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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
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第七十四話 Aクラス五人の選手

 アタラシス学園での一年生の為の行事、〝クラス別魔法戦闘〟が開催されるのは九月の十七日の月曜日。

 休み明けの学園登校日に開催される。そして今日、Aクラスでは代表選手の五人の選抜が開催されてた。

 担任のチユリがクラス内の皆に誰が良いかを聞く。


 「では皆さん、今月に開催される〝クラス別魔法戦闘〟の行事に参加する五人の生徒を選んでいきたいと思います。まずはこの大会に自ら出場を志願する人はいますか?」

 

 チユリがそう聞くと、生徒達はみな顔を見合わせる。このような大きな行事に参加するとなるとやはり緊張してしまい自分から名乗り出る事を躊躇ってしまうのだ。

 しかしそんな空気の中、一人の生徒が手を高く上げ出場の意思を示した。


 「久藍君、この行事の代表選手として志願するんですね?」

 「はい、正直こういう事にはすごい興味があります」


 手を上げたのはタクミ。その様子を見ていたミサキとレンはやっぱりといった顔をしていた。なにしろ夏休み中にこのイベントに彼は興味を示していたのだから。

 周りのクラスメイト達もタクミの実力はよく知っている為、彼の参戦に異議を唱える者など居なかった。

 こうして一人目の代表選手が決まった。タクミ以外の生徒はそれ以降挙手をしなかったので、選出法を変更するチユリ。


 「では、自分以外で推薦しようと思う人がいれば教えてください」


 チユリがそう言うと先程志願したタクミが一人の生徒を推薦する。


 「先生、俺は津田マサト君を選手の一人に指名します」

 「!・・・・」

 

 タクミの推薦を受けたマサトは一瞬驚いた表情をするが、その顔にはすぐ笑みが浮かんだ。チユリはマサトに顔を向けると、参加してくれるか否かを質問する。


 「津田君、推薦されましたがどうでしょう、この行事の選手の一人として参加してくれませんか?」

 

 チユリの言葉にマサトは即座に返答する。


 「分かりました。推薦された以上はやらせてもらいますよ」

 

 マサトはタクミの方を一瞬見てにやりと小さく笑うと、タクミもそれに返すよう同じく小さく笑い返した。

 そしてチユリは残り三人の選手を続けて選ぶ。


 「他に誰かいませんか?自分から志願してもいいですよ」


 チユリのその言葉の後、再びクラス内が静寂に包まれる。だが・・・・そこに新たに一人の生徒が挙手をし参加の意思を示した。それは意外な人物であった。

 手を上げ参加の意思表明をしたのはなんとミサキだったのだ。これにはタクミやレンも驚いていた。


 「黒川さん・・・・参加志願でよろしいんですね?」


 チユリがそう言うとミサキは頷いて返事をする。


 「私も参加選手として出場を志願します」


 ミサキが今回参加を決意したのには訳がある。一つは参加するタクミをサポートしたいという想いから、そしてもう一つは・・・・・・弱い自分を変えたいからであった。

 姉、センナを失ったあの日から自分の魔法を完全に使いこなせるようになり、そしてタクミの隣にちゃんと立ちたいと思っていた。今の自分はタクミに守られてばかりだ、そんな弱い自分から脱退するために彼女は他のクラスの生徒達と競い合い己を高める決心をしたのだ。


 「分かりました、では三人目は黒川さんに出場をお願いします」

 「はいっ!」


 元気よく返事をし、やる気を見せるミサキ。クラスメイト達もそんな彼女が選手に選ばれた事に文句を挟まず納得をした。


 「あ~~、じゃあ私も志願していいですか?ほかに参加する人が居ないなら・・・・」

 「赤咲さん、あなたも志願ですね?」

 「レン・・・・」


 参加を示したレンはミサキに軽くウインクする。それを見てミサキは親友は自分のことを考えてこのイベントに参加したという事が分かった。

 こうしてタクミから順調に参加選手は決まっていき、残りの枠は一つとなった。ここで時間も迫ったことでチユリは一旦この話を打ち切った。


 「ではこの話は一度ここで切ります。選手に志願する人がもしいるならば私に直接報告に来て下さい。最後の一人が決まったら皆さんにも伝達します」


 こうしてAクラスの選手集めは一旦中止となった。


 「・・・・・・・・」


 そんな中、メイは自分の中の考えに迷っていた。

 最後の一人、参加を示すべきかどうかを・・・・・・・・。






 今日一日の学園生活も終わり、皆は荷物を鞄にまとめ教室を出て行く。そんな中、メイだけは席に座ったまま〝クラス別魔法戦闘〟の行事について考えていた。


 「・・・・・・」

 「何悩んでるんだよ」

 「あ、マサト君」


 一人だけの教室に幼馴染であり、恋人であるマサトがやって来た。

 マサトはメイの席まで行くと彼女の悩んでいる事の確信を突いて来た。


 「〝クラス別魔法戦闘〟に選手として出るかどうかで悩んでいるんだろう?」

 「!・・・・どうして分かったの?」

 「そりゃ俺がお前の彼氏だからさ」


 マサトは笑みを浮かべながらそう言った。答えになっていない解答にメイはくすっと小さく笑った。だが、そんなところもマサトらしいと思った。


 「参加したらどうだ?」

 「えっ・・・・でも私なんか」

 「そんなに自分を卑下するなよ。第一お前は個性魔法を〝解放〟してるんだから十分選手の資格があるだろう」


 マサトがそう言ってメイの頭をぽんぽんと叩く。

 しかし、メイの顔は優れない。その理由は参加理由にあった。


 「私・・・・クラスのため以上にマサト君が参加するから志願しようかと考えたんだ。でも、そんな不純な気持ちで志願なんて――――」

 「――――駄目かもしれない、か。何でだよ?」


 マサトは不思議そうな顔でメイのことを見て言った。


 「他に参加の意思を示してるヤツはいないんだからよ、理由がどうであれそれでお前が出る事が悪い事になる訳ねえじゃねえか。それにクラスの為に戦おうって気持ちだってあるんだろ?」

 「それは・・・・うん」


 マサトの言葉に頷くメイ。

 メイの答えを聞き満足するマサト。


 「その気持ちがあんなら自分のやりたいようにやれよ。彼氏としてするべきアドバイスはしたぜ。そこからどう選択するかはお前次第だ」

 

 マサトが言い終わると、メイの中でようやく答えが出た。


 「ありがとう、マサト君」


 メイはマサトにお礼を言うと、彼女は教室を出て職員室を目指す。恐らくこの時間ならチユリも職員室に居るはずだ。




 そして翌日、Aクラスの最後の選手枠に八神メイが選ばれた。

 こうして、〝クラス別魔法戦闘〟の代表選手、久藍タクミ、黒川ミサキ、赤咲レン、津田マサト、八神メイの五人に決まったのだった。

 そしてAクラス以外の四クラスも全ての選手が決まっていた。


 こうして〝クラス別魔法戦闘〟の参加選手がすべて決まったことで、各クラスの代表選手達は勝利を目指しそれぞれ動き出したのであった・・・・・・。

 


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