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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第四十八話 決して逃げない!

 名も無き男とタクミが戦っている周辺では周りの木々が消え、大地がえぐれ、辺りは変わり果てた姿となっていた。名も無き男が放つ〝消滅〟の個性、タクミの全身全霊の力、それがぶつかり合い生まれる被害は凄まじい物であった。

 降り注ぐ消滅の槍、《デリートランス》を躱しながらタクミは男に接近し肉弾戦へと持ち込む。


 「≪金色百裂神拳≫!」


 怒涛の百連続の拳を男に放つタクミ。

 名も無き男もそれに合わせ連続で拳を放つ。


 ――ズドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!――


 拳を打ち付け合う二人であったが、拳の速度はタクミがやや勝っており、何発かの拳は男に直撃する。そして最後の一発、一番の魔力を込めた百撃目の拳が男の腹部を貫く。


 「ぐぬっ!!」


 僅かに後退する男、だがすぐに手を突き出しタクミを消し去ろうと技を速攻で繰り出す。


 「《デリートバスター》!!」

 ――ボシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!――


 名も無き男に向けられた手のひらから消滅の砲撃が放たれる。

 タクミは両腕に金色のオーラを手に集中し、真正面から受け止める。


 「何ッ!?」

 「ぐぐぐぐぐぐッ、ガアッ!!!」

 ――バシュウゥゥゥッ――


 砲撃を無理やり抑えこみ、かき消したタクミ。

 タクミは両腕を開いたり閉じたり数度繰り返し問題が無い事を確認する。


 「よし・・・・動くぞ、問題ない!」

 「(馬鹿な・・・・)」


 タクミのその様子を見て疑問を覚える名も無き男。

 消滅の力は触れた物を消し去る力が備わっている。それを受け止めて無傷など・・・・。

 

 「・・・・・・!・・そうか」


 男はタクミの手を見て彼が無事である理由が解った。


 「お前から出ている金色のオーラ、それを腕の周囲に纏わせ直接手で触れることなく俺の攻撃に対応したという事か」

 「ああ、依然戦った学園の先輩に個性の力を鎧の様に着こなしていた人がいてな、参考にさせてもらった」


 思い出すのは小林ケントとのアタラシス学園での決闘。

 そういえばあの時もミサキを巡っての戦いだったな・・・・・・。


 「《黄金籠手》と言ったところかな」

 「大した奴だ、この戦いの中で新たな技を作りだすとは」

 「お前をさっさと片付けてミサキの方に行かなきゃならないからな」


 タクミがそう言うと男はミサキ達の戦況について語りだした。


 「黒川ミサキとエクスの方は恐らくエクス達が三体までの魔物ならば順調に倒しているだろうな・・・・」

 「三体まで?・・・・どういう事だ?」

 「四体のうち三対は通常よりも強化されたAクラスの魔物。だが向こうにエクスが居る以上これらは潰されるだろう。だが・・・・・・」


 名も無き男は薄い笑みを浮かべながらタクミに言った。


 「うち一体には強力な強化を施しておいてな、この事実は俺しか知らん。敵を騙すにはまずは味方から・・・・というつもりはないが、もしもの時の為に俺が細工をしておいた(まあ、奴に催眠を掛けられていた事実を知った今では黙っていて大正解であったがな・・・・)」

 「ちっ・・・・だとしたら尚更早急に決着をつける!!」

 「そううまくいくかな?それに――――」



 「お前が戦ったレイヤーもあの姉妹の元に向かっているぞ」

 「何・・・・!?」






 「ぐぅ・・・・かはっ!」

 「お、お姉ちゃんしっかり!!」


 爆発の直撃を受け大きな負傷を負うセンナ。体からは所々出血しており、センナは吐血する。

 センナの口から血の塊が吐き出される。


 「ああ、血が、血がぁッ!?」


 姉の傷ついた姿に軽いパニックに陥るミサキ。

 センナはミサキの悲痛の声を耳にしながら攻撃を仕掛けて来た人物に目をやる。視線の先の木々の中から一人の女性が現れた。


 「さすがお姉さんねぇ、私の地雷魔法と分かっていながらも妹を身を挺して庇うなんて・・・・ご立派ご立派」


 パチパチと拍手をしながら近寄って来る女性。 

 センナは女性の顔を見てその名を口にする。


 「河川、レイ・・ヤー・・ッ!?」

 「ハロー、この薄汚ねぇ裏切者」

 「どうして、貴方が・・っ!」

 「アンタが黒川ミサキと接触する前、洗脳の解けたリーダーから指示を受けてね、久藍タクミの相手の後、アンタを始末するようにね」


 レイヤーは地に沈むセンナを見ながらここに来た経緯を話す。

 ミサキはセンナを守るように前に立ち、炎を手に宿し対峙する。


 「お姉ちゃんに近づかないで!!」

 「あら、美しい姉妹愛・・・・・・ぶち壊したくなるわ」

 

 レイヤーは唾を地面に吐き捨てながら言う。


 「あの男にやられた傷が疼いて仕方がないわ!目的はアンタを殺して個性を奪う事だけど・・・・それ以上にアンタが死ねばあのクサレ銀髪もさぞ苦しんでくれるでしょうねぇ!!」


 魔力を放出しながら喚くレイヤー。

 そしてミサキに横に立つセンナ。立ち上がったセンナを見てミサキがセンナに指輪を渡す。


 「お姉ちゃん、この指輪を使って!これでどこかに避難を!!」

 「バカ・・言わないの。それは貴方の為の物でしょう」

 「でも!!」

 「大丈夫よミサキ・・・・私は・・まだ・・・・」


 息絶え絶えの状態でミサキを安心させようとするセンナ。そんなセンナを見てレイヤーが口を挟む。


 「強がりはやめなさい、地雷をまともに受けて無事な訳ないじゃない。アンタは立っているだけでも中々にキツイんじゃないの?」

 「それは・・・・お互い様じゃないのかしら?」

 「!!・・・・・・どういう意味?」


 レイヤーに向かいセンナは小さく笑いながら言った。


 「本来の威力であれば私はこの程度で済むわけがないわ。貴方・・・・久藍君にやられ、満身創痍なんじゃないのかしら。今の貴方の恰好を見るだけでよく分かるわよ。

 「・・・・・・・・」


 センナの言葉にレイヤーは顔を歪めた。

 センナの言う通り、今のレイヤーは衣服もボロボロで全身も負傷している事は一目瞭然だ。そして、体内の魔力も弱々しくなっており、まさしくその通りであった。センナの想像通り今の彼女は大分弱っていた。


 「確かに・・・・でもアンタ達もAクラスの魔物相手に大分魔力を消費したんじゃない?つまり条件は一緒、いえ、私の攻撃をモロに受けた今のアンタではむしろマイナス」

 「お姉ちゃんだけじゃないわ!私だっている!!」


 傷ついた姉を守るべくミサキがレイヤーに叫ぶ。

 

 「アンタ、自分の個性も満足に発現出来ていないのによくそんなに吠えれるわね」

 「そんな事関係ない!!お姉ちゃんはこれ以上やらせない!!」

 「ミサキ・・・・貴方はとにかく――――」


 「逃げない!!!!」


 センナの声を遮ってミサキが大声で叫んだ。

 

 「お姉ちゃんがどう言おうが私は逃げない!大好きなお姉ちゃんが傷ついているのにそれを放り投げるなんてしない!!」

 「ミサキ・・・・・・」

 「お姉ちゃん・・姉として妹を守ろうとしてくれる心遣いは嬉しいよ。でもね・・・・妹を、私を信じて一緒に戦ってよ」


 ミサキの訴えるかのような言葉にセンナは瞳を揺らし、そして大きくため息を吐いた。だが、その口元には笑みが浮かんでいた。


 「貴方は本当、ここぞという時は頑固ね」


 センナは魔力を最大限まで高める。ミサキもそれに続き、今自分が持ち得る力を全て解放した。


 ――ゴオオォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!――


 黒川姉妹から凄まじい勢いで炎が放たれる。

 レイヤーはそれに対抗し同じく今出せる全ての力を解き放つ。


 「あーあーあーッ!うっざいわぁ、そういうの!!そんなに死に急ぎたいなら姉妹共々粉微塵にしてあげるッ!!!」


 

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