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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第七十話 築かれた愛

 肝試しから戻って来た最後の組のマサトとメイ。全員が揃ったことでレン達一行はコテージの中へと戻って行く。だがその時、ミサキはメイの表情に変化を感じ取っていた。今の彼女はどこかすっきりとした顔をしているのだ。


 「ねえ八神さん。少しいいかな?」

 「え・・・・うん、いいけど・・・・」


 ミサキとメイはみんなのいるリビングから離れた窓際まで移動をする。他の皆から離れて会話も聞き取られないことを確認するとミサキが小声でレンに自分の気付いたことを聞く。


 「八神さん、津田君と何かあった?」

 「えっ・・・・ど、どうして」

 「その、女のカン・・・・かな?」


 ミサキは少し困った様な顔をしてそう言った。だがミサキの目には彼女の様子というか、雰囲気というか、そういったものの変化を感じ取ったのだ。

 メイは少し顔を赤らめながらミサキの耳元に顔を寄せ、小さな声で言った。


 「その・・・・告白したの。マサト君に・・・・・・」

 「えっ!・・・・・・そうだったんだ」


 どうして自分がメイの変化に気付けたのかなんとなくだが分かった気がした。自分と同じく胸の内の想いを愛しい人に告白していたからだ。そして彼女の様子を見る限り・・・・・・。


 「それで・・・・津田君はなんて?」

 「うん・・・・私のこと、受け入れてくれた」


 メイは恥じらいながらもとても嬉しそうな顔をする。

 そんな彼女にミサキも祝福の言葉を贈る。

 

 「おめでとう八神さん。お互い、夏休み初日に抱えていた悩みもこの夏に解決したね」

 「うん・・・・そうだね黒川さん」

 「あっミサキでいいよ。私もメイさんって名前で呼んでいい?」

 「うんいいよ・・・・ミ、ミサキさん」


 少しぎこちなさそうに自分の名前を言うメイにおもわず笑ってしまうミサキ。それにつられてメイも小さく吹き出してしまう。お互い自分の中に住み着く恋心に悩んだ者同士ということもあり、二人の仲が縮まったのだった。






 レンとは別に予約を入れていたコテージでは、ネネが一人でリビングで備え付けのテレビを見ていた。


 「遅いわね・・・・・・二人」


 ネネは現在釣りに行ったきり帰ってこないカケルとシグレを待ち続けていた。

 その頃、タクミ達と供に釣りをしていたカケルとシグレはというと――――


 「ん・・・・暗くて帰り道が分からない」

 「お前がいつまでも釣りに夢中で帰ろうとしないからこうなったんだぞッ!!!」


 暗い夜の森林の中を彷徨っていた。

 あの後、シグレは暗くなる前にコテージに戻るよう言っていたのだが、夢中になっていたカケルはもう少し、もう少しと何度も言って引き伸ばし続けその結果、辺り一面が暗くなりコテージまでの道のりが分からなくなっていたのだ。


 「くそっ、右も左も判らん!どうしたものか・・・・」

 「ん~、・・・・・・こっちだと思う」


 カケルは指をさしコテージがあると思われる場所を示す。

 

 「何故そっち方面だと?」

 「感・・・・」


 そう言ってカケルは歩いて行く。シグレは「感など当てにならん!」と言っているが、そんなこと知ったことではないといった感じですたすた歩いて行くカケル。シグレは歩いて行く白猫の後を慌てて追いかけて行く。






 肝試しのその後、少しの談笑をして皆は眠りについた。コテージの中でそれぞれ布団を引き眠りにつく皆。布団の引く場所は男性と女性で別々の部屋に別れて引かれている。タクミとマサトの方から気を使い部屋を移動したのだ。

 正直、女性人たちは二人のことは警戒していなかったのだが。マナはマサトと離れることに少し寂しがっていた位だ。


 「すぅ、すう・・・・」

 

 布団の中で静かな寝息を立てているタクミ。その隣ではマサトが布団で横になりながら目をばっちりと開け、天井を眺めていた。今日一日の出来事を思い返すと中々寝付けなかった。

 

 「・・・・・・・・」


 マサトは起き上がり布団から出ると、外の空気でも吸おうかとそのまま窓辺の方まで歩いて行く。窓辺に近づくと、そこからは光が漏れている。


 「(誰かいるのか?)」


 リビングに行くと、視線の先の窓辺にはメイが備え付けの電気を点け夜空を眺めていた。そこにマサトも近づき声を掛ける。


 「眠れないのか?」

 「あっ、マサト君」


 隣にやって来たマサトに顔を向けるメイ。

 マサトもメイと同じく夜空を見上げる。夜空に浮かぶ星々を見ながらマサトがメイに語り掛ける。


 「なあメイ、その・・・・」

 

 こんな時、彼氏となった男として気の利いた言葉の一つでも掛けるべきなのだろうが、中々良い言葉が思い浮かんでこない。

 

 「ああ~~とぉっ・・・・」


 何か言わなければと思うと余計に何も思い浮かばない。正直、今ほど自分の単細胞さが嫌になったことはない。頭を掻きながら唸っていると、隣でメイが小さく笑った。


 「マサト君、何か気の利いたことを言おうとしなくても大丈夫だよ。普段通りのあなたが一番好きだから・・・・」

 「そうかよ・・・・じゃあ普段通りの自分ならするだろう行動を取ってやる!!!」


 マサトはメイを抱きしめ、問答無用で強引に唇を奪う。メイは抵抗を見せず、マサトの熱い行動を受け止める。


 「んん・・・・ぷはっ、どうだ、いつも通りの自分ならこんな大胆なことだって平気でするぜ」

 

 メイに笑みを浮かべながらそう言ったマサト。メイは顔を赤らめながらマサトに抱き着く。メイの行動にマサトの顔も赤くなる。


 「うん・・・・ちょっと大胆な事をして来るマサト君は、あなたらしくて一番好き・・・・」

 「お、お前も言う様になったな」

 「ふふっ、マサト君が受け入れてくれたお蔭かな」


 暗い夜の世界、星空に照らされながら抱きしめ合う男女。その姿はとても絵になっていた。






 その頃、隣のコテージでは・・・・・・。


 「ん・・・・コテージについた」

 「信じられん・・・・まさか動物・・・・猫の帰巣本能ではないだろうな」

 「貴方たち・・・・いったい何をしていたの?」


 カケルとシグレはようやくコテージに到着していた。あと少し二人の到着が遅れていたらさすがに管理人の芝に相談して捜索願いを出していたネネ。帰って来た二人はカケルは綺麗な姿をしているがシグレは服に土や葉が付着していた。夜の森は視線の先が闇に包まれ、足場も舗装された道路とは違い歩きづらく木々にぶつかったり、転んだりしたシグレ。一方カケルは猫の様に身軽に歩き、ぶつかることも転ぶことも無かった。


 「とにかく・・・・神保さん、まずシャワーでも浴びて来なさい」

 「はい・・・・」

 「(お魚お魚♪)」


 疲れたような顔で頷くシグレ。一方カケルは手に持っているバケツの魚に夢中であった。






 そして翌日、帰り支度をするタクミ達。キャンプ場で過ごした一日は全員とても楽しむことができ、夏の思い出を作りだすことが出来た。そしてその中でも――――


 「メイ、荷物全部鞄に入れたか?」

 「うん、大丈夫だよ。忘れ物も特にないよ」

 「よし、じゃあ外に出るか。みんな外で待ってるぜ」


 そう言ってメイに手を差し伸べるマサト、その手を受け取るメイ。

 その時、マサトが掴んだメイの腕を自分に向かって思いっきり引いた。


 「きゃっ、んぅ・・・・」


 腕を引いた勢いを利用してメイの唇を奪うマサト。少しのキスの後、メイを解放しマサトはいたずらっ子の様な満面の笑みを浮かべる。

 

 「へへ・・・・」

 「もう・・・・」


 メイは頬を染めながら僅かにむくれる。だが、その顔にはマサトと同じく恥ずかしながらも笑みが浮かんでいた。

 このキャンプを通し、この二人は楽しい思い出だけではなく、それ以上に深い愛を築いたのだった。



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