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番外編 第一話 久藍タクミちゃん

今回は番外編です。本編より時間は少し巻き戻ります。

 

 これはまだ〝クラス別魔法戦闘〟が始まるよりも少し前、夏休み中の出来事である。

 赤咲レンが夏休みの宿題を何とか終え、その翌日の出来事。この日、タクミにある不幸が降りかかった。


 「夏休みもあと四日……長かったようで早かったような」


 長期休みも間もなく終わり、再び学生生活に戻されると思うと残りの四日、何か有意義な時間を過ごした方が良いのではと考えるタクミ。


 「…アイスでも買ってくるか」


 とはいえ、特にやりたい事も思い浮かばず、アイスでも買ってきて涼もうとするタクミ。

 家を出るとまだ夏の最中、気温も高くやはり凄まじい熱気を感じる。


 「あち~~っ」


 そんなことを呟きながら近くのコンビニまで歩いて行くタクミ。

 そして、曲がり角を曲がったその時――――


 「うあああああどいてぇぇぇぇぇ!!??」

 「えっ……」


 自分の視界には自転車に乗った女性が目の前に迫っていた。


 ――がしゃぁぁぁぁぁんっ!!――

 「きゃあ!」

 「うわぁっ!?」


 思いっきり自転車と衝突するタクミ。

 しかし、この時咄嗟にタクミは体を強化していたため大怪我をすることはなかった。

 だが、彼の最大の不幸はこの後にあった。


 「いつつ……ん、うわっ!なんか変な液体が!」

 

 自転車のかごには何やら怪しげな液体をした瓶が数本摘まれており、その内の一本が衝突した際に瓶が割れ、その中身がタクミの体に付着したのだ。

 倒れていた女性は頭を押さえながら起き上がって来た。


 「いつつ、ブレーキが壊れるなんて…ごめんねキミ…って、ああ~~~~ッ!?」

 「えっ、な、何?」


 突然大声を上げる女性にタクミは戸惑いを見せる。

 そして、その次の瞬間――――


 ――ぼんっ!――


 タクミの体が爆発し、真っ白な煙を上げたのだ。

 その光景に女性の顔は青く染まっていた。


 「あわ、あわわ……」

 「な、なんだ…?」


 だが、その爆発の中からは戸惑いながらも普通に元気な声が聞こえて来た。どうやら煙は派手に出たが体に損傷はないらしい。

 そして、煙の中からタクミが出て来た。

 

 「なんだ…煙が出たけど…あっ、それより大丈夫ですか?」


 今の現象には気にはなるが、それ以上にぶつかった相手の女性の身を案じるタクミ。 

 女性の顔色は青くなっており、まさしく顔面蒼白の状態であった。その様子にタクミは本気で心配する。


 「あ、あの…打ちどころでも?」

 「あ、いや……だ、大丈夫」


 普通に会話が出来ている事からとりあえず一安心するタクミ。

 しかし、女性の顔色は相変わらず優れない。


 「あの…ほんとにだいじょ「ごめんなさい!!」……え?」


 タクミの言葉を遮り女性は地べたに座り込み土下座をする。

 その予想外の行動にタクミは思わず取り乱す。


 「ちょっ!何してるんですか!?」

 「ほんとーにごめん!!」

 「いや、ぶつかったくらいで土下座なんてしなくても!」

 「違うの!それもあるけど…」


 女性は地べたに着けていた頭を上げて、とんでもない事を言った。




 「私がぶつかったせいで、あなたが女の子になっちゃって!!!ほんとうにごめんなさい!!!!」 


 「……はい?」

  

 この人は何を言っているんだろう?

 俺が女の子になった?

 そんな馬鹿なこ…と……。

 

 ここでタクミの思考は一旦停止した。

 視線を自分の体に向けると胸部が盛り上がっている様に思える。

 ダラダラとタクミの顔に汗が浮かぶ。


 「こ、これ…」


 女性は戸惑いながら手鏡をタクミに渡す。

 タクミは震える手でそれを受け取り……鏡を見た。


 そこには……普段の自分ではなく見た事の無い美少女が映り出されていた。


 「な、な、な、何ィィィィィィィィィッ!!??」


 可憐な少女の叫び声が夏の空へと響き渡った……。






 「はあ……」

 

 タクミは当初の予定であったコンビニまで行き、その外に設置されているベンチに座りため息を吐いていた。

 彼…いや、彼女がぶつかった相手はE地区の魔法研究機関の研究者の一人であった。彼女はタクミが浴びた薬品、研究で失敗した不良品を廃棄所で廃棄しに行っている最中だった。しかし、運悪く自転車のブレーキが壊れタクミにぶつかり、その薬品をタクミが浴びて性別が逆転したのだ。

 タクミが浴びた薬品は幸い約二十四時間程度、つまり一日で効果は切れるとの事だが、逆に言えば今日一日は彼は少女でいなければならない。


 「まいったな…」


 ぶつかった研究員が土下座までしたのはこの事実が露呈すれば自分は研究員をクビになるかもしれないという恐れからの行動であった。

 一日我慢すれば戻るのならばと、タクミも彼女のことを責めはしなかった。あの後、彼女は泣きながらタクミの足にしがみついて来た姿を見て、強く怒る気にもなれなかった。何より自転車のブレーキが壊れたことは彼女の責任でもない訳だし。


 「ハア…」


 まあ一日ならばおとなしく過ごせば何事も無く終わるだろう。

 タクミはそう考えていた。


 しかし、今日一日が彼、いや彼女の予想以上に荒れる事になるとは、この時の彼女は想像もしていなかったのだった……。

 


女の子になっちゃった主人公!果たして彼女はどうなるのか(笑)!!

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