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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第二十七話 爆破使いの襲撃

 アタラシス学園での特訓の翌日、タクミは人目の付かない河原の近くにやって来ていた。

 今日は学園の訓練場は使用できず、特訓として使用出来る代わりの場所を探していたのだ。その結果、人目の付きにくく、周囲にも人が居る気配も感じられない河原に辿り着いたのだ。学園からは少し離れた場所ではあるが、特訓にはベストな場所であるとタクミは思った。


 「ここはいいな、人も全然この辺りには居ない様だから思いっきり特訓が出来る・・・・少し遠いのが欠点だが、贅沢は言えないよな」


 早速特訓を開始するタクミ。まずは魔力を少し開放し、徐々に魔力を高めていく。

 どうやら個性を使ってない状態ならば今の力はコントロールは完全に出来るようだ。ここまでは昨日も訓練場で証明されている。問題はここからである。


 「個性魔法発動・・・・」


 タクミから黄金のオーラが放たれる。

 個性魔法を発動した状態で少しずつ魔力を上げていくタクミ。先程と同様、コントロール面では特には問題は起きていない。少しずつ上昇させていく魔力・・・・そして〝この状態〟で出せる最大限の魔力を引き出した。

 

 「大丈夫そうだ・・・・コントロール出来ている」


 自分の魔力に乱れはなく、思う様に使いこなせる事を確認するタクミ。

 そして・・・・問題はこの先であった。


 「昨日手に入れた新たな力、問題はここからだな」


 タクミは昨日手にした新たなる力を発動しようとした。



 だがその時――――タクミの周囲に大量の魔法陣が出現する。



 「!?」


 突然の事態に力の開放を中断し周囲を警戒するタクミ。すると、辺りの魔法陣が強い光を放ち、そして――――


 ――ドッカァァァァァァァァァァァンッッ!!――


 魔法陣は一斉に大爆発を起こした。

 辺りは爆炎に包まれ、大量の黒い煙が上がっている。

 すると、河原近くの木々の間から一人の女性が現れる。その女性は爆発現場を見てほくそ笑んだ。


 「これで一貯上がりかしら、あっけないものね」


 その女性はタクミの事を標的にしていた河川レイヤーであった。

 彼女はタクミが家を出てこの場所に来るまでひそかに尾行をしていた。魔力を押さえ、気配を殺し、タクミが一人になるタイミングを狙っていた。そして今日は彼女にとって絶好の機会と言えただろう。何しろ特訓のためにタクミは自ら人目の無い場所まで移動をしたのだから。

 タクミがこの場所を選んだ時、既にこの辺りには起爆魔法が仕掛けられていたのだ。

 この場所を始め、複数の場所に先回りをして魔法陣を点々と仕掛けて先手を打っておいたレイヤー。タクミの行く先々を先回りしてトラップを張っておいたのだ。

 この河原にもタクミがやって来る前に彼女は訪れ、罠を張っておいたのだ。彼が特訓をするために外出をした事は彼女も尾行の最中に知ったため、彼が特訓に選びそうな場所を予測し罠を張ったのだ。


 「さて、次は黒川ミサキの番ね・・・・」


 レイヤーは未だに炎や煙がもうもうと立っている爆発地を見ながら呟いた。

 踵を返しその場を後にしようとするレイヤーだが――――


 「そうか、やはりミサキを狙っている奴はまだいたんだな」

 「!?」


 炎と煙の向かう側から聞こえて来た声に振り返るレイヤー。

 目を凝らすとその中に一瞬人の影が見えた。


 「まさか・・・・」


 息を吞んで爆発地を見るレイヤー。

 すると、爆発地の中から咆哮が聞こえて来た。


 「オオオオオオオオオッッ!!」


 咆哮と共に凄まじい魔力が爆発地に吹き荒れる!

 タクミから放たれる魔力により周囲の炎は消え、煙は吹き飛び、その姿があらわになる。


 「さて・・・・お前からは色々と聞かせてもらうぞ」

 「ふふっ、無傷とは少し傷つくわね・・・・」


 見たところ衣服が少し汚れている程度でタクミ自身にはほとんどダメージはなかった。

 だが、レイヤーには動揺の色は毛ほども見られなかった。


 「じゃあこれならどう?」


 レイヤーが空に向かって手をかざすと巨大な魔力の大玉が形成される。

 その大きさは直径約五メートル位であり、大玉から凄まじい熱気と魔力が感じられる。彼女のその技にタクミは少し焦りを見せた。


 「凄まじい魔力を感じる。アレはまずいぞ・・・・」

 「≪エクスプロージョンKB≫・・・・私の個性である〝爆発〟の力を大玉の形に凝縮し、それを放つ爆発玉よ。単純であるが故に強力な技。さあ、受け気れるかしらッ!!」


 爆発の塊である大玉をタクミに向かい放つレイヤー。

 だが・・・・・・。


 「(なんだ、やや遅い・・)」


 レイヤーの攻撃は威力こそは凄まじそうだが速度は通常の魔力弾よりもやや遅いのだ。

 これでは避けてくれといってるようなものだ。

 辺りに人の気配がないため、避けたところで問題はない、となれば回避するまで。

 真横に飛んで攻撃を回避しようとするタクミだったが、そこで大玉は軌道を変えてタクミに向かって行った。

 

 「なッ、追尾型の攻撃か!!」

 「ふふ・・・・」

 「くそッ!!」


 距離を取り続けてもどこまでも追いかけて来る爆発の大玉、タクミは振り返ると両の手に魔力を集中し、迫りくる大玉に攻撃を放つ。


 「魔力砲!!」


 タクミの放った魔力砲は大玉に直撃し、その瞬間に大玉は大爆発を引き起こす。

 タクミは爆発と同時にその場を全力で離れる。しかし、上空から小型の爆発玉がタクミの辺りに降り注ぐ。

 

 「チィッ!!」


 まるで雨のように次々と降り注ぐ小型の爆発玉。

 なんとか回避をするタクミ。そんな彼の姿を見ながらレイヤーは笑みを浮かべて爆発玉を放ち続けながら言った。


 「たいした運動能力ね・・・・でも、今あなたのいるその辺り――――」


 攻撃を回避しつつ移動をするタクミ。だが、その時タクミの周りに先程と同じ魔法陣が複数現れる。


 「しまった!?」

 「そうその辺り・・・・地雷原よ」


 言葉と共に魔法陣は大爆発を引き起こした。




 爆発が収まりレイヤーは今度こそ仕留めたかと思ったが、爆発場所からタクミが飛び出してきた。

 一直線にレイヤーに向かって行くタクミ。レイヤーは構えを取るが、タクミは彼女の構えに疑問を感じた。その理由は・・・・・・。


 「(何だあの構え、まるで素人、隙だらけじゃないか!)」


 レイヤーの構えに疑問を抱きながらもタクミは強化した拳をレイヤーの腹部に叩き付ける。

 

 ――ドスゥゥゥゥッッ!!――

 「!、う、うぶっ!?」


 タクミの攻撃は予想通りに綺麗に決まった。

 強烈な一撃に痛みと嘔吐感を感じるレイヤーであったが、その口元には笑みが浮かんでいた。

 

 「ふふっ、触ったわね・・うぶっ」


 その瞬間、レイヤーの体が光、大爆発を引き起こした。



 ――ドガアァァァァァァァァァァァァァァンッッッッ!!!!!!――



 今までとは比較にならない爆音がその場に響き渡り、辺り一面が吹き飛んだ。






 「え・・・・?」


 黒川家ではこの時、ミサキは何かを感じ取った。

 具体的な事は何も解らず、何を感じったかなど自分自身解らなかった。それでもしいていうならば・・・・・・。


 「タクミ君・・・・?」


 タクミの身に何かよからぬ事が起きたと、彼女はそう感じたのだった。

 


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