子生徒は迫りくる大量の羽根を相殺しようと魔力弾を放つが、カケルから振るわれる羽根の量が多すぎる為、押されてしまう二人。


 「くぅ!≪換装≫!!」


 大量に撃ち込まれる羽根を迎撃する為、≪換装≫の魔法で少女は武器を取り出す。少女が取り出したのは複数の銃身が備わっている武器、ガトリング砲である。その武器にさすがにカケルも少し驚く。


 「ん・・・・クルミ、それ・・・・すごいね」

 「遠慮なく行くわよ!!発射ァッ!!」

 ――ズドドドドドドドドドドドドッッ!!――


 クルミと言われた少女は手に持つガトリング砲を容赦なくカケルへと撃ち続ける。カケルも負けじと大量の羽根による攻撃を展開して迎撃する。ぶつかり合う弾丸と羽根、しかしカケルは翼を羽ばたかせ上空へと跳ぶ。そして真上から白い羽根の雨を降らせようとしたが・・・・。


 「だああああああッ!!」


 いつの間にか上空背後から迫っていたシグレの存在。カケルが跳んだと同時にシグレも最大限跳躍し、カケルよりさらに上空から迫って来たのだ。

 そして、カケルの振るう翼とシグレの振り下ろした刀がぶつかり合った・・・・・・・・。




 「はあっ・・はあっ・・・・」

 「も、もう限界よ・・・・」

 「きつっ・・・・」


 訓練場の地面に座り込む三人の生徒、そしてその横では少し息を乱しているシグレとしれっとした顔をしているカケルが立っている。二人のその様子に他の三人は思わず呆れる。


 「あれだけやりあってよく平気で立っていられるよな」


 群青と呼ばれていた男子がそう言うと、同じく戦っていたもう一人の男子も続けて言う。


 「まったくだぜ・・・・特に星野は一人で俺達を相手どっていたのにな・・・・」

 

 しかもシグレ以上にカケルは疲労の様子がない。まさか自分たちのクラスにこれほどの魔法使いがいたとは思わなかった代表の三人。シグレはカケルの実力を知っていたようだが、見た感じではそこまで強そうには正直見えなかったため、彼女が代表の一人にシグレを推薦した時は驚いた。クラス内にはマスコット的なカケルを出すのは反対していた女子生徒達もいたが・・・・・・。


 「でもあの強さは頼りになるわね」


 シグレ以外のもう一人の女子代表で選ばれた真紀音クルミという名の少女がそう言うと他の二人もそれには覆いに頷けた。


 「あのストーカーを仕留めたその実力を改めて体感してみたく模擬戦を行ったが、まさかここまでとはな、カケル。頼りになるよ」

 「ん・・・・ありがと」


 シグレの褒め言葉に頷いて答えるカケル。

 シグレは座り込んでいる三人にも声を掛ける。


 「三人もこれでカケルの実力は分かっただろう。少なくとも私たち以上であることは確実だ」

 「でしょうね、私たち四人同時に相手取ってぴんぴんしてるんだから」


 クルミは汗一つかいていないカケルに目を向けながらそう言った。見た感じではやはりのほほんとした幼さ残る少年にしか見えない。

 すると――――


 ――くうぅぅっ――


 カケルのお腹の辺りから可愛らしい音が鳴り響き、カケルはお腹を押さえながら言った。


 「おなか・・・・すいた」


 カケルがそう言うと他の四人は思わず笑ってしまった。


 「ははは、ほんとに不思議な奴だよお前は」


 群青が笑いながらカケルにそう言った。たった今自分たちを圧倒していたヤツと同一人物には思えない程だ。本人は皆が笑っている事に首を傾げている。

 その様子を見てシグレも笑みを浮かべるが、カケルとの模擬戦の最中、彼女には以前と同じ違和感をカケルから感じていた。


 「(それにしても・・・・)」


 カケルに目を向けるシグレ。彼女が感じた違和感とは彼の魔力にあった。


 「(以前あの粘液ストーカーを撃退した時もそうだが、何故だろう・・・・彼の魔力にはうまくは説明できないがどこか違和感を感じるのは・・・・」)


 初めてカケルと出会った時といい、今回の模擬戦の最中といい、何故彼の魔力に対し自分は疑問を抱くのだろう?

 シグレは自分でも分からない疑問に頭を悩ませるのであった・・・・・・。






 アタラシス学園から離れ、場所はE地区内の人気のない森の中。そこには一人の女性がある事件についての調べ物をしていた。

 その女性はJ地区から異動して来た刑事、星川アヤネであった。彼女は自分が立ち会った中で、未だに唯一完全解決していない連続猟奇殺人事件の犯人を殺した存在を追っていた。


 「やはり、詳しく調べたが新たな情報は何も出てこないか・・・・」


 犯行が行われた場所を再び詳しく調べるアヤネであったが、新たな事件に結びつく情報は出てこなかった。

 

 「くそ・・・・だが見ていろ。必ず真相を突き止めてやる。」


 アヤネはその瞳に強く燃え上がる炎を宿す。


 彼女はまだ気付いていなかった・・・・・・自分がすでにその犯人と出会っている事を・・・・・・。



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