第三十八話 再会
「影夜ヌマが何者かにやられた」
とある廃墟に集まっている三人の人間、そのリーダである男が他の二人へその事実を告げる。リーダーからの報告に二人は驚いた顔をした。
いつも集合場所に利用しているこの場所に突然のリーダーからの呼び出しを受けたエクスとレイヤー、その理由は仲間を一人失ったからであった。
リーダーの言葉を聞いてレイヤーが質問する。
「誰にやられたの?またあの久藍って奴?」
「それは解らん、だが奴は久藍タクミと黒川ミサキの観察をすると俺に言っていた。調べたところによると奴は全身が氷漬けにされていたそうだ」
「氷・・・・その二人の仕業ではないわね」
エクスの言葉にリーダーが頷く。
氷の魔法は基本魔法には存在しない、それは個性の力だ。
影夜ヌマは現在は魔法刑務所の中、もう彼は戦力としては数えられないだろう。
「仕方がない・・・・」
リーダーの男はある決断をする。
「これ以上予想外の出来事で戦力を失う訳にはいかない、目的である黒川ミサキの魔法、個性の力を奪う」
「!!・・・・」
リーダーの言葉にエクスは表情は変化していないが、内心で僅かに動揺した。
一方でレイヤーはリーダーの言葉に凶悪な笑みを浮かべる。
「大賛成♪またあの銀髪が邪魔をするってんなら今度こそこの手で・・・・ッ!」
「エクス、現在我々が所有している魔物の総数は?」
「Aクラスが四、Bクラス五、CとDがそれぞれ九・・・・合計二十七体になるわ」
「そうか・・・・それだけいれば充分だろう」
リーダーは二人を見据えて声高らかに宣言した。
「今夜、黒川ミサキの襲撃を決行する」
「・・・・・・・・」
リーダーの宣言にエクスは何かを覚悟した眼をしていた。
黒川家ではミサキはそんな事など知らず、夏休みの宿題を捌いていた。
始める前に立てていた計画以上にペースははかどっており、現在残っている宿題はすでに五分の一程度だった。
「今日はこれ位でいいかな」
計画以上の数もこなし、今日はもう休憩にしようとするミサキ。
自分の部屋を出て、下の階の居間へと行こうとするミサキ。その時、部屋を出る直前にミサキの携帯が着信音を立てて鳴り響く。
携帯を開くと電話の相手はタクミであった。
「あっ、タクミ君だ♪」
嬉しそうな顔をして電話に出るミサキ。
「もしもし、タクミ君?」
「ああそうだ、こんな時間に悪いな」
「ううん、それでどうかしたのかな?」
ミサキがそう聞くと電話越しでタクミがどこか言いずらそうに言った。
「ミサキ、その・・・・よく解らないけど、お前、大丈夫か?」
「?・・え、えっと、どういう事?」
タクミの質問の意味がよく解らずどういう事かを尋ねるミサキ。
タクミはミサキに続ける。
「正直、自分でもよく解らない。ただ、お前に何か嫌なモノが近づいている気がして・・・・」
「え・・・・」
「何でそう思ったか解らない。でも・・・・」
「嫌なモノって・・・・私を狙っている人達のこと?」
何者かが自分を狙っていることはすでにミサキも分かっている。
つまりタクミはその人物達が襲ってこないかを心配しているのだろう。
すると、電話越しでタクミが言った。
「ミサキ、今からそっちに行く。どうにも不安が収まらないんだ」
「あっ、タクミ君!・・・・切れちゃった」
ミサキが名前を言う前に電話を切ったタクミ。
タクミの胸騒ぎ、それを聞いてミサキもおもわず不安を感じる。
ミサキは手元の転送の指輪を撫でる。
すると、ミサキの携帯に再び電話が架かる。タクミからだと思ったミサキだったが、携帯に映し出された番号を見てミサキに表情は驚愕に染まる。
その番号は・・・・自分が良く知っている携帯番号だった。
「はあっはあっ!」
タクミは今、ミサキの家へと全力で向かっていた。
理由は不明だが、どういう訳かは分からないが、タクミはミサキに何か大きな危機が迫ってるように感じたのだ・・・・・・まるでそう思い込まされているかのように。
「はあっはあっ・・・・!」
ミサキの元へと早く駆け付けようとしていたタクミだが、その足は突然止まる。
またしてもタクミはある予感を感じたのだ。そしてタクミはその予感に従い、ミサキの家ではなくある場所へと走って行く。
「はあっ、はあっ・・・・ここ・・だよね?」
一方ミサキは家を出て学園の所有している〝魔の森〟から近い場所の森林の中に来ていた。
ミサキはある人物から電話を受け、全速力でこの場所へとやって来たのだ。
辺りを見回すミサキ。そこへ別の人間の魔力を感じ取った。
「!」
後ろを振り返るミサキ。
そしてそこにはある人物が立っていた。
「あ、貴方は・・・・貴方はッ!?」
「久しぶりね・・・・ミサキ」
ミサキの前に現れた存在。
それは――――
「お姉・・ちゃん・・・・」
ミサキの亡き姉、黒川センナが立っていた・・・・・・。