第六十五話 自由行動
無事キャンプ場に辿り着いたタクミ達。彼らはまずこのキャンプ場を管理している管理人が使用している小屋へと向かう。そこは小屋というには中々の大きさをしている建物であった。
扉をノックするレン。すると中から返事が帰って来て、その後すぐに扉が開いた。
「お待たせしました。・・赤咲さんご一行様ですね?」
「はい、予約していた赤咲です」
「ようこそおいでくださいました。私はこのキャンプ場を管理している管理人の、芝ミチナリと申します。それでは皆さんがご利用されるコテージにご案内いたします。こちらまでお越しください」
芝はレン達の利用するコテージまで皆を案内する。コテージまでの移動の最中辺りを見回すタクミ。見たところ自分たち以外にはこのキャンプ場には来ていないようだ。
「芝さん、今日この場所に予約を入れているのはもしかして俺達だけですか?」
「いえ、あともう一組のお客さんが予約を取っています。確かその方々も学生さんだったはずです」
「へぇ~、ちょっとどんな人達か気になるな~」
自分たちと同じ学生という事で興味を持ったレンがそう呟く。
そして一同はレンが予約を取っておいたコテージに案内され、そこで芝からコテージに付いての説明がされる。
「コテージの中にはキャンプ用品が揃っております。説明書もちゃんとご用意していますが、何かわからない事があればコテージ内に設置されている電話をおかけ下さい。電話の下に管理人室の番号が記載されておりますので。また人数分の布団はご用意させてもらっていますが、テントを外で張り夜を過ごす場合を考え寝袋も人数分ご用意させてもらいました」
「いろいろ準備の方ありがとうございます」
キャンプに必要な物を一通り揃えてもらい、そのことに対して礼を述べるレン。芝は頭を下げ管理人の小屋へと戻って行く。それを見送ると皆はさっそくコテージ内に入って行った。
「おおー、中々広いな。それにテレビや冷蔵庫、キッチンなんかもあるぞ」
「ここで釣って来たお魚なんかを料理する為かな。すぐ近くには釣り場もあるし・・・・」
キッチン内の充実している設備にタクミとミサキが関心の声を出す。トイレやふろ場も備わっている。酷いところではトイレやふろ場は外に設置されている事もある為、女性陣は内心ほっとする。
全員コテージ内をそれぞれ一通り見て回り、リビングに一度集まった。
「さて、これからどうする?」
「とりあえずまずは昼食でも取らないか?ここに来るまで何も食べてないし・・・・」
「マナもお腹空いた・・・・」
レンの言葉にタクミとマナがそう言う。確かに時間ももうお昼過ぎ、まずは腹ごしらえから始める事にした一同。夕食はここで釣った魚や持参しておいた食材を料理するつもりだが、昼食に関しては女性陣がお弁当を作って来たのだ。
「はい、お弁当」
「ど、どうぞ皆さん」
ミサキとメイ、それからユウコの三人が作って来たお弁当を鞄から出し、リビングの床の上に置いて行く。七人分のお弁当とあって量も多かったので、移動中は男のタクミとマサトがそれぞれ弁当箱の入った鞄を持ち運んでいた。
「おおー、見た目も鮮やかだね~」
「おいしそう!」
レンはふたを開けられた弁当の中身を見て感嘆の声を出し、マナは純粋に出来栄えを見ておいしそうと言った。タクミとマサトも「おぉ~」と言った声を出す。
「じゃあさっそくいただきます」
レンは手を合わせるとさっそく弁当箱の中の料理に箸を付けた。それに続き他の皆も弁当を食べ始める。
「おいしぃ~!」
「ああ、ほんとだな」
口に料理を頬張りながら嬉しそうな声を出すマナとそれに賛成の声を出すマサト。実はこの時、マサトのおいしいという言葉にメイは少し恥ずかしがりながらも嬉しそうな顔をそっとする。ミサキの方でもタクミに褒められ嬉しそうな顔をしている。
そんな光景を眺めながらユウコはふっと思った。
「(なんかいいなぁ~。こういう、なんていうか空気)」
自分の姉は恋人やクラスメイト達と楽しそうに談笑している。そんな姿を見ていると思わずそんな事を考えてしまう。
「(特にタクミさんとは楽しそうに話しているなぁ。・・・・私も恋人が出来たらあんな風に笑うのかな?)」
姉の嬉しそうな顔を見ながら自分にも愛しい人が出来た時の事を想像しようとするユウコであったが、今のところは具体的な映像が浮かんでこない為、その考えを打ち切り食べる事に専念した。
こうして一同は楽しい昼食を過ごし、食事もとり終わるといよいよキャンプを満喫するために動いた。
「じゃあいよいよ各自自由行動の時間だよ!みんなはどうする?」
「マナ探検したい!」
レンに元気よく周囲の森林を探検したいと主張するマナ。その意見にマサトとメイも同調する。
「俺もすこしぶらぶらしようかと考えている」
「あの・・・・私も・・」
「なるほどー、ミサキとタクミ君、ユウコちゃんは?」
残り三人の意見を聞こうとするレン。ユウコはハイキングというの同じだが、森林法面ではなく水辺の方を見に行きたいそうだ。タクミとミサキの二人は近くにある川で釣りをするようだ。
「じゃあ私も色々と見て回ろうかな。よーし、それでは全員夕方の五時にはここに再び集合ということで」
レンの言葉に皆頷き、各自自由行動を開始した。
コテージを出て、タクミとミサキは釣り用の道具を借りに行き、他の皆はそれぞれ探索に出かけて行った。




