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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
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第七十三話 様々な生徒達

 休み明けの学園も四限目までの授業が終わり、今は昼休みとなっていた。長い休み明けの初日の授業ということで、体感時間ではいつもの倍近く授業が長く感じた生徒もいる。


 「終わった~」


 机の上でだれながらレンがそう呟く。

 彼女もまた授業中の経過する時間の速度がとても遅く感じていたのだ。


 「だれてるなぁ~レン」

 「まーねー」

 「もう、だらしないよ」


 タクミとミサキの二人が席でだれているレンに近づき話しかける。

 レンはだれている上半身をゆっくりと起こし、二人を食堂に一緒に行こうと誘う。


 「とにかくご飯行こっか、昼休みも限られているし」


 確かに腹も空いてきたのでタクミもレンの提案に賛成。ミサキも二人と共に食堂まで移動する。






 タクミたちが食堂に行くと、久しぶりの学園の食堂とあって普段以上の生徒が来ており、食堂内はとても賑わっていた。食事を取りながら夏休みの思い出を語り合う生徒達。辺りを見回してみるが、三人が揃って座れる席の空きは見当たらない。


 「購買の方行くか?」

 「そうだね、空いている席もほとんどないし・・・・」

 「それに少し騒がしすぎ、せっかくの貴重な昼休みを騒音の中で過ごすのは勘弁かなぁ~」


 生徒達の声を騒音と例えるのはどうかと思うが、確かに似たような心境であるためタクミは何も言わずメイの言葉に小さく頷く。

 三人は食堂を出て購買の方へと歩いて行く。幸いな事にいつもよりも人はいるが食堂の様にごったがえしている訳ではないのでとりあえずほっとする一同。

 購買でそれぞれパンと飲み物を購入して近くの空いている場所に腰を掛ける。


 「休み明け最初の昼食がパンとは・・・・なんか空しいね・・・・」

 「そ、そう言うなよ。そんなこと言われるとこっちまでなんか・・・・・・」

 

 購買でもどうやら大勢生徒が来ていたため、人気の商品は残っていなかったため三人が全員パンを購入したのだ。

 外の風景を眺めながらパンを食べる三人であったが、すると彼らに近づき話しかけて来る者がいた。


 「よお、ここいいか」

 「お、お邪魔します・・・・」

 「おお津田に八神」


 やって来たのは同じクラスのマサトとメイ。この二人との距離も夏休み中のキャンプを通じて近づいてきた様に感じる。タクミ達の隣に座る二人、その手にはそれぞれパンが備わっている。


 「ははは・・・・お前達もパンか」

 「ああ、完全に出遅れたぜ」


 ぶつぶつ文句を言いながら袋を開けてパンにかぶりつくマサト。隣ではメイが小さな口で丁寧に咀嚼している。

 先に食べ終わったタクミがマサトに今学期のイベントについての話をする。


 「なあ津田、二学期にあるあのイベントについてだけどお前はどのクラスが要注意だと考える?」

 「そーだな。Cクラスが一番警戒すべきだろうなぁ、やっぱりよ」

 「桜田ヒビキの存在か・・・・・・」

 「ああ、アイツは相当強いだろうな」


 やはり〝クラス別魔法戦闘〟の中ではCクラスが、そしてこの男の存在がもっとも注目されているようだ。

 そして話題になっている張本人は――――






 学園図書室で読書をしていた。

 彼は昼食をすぐに済ませ、この図書室へとやって来た。


 「・・・・・・・・」


 無言で本を読み続けるヒビキ。そこへ一人の少女が近寄って来た。気難しい彼に近寄って来る女子生徒と言えばある種固定しているのだが、今回は違った。


 「読書読書また読書・・・・本の虫とはまさにアンタのことを言うのね」

 「またお前か、今度は何だ?」


 本から顔を上げるとそこに居たのは以前廊下でヒビキの前に立ちはだかった怪しげな雰囲気を身に纏っている少女であった。

 彼女の名は多代セン、一年Dクラスに所属している女子生徒だ。

 センはヒビキに挑戦的な目を向けながらヒビキに言った。


 「もうすぐこの学園でそれぞれのクラスの代表者による戦闘が開始されるわ・・・・」

 「だから・・・・?」

 「・・・・・・そこで潰してあげるわ。・・・・・・アンタをね」


 センの潰すという宣言に対しヒビキは臆する様子はなく、むしろほんとうに微かではあるが彼の口は弧を描いていた。そんなヒビキの反応にセンは鋭い目をして突き刺すかのようにヒビキのことを見る。


 「自信満々ね・・・・〝あの時〟の私と同じ様に」

 「同じではないだろ。お前みたいに無様に地べたに這いずるつもりはないからな」


 ――ぶあぁぁぁッ!!――


 センの体から一瞬魔力がヒビキに向かって放たれる。

 その顔には怒りの表情が現れていた。一方ヒビキは目の前で魔力をぶつけられたにもかかわらず対照的に冷めた顔をしている。

 図書室に居る周りの生徒達は二人のやりとりにひそひそと囁き合いながら様子を見守っている。

 

 「・・・・・・ふんっ」


 さすがにこの場では少しまずいと思ったセンは怒りを抑え込み、ヒビキに最後、一言だけ言って図書室を出て行く。


 「必ず潰すわ・・・・・・」

 「・・・・・・」


 図書室の外へと出て行ったセンの後ろ姿を一瞬見送った後、再び手元の本へと意識を傾ける。だが、彼の口元にはセンが来る前とは違い小さな弧が描かれていた。




 図書室から出たセンの顔には未だにイライラと怒気が宿っていた。


 「あの男、今に見てなさいよ」


 ぶつぶつと小言を言いながら自分のクラスへと戻るセン。その途中、前方から歩いてきた男子生徒と肩がぶつかるが、そちらよりも先程の怒りの感情がまさっていたため特に謝罪も文句も言う事なく歩き去っていく。


 「ちっ、なんだアイツ」


 ぶつかっておきながら何も言わないセンに対して舌打ちをする男子生徒。離れていく少女の後ろ姿をしばし睨み付ける少年であったが、いつまでも見ていても仕方がないため視線を進行方向に向け再び歩き出す。


 「あの女ァ・・・・もしもイベントの代表に選ばれたら覚えてろよ」


 彼は気が短く、センが謝ってきたならまだしも黙って立ち去ったことに対して腹を立てそう呟く。ぶつかった程度でそこまで腹を立てる彼もどうかと思うが・・・・・・。

 

 少年の名は夏野ケシキ、一年Eクラス所属の生徒である。

 そしてクラスでは彼が代表の一人に選ばれることはクラス内でほぼ決定していた。

 

 「ケシキ、ちょっと待ちなさい」

 「あっ?」


 後ろから名前を呼ばれ振り返るケシキ。そこに居たのは一人の女子生徒、腕には風紀委員の腕章が巻いてあった。


 「なんだ姉貴かよ、何か用か?」

 「何だじゃないわ。自分の服装を見て見なさい、シャツが出てるわよ」


 ケシキにそう注意する少女は彼の姉である二年生、夏野ナツミという生徒であった。彼女はシグレやネネと同じ風紀委員会に所属している一人だ。

 ケシキは露骨にめんどくさそうな顔をする。弟のその顔にナツミが睨み付ける。


 「何、その如何にも「ちっ、うるせーな」、みたいな顔は」

 「いちいちこの程度で呼び止めるなよな。言われずとも気付いたら自分で直していたよ」

 「何ですって・・・・・・」


 ――ビキィッ!!――


 二人の魔力が高まりを見せ始め、廊下の床に小さな亀裂が入っている。

 

 「風紀委員として、姉として、少し躾をつけてあげる必要があるかしら?」

 「上等だ・・・・・・」


 二人がその場で構え、今にも戦闘が始まる雰囲気だ。

 近くに居た生徒達が慌てて退避する。


 「さあ、お仕置きをしてあげる」

 「はっ、やってみろ」


 ぶつかり合う直前の兄弟。だが、空気を読んだ生徒が教師を連れてきて、なんとかぶつかり合う前にこの兄弟を止めることが出来たのだった・・・・・・。

 夏休み明けの昼休みは色々な意味で騒がしかった・・・・・・・・。




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