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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第四十六話 怪しげな兆候

 「「オオオオオオオオッッ!!!」」


 タクミと男の声が夜の森林に響き渡る。そしてそれ以外にもう一つ、二人の男が互いに殴り合う打撃音も一緒について聞こえて来る。


 ――ドゴォンッ!!――

 ――ガキィンッ!!――

 ――ドズゥゥゥゥゥゥゥッッ!!――


 互いの強化された拳が相手の肉体の破壊を目的とし、まるで硬質な鈍器で殴られたような鈍い痛みが二人の体に走る。殴られるたびに口内に血の味を感じ、体に激痛が電流の様に流れる。

 だが――――


 「関係あるかぁぁぁぁぁッ!!」

 

 タクミはそう叫びながら男の腹部に拳を深々と入れる。

 だが、すぐに名も無き男はタクミの顔面に攻撃を入れる。


 「うぐっ!」

 「破ッ!!!!」

 ――ドゴォォォォォンッッ!!――


 強烈な一撃に吹き飛ばされるタクミ。

 この時、タクミは人の手で殴られている様には感じなかった。体感ではまるで高速で動いているトラックの衝突をピンポイントで体を打ち抜いている様に錯覚するほどであった。

 凄まじい威力の攻撃。しかし、負けていい理由などにはならない。


 「《スパークル・ガーディアン》、最大パワーッ!!!」


 タクミから放たれるオーラはより強い光を放つ。

 名も無き男はそれに対抗すべく、個性魔法で対応する。


 「消滅の槍、《デリートランス》!!」


 名も無き男の手には白く光る槍が現れる。

 その槍をタクミに向かい投擲する男。槍は風を切りながらタクミへと一直線向かって行く。


 ――がしぃっ!――


 突き刺さる直前、ぎりぎりの位置で槍を受け止めるタクミだったが、すぐに槍を手放す。


 「あっつっ・・・・!」


 槍を受け止めた瞬間、槍を触れている箇所がまるで焼けつくかのような痛みと熱さを感じたタクミ。すぐに掴んでいた槍を放り捨てる。

 捨てられた槍は地面に落ち、槍が触れている箇所の地面がまるで溶けるかのように〝消えた〟。

 その現象を見て、タクミは男の魔法を解析する。


 「(触れて手に走った感覚、槍の接地している箇所が消えて行く現象・・・・物を溶かす、いいや、違う・・これは!)」


 魔法の正体を見抜き、タクミは名も無き男に言った。


 「お前の魔法・・・・物を消す力を持っているんだろう?触れた物を消す力・・」

 「そうか・・・・そう言えばお前は俺の魔法を紹介している時は居合わせなかったな」


 名も無き男は手に消滅の魔力を宿してタクミに告げる。

 

 「そう・・・・俺の個性は〝消滅〟・・・・触れた物は皆、骨すら残さん!!」


 男から白く光り輝く魔力の弾丸が大量に展開される。

 タクミは距離を置き、その攻撃を全て回避する。


 「くっ!(手で弾けばこちらが負傷する!)」


 触れた物を消す力、通常の魔力弾の様には対処できず回避に専念するタクミ。

 攻撃を回避しながらタクミは自分の身以上にミサキ達の方が気がかりであった。

 当初の目的のように目の前の男と魔物達を引き離すことが出来たが、それはミサキ達の動向が目に付かなくなったという事。タクミは自分も戦いながらもミサキ達の身を案じていた。






 タクミ達から少し離れた場所では、ミサキとセンナも負けず劣らずの激闘を繰り広げていた。

 彼女達の前には三体の魔物、そしてその後方では全身が焼けただれた魔物が一体。センナの攻撃で一体が戦闘不能になり、残りの数は三体。

 そして――――


 「《豪炎黒死砲》!!!」

 ――ブオオォォォォォォォォォォォォォッッ!!!――


 全てを飲み込む黒い炎の放射に飲み込まれる魔物の二体。一体は完全に飲み込まれるがもう一体は炎の砲撃の中から脱出する。だが、そこにミサキの追撃が入る。


 「《火炎弾》!!!」


 通常の《火炎弾》よりも大きく、魔力を大量に含んでいる一撃。センナの攻撃の際に力を溜めて放った一撃はセンナの攻撃で弱っている魔物に命中した。


 ――ズガアァァァァァァァァァンッ!!――

 「ギャオンッ!!」


 悲鳴を上げる魔物。そこにセンナの先程の黒炎の砲撃が再び放たれ、魔物を飲み込んだ。

 順調に敵を片付けていく黒川姉妹、残る魔物は後一体となっていた。


 「(す、すごい)」


 ミサキは内心、今の状況に驚いていた。

 その理由は二つあり、一つは姉、センナの実力である。三体の魔物を戦闘不能に出来たのは間違いなく姉の力が有っての事であるだろう。改めてセンナの実力を再確認するミサキ。

 そしてもう一つは、Aクラスの魔物を四体相手取って居るにも関わらずミサキの中には一抹の不安も感じなかったことだ。恐ろしい存在を相手取っているにも関わらず、ミサキはどこか安心していた。

 それほどまでに・・・・ミサキはセンナのことを信頼しているという事だろう。

 そして、それはセンナも同様であった。妹が一緒に戦ってくれている、その事実がセンナのこの圧倒的な力を引き出している原動力となっていた。


 「ミサキ、後一体残っているわ!最後まで気を抜かないで!!」

 「うん、センナお姉ちゃん!!」


 状況は黒川姉妹に分があり、勝利は目前であった。

 だがこの時、最後に残った魔物の一体は黒川姉妹を見て、その眼に怪しげな光を走らせていた。


 「行くわよミサキ!!」

 「はいっ!!」


 姉妹は炎を宿して最後の魔物に向かって行く。

 その時、残った最後の魔物から白い光が放たれた。


 「な、何!?」

 「きゃっ!?」


 予想外の出来事に怯む二人。

 そして魔物から放たれる光が収まり、そこには・・・・・・。


 「・・・・これは?」


 センナから疑問の声が漏れる。

 

 そこには人の形をした異形の生き物が両足で立っていた・・・・・・。

 


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