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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第二十八話 爆破使いの襲撃2

 レイヤーの肉体の大爆発によって河原の形状は少し変化していた。それほどまでに凄まじい威力であったという事だ。そして、その場には傷だらけではあるが、まだ余裕を感じられるレイヤーと・・・・・・全身が傷や火傷、さらには所々から血を流しているタクミの姿が在った。


 「ふふ、私の≪肉体ボム≫を至近距離から受けてまだ五体満足とは・・・・どんな体の造りしてるのよ」

 「ぐっ・・・・・・う、おえぇ・・・・うぐっ」

 

 レイヤーの≪肉体ボム≫は魔力を体内で溜め続け、溜めた魔力が一定の量を超えると相手に触れられた場合、もしくは自分の意思で起爆する事が出来る大技だ。自身も魔力を解放する際に多少のダメージは負うが、相手の受けるダメージはその比ではない。

 爆発を至近距離で受けたタクミは口から大量の血を吐き出し、倒れ込むのを必死で抑えている状態だった。

 強い鉄の嫌な臭いがタクミの鼻につき、更には意識まで僅かにぼやけ始める。


 「(まずい・・このままじゃ・・・・)」

 「ははぁッ!!」

 ――バキィッ!――

 「ぐぅっ!」


 レイヤーはタクミに向かって行き、勢いをつけてタクミの頬を殴りつける。

 殴られたタクミは体制を崩し、更にレイヤーは膝蹴りを腹部に決める。


 「う、ぐ・・・・っ」

 「喰らいなさい!!」

 ――ドカアァァァァァンッ!――

 「ぐあああああああッ!」


 タクミに爆破の魔法を放ち吹き飛ばすレイヤー。

 吹き飛ばされるタクミだがまだ彼は立ち上がって来た。


 「もうしつこいわねぇ~、早く死になさいな!!」


 イライラとしながらレイヤーはタクミに言う。

 しかしタクミはレイヤーの言葉など耳には入っていなかった。彼は今、使うべきか否かを悩んでいた・・・・・・新たに手に入れた力を。

 あの力を使えば勝ちの目は出て来る、しかし今の自分にコントロールが出来るかどうか・・・・あの力は体力の消費も激しく、パワーに振り回されて力を使い切る恐れもある。相手の強さはかつて倒した金沢とは比較にならない程の強さだ。その未熟さが命取りになりかねない。

 だが・・・・・・・・。


 「どの道このままじゃ勝てないよな・・・・」

 「はっ?」


 タクミの小言に疑問の声を出すレイヤー、ダメージの余りに気でも狂ったかと思ったが、どうやら違うようだ。

 

 「まだ何かする気の様ね、でもこれ以上付き合うのは勘弁よ」


 そしてレイヤーは先程の大技、≪エクスプロージョンKB≫を形成し、タクミに受かって放つ。

 迫りくる巨大爆発玉、今度こそ決まったと確信を持つレイヤーであったが・・・・そうはならなかった。


 ――バシィィィィィィィィィッ!!――


 タクミはレイヤーの放った巨大な爆発玉を上空へと片手で弾き飛ばしたのだ。


 「・・はあっ!?」


 自身の最強の技を片手で、まるで蠅でも追い払うかのように振り払った事に驚愕するレイヤー。そしてようやく気付く・・・・目の前の男の魔力が先程よりもどんどん上がっている事に・・・・。

 そして次の瞬間、タクミの体が黄金に光輝いた。


 「ぐうっ!?」


 そのあまりの眩さにレイヤーは思わず目をつむってしまった。

 徐々に光が弱まり目を開くレイヤー、そして彼女は驚愕した。

 光が収まった後のタクミの姿に大きな変化があったからだ。


 「何よ・・・・それ・・・・」


 光が収まった後、現れたタクミの瞳は赤と青のオッドアイから金色に変わっていたのだ。容姿の変化としてはそれだけだが、レイヤーはそれ以上の変化を感じ取っていた。

 タクミから放たれる威圧感が先程とは明らかに違うのだ。

 

 「行くぜ・・・・」

 ――ドォンッ!!――


 一瞬でレイヤーの前まで接近するタクミ、そして――――


 「え・・・・・・」


 レイヤーの口から間抜けな声が漏れる。何故なら目の前まで接近していたタクミの姿が再び消えたのだ。

 そして・・・・・


 ――ズドドドドドドドドドドッッ!!!――

 「ごぷぅうううっ!?」


 レイヤーの体に強烈な激痛が走る!!

 まるで目に見えない何かに連続で殴りつけられた様な衝撃がレイヤーの体に走ったのだ。

 その場で膝を付いてうめき声を上げるレイヤー、彼女は今混乱の極みにいた。


 「なに・・が・・・・」


 気が付けばタクミは自分から離れ、元の位置に戻り立っていた。

 タクミがした事は至って単純な事、速く動き、速く攻撃を繰り出し、速く元の位置に戻った。言葉にすればただそれだけの事、ただしそれらの動作の速度が常識を遥かに超えていたのだ。

 少なくともレイヤーに視認する事が出来ない程に・・・・・・。


 「ふ、ふざけんな・・・・!!」


 レイヤーはそう言いながらよろよろと立ち上がる。

 彼女の瞳には強い怒りがこもっており、手に魔力を集中する。

 一方のタクミはその場から動こうとはしなかった。何故連続で攻め続けないのか、それには理由があった。現在タクミは今の力を完全に使いこなせていないのだ。その証拠に魔力は完全に安定しておらず、意識の集中を一瞬でも抜けば魔力は肉体に上手く留められず元の状態に戻ってしまうだろう。

 そしてもう一つ、タクミの受けたダメージの大きさがより一層制御の苦労に拍車を掛けていたのだ。


 「(くそっ、ダメージを負いすぎた、集中を欠けばすぐに元の状態に戻ってしまう!)」

 「あああああああああッ!!」


 タクミのそんな苦労など知らず、レイヤーは≪エクスプロージョンKB≫を放つ。タクミは意識をしっかりと保ち、その攻撃に真正面から向かって行く。

 そのまま先程同様その大玉を別方向へと弾き飛ばすが、弾き飛ばした攻撃のすぐ後に二発目の≪エクスプロージョンKB≫が迫っていた。

 レイヤーは一発目を放ちそのすぐ後に二発目の大玉を放っていたのだ。

 二発目の大玉が直前に迫るタクミであったが、彼は地面を蹴り超速でその攻撃を回避、そしてレイヤーの背後に周り込み突っ込んで行く。

 だがレイヤーは大量の小型の爆発玉を連続で射出する。

 タクミはそれらを紙一重で避けながらレイヤーに迫るが、レイヤーは再びあの自爆技を使おうとする。


 「≪肉体ボ・・・・≫!!!」

 

 攻撃しながらも体内で溜め続けた魔力を解き放とうとするレイヤーであったが、自爆するよりも一歩早く懐に潜り込むタクミ。そして――――


 「≪金色魔力砲≫!!!!」

 「なっ、きゃああああああああッッ!!!!」


 肉体の爆発よりも一瞬早く集約した魔力の砲撃を至近距離で繰り出すタクミ。

 金色に輝く魔力砲によりレイヤーの体は包まれ、そのまま空高くまで打ち上げられる。


 ――キャアアアアアアアアアアアアアッッ――


 魔力砲にやられながら悲鳴を上げて飛んでいくレイヤー。

 タクミは今の一撃により魔力を完全に使い切り、その場で脱力する。


 「はあ、はあ・・・・もう、限界だ・・・・」


 ――ドサァッ!――


 上空まで打ち上げられたレイヤーが地上に落ちてきてタクミのすぐ近くで落下してきた。

 落下の際、全身には魔力が宿っていたため無時・・とはいわないが落下事態のダメージはさほどなかった。それ以上にタクミの最後の一撃がレイヤーの肉体を負傷させていた。


 「あ・・・・う・・・・」


 レイヤーは消え入りそうな声でうめき声を出している。

 とりあえず、生きてはいるようだ。


 「はあ・・はあ・・とにかく、こいつからミサキを狙う理由を・・・・あ・・・・」


 勝負に決着がついたことで気が抜け一瞬落ちそうになるタクミだったが、すぐさま意識を現実世界に引き戻す。

 

 「まだ倒れるわけにはいかん・・とりあえず、学院長に連絡を・・・・」

 

 ポケットから携帯を取り出すが・・・・タクミの携帯は無残な姿になっていた。

 当たり前と言えば当たり前だろう、戦いの最中はずっとポケットの中に入れていたのだから。

 連絡手段がないため、仕方なく直接レイヤーを運んでいこうとするタクミだったが――――


 ――ドサっ――

 「・・・・あれ、脚が・・・・」


 突然脚が動かずその場に倒れてしまうタクミ。

 無理もないだろう・・・・タクミの全身に負っているダメージはとてつもなく大きい、その上に魔力も随分とこの戦いで消費してしまっている。

 徐々に体の全身がうまく動かせなくなるタクミ。更には意識までも朦朧とし始める。


 「ま、不味い・・・・このまま・・じゃ・・・・」


 その言葉を最後にタクミの意識は闇の中へと沈んでいった・・・・・・。




 ――ザッザッザッ――


 荒れ果てた河原に倒れるている二人の人間。

 そんな場所に人の足音が近づいて来る・・・・・・。


 「・・・・・・・・」


 そこに一人の女性が現れ、地に伏しているタクミとレイヤーを見ている。

 彼女はタクミに近づくと、彼に手を伸ばした・・・・・・・・。

 

 

 

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