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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第四十七話 魔物撃破、そして・・・・

 突如として姿が変容する魔物。

 予想外の事態に黒川姉妹は距離を置き様子を見守る。


 「何なの・・・・コイツは?」


 その変化はセンナとしても予想外であった。組織内で管理している魔物にはこのように姿を変容させる力の持ち主は存在しなかった。


 「(リーダーが何か細工した?そうでなければ・・・・)」

 「お姉ちゃん・・・・あれは・・・・?」

 「解らないわ・・・・油断しないでミサキ」


 センナの警告に頷くミサキ。すると、魔物が動きを見せ始める。

 人型となった獣はその場で地面を踏ん張り、そして――――


 「ガウァッ!!!!」


 センナ目掛けて凄まじい跳躍を見せる。

 超高速でセンナへと迫る魔物、それに目掛けてセンナが攻撃を繰り出す。


 「《豪炎黒死砲》!!!!」


 センナの手からは黒炎の砲撃が放たれる。

 直撃する砲撃、しかし魔物はそれを乗り越えてセンナへと向かって行く。


 「ぎゃわっ!!」

 「ちぃッ!!」


 鋭利な爪でセンナの体を突き刺そうとする魔物。

 センナはその攻撃を紙一重で回避し、後ろへと後退する。

 ミサキはセンナを援護しようと炎の弾丸を魔物に浴びせ続けるが、魔物はそれをものともせずセンナに迫る。


 「ゴアアァァァッ!!」

 ――ざしゅっ!――

 「うっ!?」


 センナの脇腹に魔物の鋭利な爪が僅かに掠める。

 一瞬刺すような痛みが走るが、黒炎の放射で視界を一瞬奪い、魔物から離れるセンナ。

 攻撃が掠めた個所に手を当てるセンナ。・・・・わずかではあるが出血している。

 

 「ちぃっ・・・・動きが前よりも速いわね」


 魔物の身体能力向上にセンナは舌打ちをする。

 そこへミサキが駆け寄って来る。


 「お姉ちゃん大丈夫!?」

 「大丈夫よミサキ、かすっただけだから」

 「でも血が・・・・」

 「これ位の出血なら平気よ。それにしてもあの魔物、あれはどういう変化なのかしら?」


 不安そうな顔をするミサキをたしなめ、センナは目の前の異形の存在を観察する。

 今まで彼女は多くの魔物を見てきたが、今回の様に姿が変容するタイプのものは初めてだ。考えられるのはこの魔物には何か特赦な力が宿っていた、あるいはリーダーが何か細工を施した。


 「(おそらく後者でしょうね・・・・さて、どうするか?)」


 目の前の存在をどう対処するか考えを巡らせるセンナ。するとミサキがセンナにある提案をする。


 「お姉ちゃん、お姉ちゃんの催眠の魔法でアイツを操れない?」

 「それは無理よ。自分よりも格下相手ならばともかく、目の前の魔物からは強い魔力を感じるわ。このクラスの相手に余りにも矛盾した催眠、殺そうとしている相手を理由なく殺さない様に催眠を掛けても一瞬意識が乱れる程度。とても完全に操るのは・・・・・・・・」

 「・・・・一瞬は意識を途切れさせることは出来るの?」

 「ええ・・・・まぁ・・・・」


 センナの言葉を聞き、ミサキはある方法を思いつく。

 その作戦をセンナへと告げるミサキ。


 「~~~~なんてどうかな?」

 「なっ、駄目よそれは!!」


 ミサキの作戦を聞き、それを却下するセンナ。

 しかしミサキも食い下がり、センナに強く言った。


 「でも、これならアイツを倒せるかもしれない!!」

 「だけど・・・・貴方のリスクが・・・・」

 「お姉ちゃん・・・・信じて」


 ミサキはセンナの目を見てそう言った。

 センナはミサキの言葉を聞き、目をつぶり考える素振りを見せた後、彼女の提案を吞んだ。

 

 「分かったわ・・・・でも、もしもの時は指輪で逃げなさい。いいわね?」

 「うん・・・・分かってるよ」

 「よし・・・・じゃあ行くわよ!!」


 その掛け声と共にセンナは魔物に催眠を掛ける。

 催眠を掛けられた魔物は一瞬その場でふらついた。


 「が・・う・・・・・・・・ガッ!?」


 催眠を掛けられた魔物はセンナの言った通りすぐに意識を回復させた。

 意識が戻った魔物の視界には・・・・・・ミサキ一人が自分に対峙していた。


 「こっちよ・・・・貴方たちの狙いは私なんでしょ?」

 「ガアアァァァァァァァァァァッッ!!」


 ミサキへと跳躍する魔物。それから逃れるべくミサキは足に魔力を集中してその場から離れる。

 逃げるミサキを追いかける魔物。ミサキは森林の中に生える無数の木々の中に身を隠しながら移動する。


 「はあっ、はあっ!」

 「ぎゃわッ!!」

 「くぅぅぅっ!?」


 ミサキに追いつき鋭利な爪を振りかざす魔物。

 その場で転ぶようにその攻撃を回避するミサキ。魔物の逸れた攻撃は近くの木に当たり、鋭いツメ跡をその木に刻み込む。

 すぐに首をミサキの方へと向ける魔物。それと同時にミサキの炎の弾幕が命中する。


 「がうぅぅぅぅぅぅッ!!」


 しかし魔物は攻撃が当たりながらもミサキへと向かって行く。

 ミサキは距離を置くために両脚と、攻撃をするために両手の四か所に魔力を集中する。


 「あと少し、あと少しで・・!!」

 「がうぅぅぅぅぅぅぅッ!!」

 ――バシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!――


 背後から追いかけてくる魔物は走りながら大口を開け、そこから魔力の塊の破壊光線を放った。

 

 「う、ああぁぁぁぁッ!!」


 その攻撃を横に全力で飛び退き何とか回避したミサキ。

 飛び出した彼女の体はそのままごろごろと地面に転がった。腕を僅かに擦りむいたミサキだが、そんな事は今は気にもならず、再び走り出す。

 ミサキは今、最初に鬼ごっこが始まった場所まで引き返しており、その後を追う魔物。

 そして魔物が負傷したミサキの背後まで迫った時、ミサキが大声で叫んだ。


 「お姉ちゃん!今だよ!!」


 ミサキのその叫び声と共に、魔物の真上から巨大な黒煙の砲撃が降り注いだ。


――スガアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!――


 放たれた黒き砲撃は魔物を飲み込み、そのまま燃やし尽くした。

 攻撃を受けた魔物は跡形もなく消え去り、その場には砲撃による巨大な大穴が空いていた。


 「やった!!」


 魔物が完全に消え去り、喜びの声を上げるミサキ。

 そこへ空からセンナがミサキの隣に降りて来た。


 「うまくいったわね・・・・ミサキ、囮役ご苦労様」

 「良かった、うまくいって・・・・」


 ミサキの作戦はセンナの魔力を溜めに溜めた一撃で一気に敵を消し去るというものだった。ミサキの火力では不可能であるが、センナの火力ならば集中して溜めた一撃ならば葬れると判断したのだ。しかし、一瞬の溜め程度ではあの魔物を倒すことは出来ない。少なくとも少しの間、あの魔物から身を隠し力を温存する必要がある。その間、魔物が力が集中している自分を放っておくとは考えにくい。

 そこで、ミサキは魔物を引きつける囮役を買って出たのだ。センナの催眠を受け一瞬意識が曖昧となった魔物のスキを突きセンナは森林の木の頂上まで移動し、ミサキがわざと魔物の前で準備をし自分を狙わせる。敵の目的は自分の個性なのだから引きつけ役には自分が打って付けだと判断したのだ。

 そしてミサキが引きつけている間、センナは木の頂上で気付かれない様に魔力を溜め、満タンとなった瞬間隙を見て砲撃を繰り出した。


 「それにしても無茶するわねミサキ。敵の狙いは貴方なんだから囮なんて一番危険な立ち位置なのに」

 「えへへ・・でも敵は私の個性を私を殺し奪おうとしているから・・・・あの魔物も私を普通に殺そうとしていたし」

 「魔物達は全員リーダーにこう命令されているわ、黒川ミサキを殺したらその肉を喰え・・と。肉体を飲み込んでしまえば流れる魔力も体内に取り入れられるからね」


 センナの説明を聞き少し顔が青くなるミサキ。

 自分が食われるところを想像してしまったようだ。


 「まあとりあえず、此処は片付いたわね」


 辺りを見回しそう呟くセンナ。

 ここでの戦いは終結したが、しかしまだ全てが終わった訳ではない。


 「あとはリーダーの方ね、ミサキ、貴方はもうここで身を引きなさい」

 「えっ・・でも・・・・」

 「何度も言うけど敵の最大の狙いは貴方、他の全てを犠牲にしてでも貴方を手に入れようとしているわ」

 「・・・・でも、タクミ君は今も・・・・」

 「私が応援に行くわ。だから――――」


 その時、ミサキの足元に魔法陣が現れた。

 その魔法陣はセンナのよく知る物であった。


 「ミサキィッ!!!」

 「きゃっ!?」


 センナはミサキを突き飛ばし、ミサキは魔法陣から離れる。だが、代わりにセンナが魔法陣の足元に移動してしまう。そして――――


 ――ドカアァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッ!!!――


 「えっ・・・・・・?」


 センナの突然の行動、そして彼女を巻き込んでの大爆発。

 ミサキは突然の出来事に思わず呆然として思考が停止する。だが、すぐに目の前で起こった事態に悲鳴を上げる。


 「お、お姉ちゃあぁぁぁぁんッ!?」


 ミサキの悲痛な姉の呼び声が夜の森林にこだました・・・・・・。

 

 

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