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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第五十五話 決着

 穏やかな顔でこの世を去ったセンナ、ミサキそんな彼女の体を抱き寄せ涙を流す。

 タクミはセンナの手を握り、改めてミサキの亡き姉、黒川センナに誓った。


 「お姉さん、ミサキは必ず守ります。・・・・この命を懸けて」


 タクミは立ち上がり、名も無き男を見る。

 その眼光はとても鋭く、とても瀕死の人間が出来る眼ではなかった。


 「ミサキ・・・・下がっていろ。お姉さんをここから離れた場所まで連れていけ。これ以上その人を傷つけちゃだめだ」

 「タクミ君・・・・私も・・・・」

 「いや、ミサキはお姉さんのことを頼む」

 「でも・・・・うん、そうだね。タクミ君・・・・これを」


 ミサキはタクミの肩に触れ、今の自分の魔力全てを彼の肉体へと送る。

 自分の中に温かな力が流れ込んでくるのを感じるタクミ。瀕死でもう動けないはずの体に力が満ち溢れ、タクミは今までにない程、自分の中に強大な力を感じた。

 この時、タクミの中の扉が開いた。


 「タクミ君・・・・必ず勝って・・・・」

 「ああ、絶対に勝つよ」


 ミサキはタクミの言葉に頷くと、センナの体を肩に担ぎこの場から離れようとする。これ以上、姉を傷つけない為にも。

 

 「逃がさん!!」


 名も無き男はミサキに向かい跳躍し、彼女を止めようとする。

 だが――――


 自分の目の前に銀色の髪が映りこんんだ。

 

 ――どずぅぅぅぅぅぅッ!!――

 「あえ・・・・?」


 名も無き男はいつの間にか自分の腹に拳が沈みこんでいた事に気付いた。

 そして、目の前にはタクミの姿が在った。


 「な・・・・おぐっ!?」


 男は遅れてやって来た痛みに耐えきれず、その場で膝を付く。口からは涎が垂れ、今にも嘔吐してしまいそうな不快感を感じる。


 「な・・・・い、一瞬で」


 とても信じられなかった。目の前の少年はつい先ほどまでは瀕死の重体であった。戦うことはおろか、まともに動くことすらできなかったはずだ。黒川ミサキが先程魔力を分け与えていたようだが、損傷した肉体が修復されたわけではない。

 なのに何故・・・・この男は自分でも視認することが出来ない程の速度で動ける?何故たったの一撃の拳でここまで悶絶させられる?


 「お前は・・・・やってはいけないことをやった」


 膝を付き苦しんでいる自分の上からタクミの言葉が浴びせられる。

 

 「お前は・・・・お前だけは――――」


 その時、タクミの姿が変化した。

 魔力の上昇と共に金色のオーラがタクミの体から発っせられる。それに伴いタクミの瞳も金色へと変色をする。≪スパークル・ガーディアン≫を発動したタクミだが、彼の変化はそこで終わらなかった。

 タクミの銀色の髪は金色へと変色し、髪の毛も腰の辺りまで伸び長髪となった。


 「キサマ・・・・その姿は・・!?」

 

 先程の戦いでは見られなかった変化に驚く名も無き男。そして、そこから感じられる魔力も先程の戦いとは別物であった。


 「(バカなッ!瀕死のこんな小僧のどこにこんな力が!?)」


 男の驚愕など知らず、タクミは言葉を続ける。


 「お前だけは――――」




 「絶対に許してたまるものかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!」


 ――ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!――

 「ぐうっ!?」


 タクミの体から叫び声と共にまるで嵐のような膨大な量の魔力が吹き荒れる!!魔力を放出しているだけにもかかわらず、辺りの木々はへし折れんばかりに揺れ動き、目の前の男の体は後方へと吹き飛ばされそうになる。

 

 「くっ!≪モード・デリート≫!!!」


 全身に消滅の力を宿す男。しかし、タクミは男の腹部へかまわず拳を入れる。


 ――ドムゥッ!!――

 「おっ!?」


 名も無き男は短い声を上げる。そして再び鈍い痛みが殴られた箇所に走り、今度は耐え切れずにその場で嘔吐する。


 「おぶえぇっ!・・・・な・・何故?」


 全身に消滅の力を宿している今の自分にはダメージそのものを消し去る事が出来る筈だ。にもかかわらず名も無き男は今のタクミの拳のダメージを消すことが出来なかった。


 「まさか!?」


 男の中でその答えが予想された。


 「(想像を絶する力の余り、消し去る事が出来ない程のダメージを与えられたという事か!!)」

 「おおおおぉぉぉぉッ!!」

 ――ばぎぃぃぃぃぃッ!!――

 「がぎぃぃっ!?」

 

 男の顔面へと拳を振りかぶり、思いっきり叩き付けるタクミ。タクミの殴打により男の歯は数本へし折れ、砕かれ、鼻の骨も砕かれた事を感じる男。

 だが、そこでタクミの攻撃は終わらなかった。


 「≪金色百裂神拳≫!!!!!!」


 ――ズドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!――


 連続で男の体に叩き込まれる拳。その一撃一撃は男の体を破壊へと導いていく。筋肉が壊され、骨が砕かれ、血反吐をまき散らす男。そして最後の百撃目の拳で男の体は空高く吹き飛ばされる。


 「あが・・・・そんな・・・・」


 空高く打ち上げられた男はもはや身動きもほとんど取れず、うめき声を上げる。


 「(まだだ、まだ・・終われん!!)」


 しかし、男は身動きの取れない体で最後の技をタクミへと放つ準備をする。残りのすべての魔力、そして命を最大まで燃やし、タクミに最後の攻撃を繰り出した。


 「≪消失突貫≫!!!!」


 名も無き男の姿は白く発光し、巨大な弾丸へと変容する。自らを弾丸として突撃する自爆技であり、触れた物、全てを存在そのものすら消滅させる恐るべき魔法。≪モード・デリート≫以上に寿命を削る技であり、彼の最後の切り札。

 

 ――キイィィィィィィィィィィィィィィィンッ!!――


 風を切り、迫りくる消滅の弾丸。

 タクミは自分の両腕に魔力を集中し、技を発動する。


 「≪ゴッドハンド≫」


 タクミの両腕は金色に光る。それは《黄金籠手》とは違い、黄金のオーラを纏ったものとはまた違う力であった。

 タクミは迫りくる弾丸を――――


 ――ガシィィィッ――


 片手で難なく受け止め・・・・・・


 「はっ!!」

 ――スドオォォォォォンッ!!――


 地面へと叩き付けた。

 叩き付けられた弾丸は地面で叩き付けられ後、徐々に人型に変わっていき、元の姿に戻った名も無き男。

 

 「そん・・・・な・・」


 自分の最後の技をあっさりと、それも片手で受け止められた事に絶望すら感じる男。止めを刺そうとするタクミだったが、その手を途中で止める。

 名も無き男の体が少しずつ光の粒子となり散っていているのだ。


 「お前・・・・その体は」

 「・・・・どうやら、全ての魔力を使い・・・・命までも完全に燃やし尽くしてしまったようだな・・・・」


 名も無き男は今の自分を見て、終わりを迎えることを悟る。

 タクミは消えていく男を見ながら、男に向かって問う。


 「お前は・・・・何故そうなってしまった?何故、こんな破滅を辿るかもしれない道を選んだ?」

 「言ったはずだ、魔法を・・消す為だと・・・・」

 「それだけが本当に理由なのか?今ならわかる、お前はまだ何か他にも理由あってこの道を選んだことを・・・・」


 タクミの言葉に名も無き男は目をつぶり、そして・・・・・・。


 「俺は―――――」


 タクミの問に答えた。自分がこの茨の道を選んだ訳を・・・・・・。



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