第六十四話 キャンプ場到着
目的地のキャンプ場へと行くため、電車を白線の内側で待ち続けるタクミ達。やがて到着時間となり、自分たちの乗車する電車がやって来た。
「よーし、じゃあ行こー!」
レンの無駄に大きい声に釣られ、電車の中へと入って行く七人。周りの一般人たちも彼らと共に電車に乗り込んでいく。思いのほか席は空いており、女子達は全員席について座る。タクミとマサトの二人は彼女達の前に移動しつり革に掴まる。
「すし詰め状態にならなくてよかったな」
「ああ、ほんとにな」
マサトの言葉にタクミが頷く。
電車が発車し、目的地に着くまでの間、軽いおしゃべりでもしながら時間を潰す皆。マナは窓の外の流れる景色を楽しそうに見ていた。
こうして一同は目的地のキャンプ場へと向かって行ったのだった。
タクミ達から離れた車両では――――
「まったく、お前のトイレが長いせいで乗り遅れるかと思ったではないか」
「ん・・・・ごめん」
「まあまあいいじゃない。ちゃんと間に合ったんだから」
タクミ達と同じくキャンプ場へと向かっているシグレ達が乗車していた。
シグレが何故カケルに文句を言っているのかというと、カケルのトイレが長く帰って来るのが遅かったため、危うく乗車ぎりぎりとなったのだ。
カケルも悪いと思っているのか、ぺこりと二人に頭を下げて改めて謝る。
「ん・・本当にごめん」
「・・・・ふぅ、次からはこのような事がないようにな」
「ん・・」
シグレも少し言い過ぎたと思い、それ以上は何も言わずにおいた。
その光景を見ながら何だかんだでやはり仲が良い二人だとネネは思った。見ていてどこか微笑ましくも感じる。
こうしてこの三人もまた、目的地のキャンプ場へと向かったのだった。
電車に揺られ約一時間。目的の駅に辿り着き、タクミ達は電車を降りる準備をする。
しかし、その中でマイは隣のメイにもたれかかって気持ちよさそうに眠っていた。その姿に思わず癒される一同。だが、このまま寝かせておけば電車に取り残されてしまうのでマサトはマナを優しく抱き上げ、落ちないように抱いてあげる。
こうして小さな眠り姫を抱えながら電車を降りるタクミ達。
「ん・・・・あぅ」
電車を降り、しばらく歩くタクミ達。改札口の近くまで辿り着くとマナも目を覚まし、可愛らしい欠伸を一つし、目をこすり眠気を覚まそうとする。
「起きたか?」
「ぅん、起きた・・・・くぁ」
そう言いつつ小さくまた欠伸をしながらマサトの腕の中から降り、自分の足で歩き始めるマナ。しかしまだ完全に意識が覚醒していないのか、マサトに手を引かれながら歩いている。
改札口で切符を入れ、駅の外へと出て行く七人。電車での移動はとりあえずここまでで終了だ。
「さて、ここからは少し歩くよ」
「マナ、目ぇ覚めたか?」
「うん、もう大丈夫!」
レンが先陣を切り歩き出し、他のメンバーもその後について行く。
ここからキャンプ場までは約三十数分歩けば目的のキャンプ場が見えて来る。タクミ達が目的の場所まで歩きだした頃、彼らがたった今出て来た駅の中にはシグレたちが改札口前の売店で小休憩していた。
「ここから目的地まではおおよそ三十分から三十五分と言ったところか・・・・」
持参した地図で現在の位置を確認しながらシグレが呟く。その横ではカケルが売店でジュースを買ってベンチに座り飲んでいる。ネネはシグレの持っている地図を横からのぞき込んで、キャンプ場に行く前に昼食を取るか否かを二人に聞いた。
「今出発したら着くのは大体昼の中頃・・・・どうする、この辺りで食事でも取った後にキャンプ場へ向かう?」
「私は別に大丈夫ですが・・・・」
シグレがそう言うとカケルが即座に意見して来た。
「ん・・僕もうおなか減った」
「じゃあやっぱりどこかで食べましょう。神保さんもそれでいいかしら?」
「まあ、別に構いませんが・・・・」
「決まりね。この近くには飲食店も複数あるし、早速行きましょうか」
こうしてシグレ達は目的地に行く前に駅の近くで昼食を取る事を選ぶ。
改札口を出て、近くの飲食店へと移動する三人。しばらく歩くと中々に大きなファミレスがあったので、三人はそこに入って行った。
タクミ達は目的地の三分の二まで歩き、道の途中に自動販売機があったため、その付近で一旦休息を取っていた。タクミ達だけならば歩き続けたのだろうが、自分達よりも一回り小さなマナが居る為、少し休むことにしたのだ。
マナはおいしそうにジュースをごくごくと飲んでいる。
レンは懐から地図を取り出し現在地の確認をする。
「えっ~と・・今は大体この辺だから~~~うん、あと十分も歩けば目的地到着っとぉ。マナちゃん、大丈夫、足痛くない?」
「うん、大丈夫だよ」
マナのその言葉にレンは頷き、飲みかけている缶ジュースを一気に流し込んで空にする。
「よしッ、では諸君ラストスパートだ!!」
休憩も十分にとったため、再び移動を再開する七人。
彼女達の目的のキャンプ場はもうすぐそこまで近づいていた。
同時刻、シグレ達はファミレス内で丁度食事が終わったところであった。店を出て、三人は食後にすぐ動こうとはせず、その近くの休憩所で十分程度の食休みを取っていた。
「おいしかった・・・・ケプっ」
小さなゲップをするカケル。シグレは再び地図を見てルートの再確認をしていた。そしてそれが終わると彼女は二人に現地到着後の予定をどうするか相談する。
「食事はここで取り終わりました。この後はどうしますか?」
ネネに相談するシグレ。ネネは少し悩んだ後、一つ提案を出す。
「じゃあ釣りなんてどう?今から行く場所ではちょっとした穴場があるそうよ」
「釣りですか。カケルはどうする」
シグレが聞くとカケルは目を輝かせながらシュタッと手を上げて賛成を示した。
「ん!僕も釣りが良い!」
珍しく大きな声を出すカケルに少し驚く二人。まさか釣りでここまでの反応を示すとは思わなかったが、ここでシグレが一つ思い当たる節があったことに気付いた。
「(そういえば・・・・カケル、ファミレスでは魚の料理を食べていたな。それにこれまでのコイツの食を遡ってみると魚ばかり食べているような・・・・)」
よく見るとカケルの口元から微かによだれが垂れている事に気付くシグレ。魚は猫の大好物・・・・つまり目の前の白猫がやけに張り切っているのは・・・・・・。
「(まさか食うため・・か?)」
目の前の白猫は頭の中で大量に魚を釣り上げている自分の姿を思い浮かべていたのだった。
そして――――
「じゅる・・・・」
他にも何か・・・・何か別の事も考えていた。一体何かはあえて言わないが・・・・・・。
こうして、食休みも取った三人は目的のキャンプ場を目指して歩き始めたのだった。
そしてタクミ達の方はついに目的のキャンプ場に辿り着いていた。
ようやく目的地に着いたことではしゃぐマナと同じく子供の様にはしゃぐレン。
「さて、じゃあまずは荷物を預けてこようか。予約したコテージの番号は三番だからこっちだよ」
「その前にここの管理人さんに挨拶しないと」
「あっ、そーでした」
ミサキに指摘され、てへへと舌を出すレン。
こうして三人はこのキャンプ場の管理人へ挨拶に行った。