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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第二十六話 新たな力

 アタラシス学園内に存在する訓練場、その一つである第一訓練場では二人の男が大の字になって仰向けになり倒れていた。

 つい先ほどまでこの訓練場で勝負をしていたタクミとマサトである。

 二人共激しい戦いを繰り広げ、凄まじく魔力、体力を消耗していた。疲労が大きいため戦いが終わってしばらくの間、二人共呼吸も荒くなり、会話をする気力も起きなかった。

 それから約十分後――――




 「ふう、ようやく落ち着いてきた」


 大分体力が回復して身動きが取れる様になったタクミ。

 マサトの方も今はもう動けるようだ。

 勝負も終わり、マサトはタクミに先程見せた魔法について質問をした。


 「なあ久藍、最後の方で見せたあの黄金色のオーラ、あれってお前の個性魔法だよな」

 「ああ、そうだ」

 「でもよ、あれってどういう力なんだ?光の魔法・・ではないよな、もちろんただの肉体強化でもないんだろうけどよ」

 「・・・・解からないんだよ」

 「はあっ?」


 タクミの答えに疑問の声を上げるマサト。

 自分に発現した個性の力が解からない・・・・そんな事があるのだろうか。個性魔法は自身の奥底に眠る魔力の開放により発現する力。その力を開花した者は自分の眠っていた魔法が何かを知る事が出来る。黒川ミサキの様に炎なら炎と、小林ケントの様に岩なら岩、花木チユリの様に転送なら転送と・・・・・・そして自分の幼馴染の八神メイもそうだ、自分の個性の力が何かちゃんと理解している。

 タクミは頭を掻きながら困った様に言った。


 「個性の力である事は魔力の質から解るんだが・・・・どういう訳かその力が何か自分でもよく解らないんだ」

 「もしかして過去になかった事例なんじゃねえか、それって」

 「確かに・・・・自分の個性の力が何か把握できてない奴なんて少なくとも俺は見た事がない・・・・」

 「俺もだよ・・・・」


 改めて思うと自分がかなり特殊な存在なのではと思うタクミ。

 しかし気にしても回答が出るわけでもなく、気分を切り替えるタクミ。


 「まあ、考えても仕方がないからな。いずれは解るだろうさ」

 「自分の事なのに呑気だな、お前」


 マサトの言葉に苦笑いを浮かべるタクミ。

 そしてマサトはその場で大きく伸びをすると、タクミに向かって言った。


 「じゃあ俺はそろそろ行くわ、お前とやりあって今日はもうくたくただしよ。これ以上訓練する気にはなれねぇよ」

 「ああ、俺ももう少し休んでからここを出るよ」

 「そうか・・じゃあ俺は先に行くわ」


 マサトはタクミに手を上げて振りながら訓練場の出入り口に消えて行った。

 一人残されたタクミは先程の戦いの事を思い返していた。自分と正面からぶつかり合うマサト、彼の強さは正直なところタクミの予想を上回っていた。少なくとも二年の小林よりも上であるだろう。どうやら未だに個性魔法は習得していないようだが、純粋な戦闘力は自分とほぼ互角と感じた。

 そして先程の一戦の最中、タクミは自分の魔力にある違和感を感じた。


 それは、自分の力が解放された様な感覚であった。


 まるで今までの自分の力には枷の様な物がしてあり、自分の力を封じていたような・・・・・・マサトとの戦闘の途中、彼と衝突した際、自分の体の奥底から更なる力が溢れる様に感じたのだ。まるで自分の考えていた枷の様な物が壊れたかのように・・・・・・。

 ためしに、タクミはその場で魔力を解放してみた。


 「ハアアァァァァァァァァァッ!!」

 ――ボシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!――

 「な、何ィッ!?」


 自身から溢れ出す魔力にタクミ自身、驚きを表していた。

 明らかに魔力の総量が増え、より力強くなっているのだ。少なくともマサトとの勝負前の時以上の力を今の自分からは感じ取れる。


 「(どうゆう事だ?さっきの戦いで眠っていた力が目覚めたのか?いや、でも・・・・)」


 自分の力の上昇に驚くタクミ、もし個性魔法をこれで発動したら一体どうなるのか・・・・などとそう考えてしまうと試したくもなる。

 タクミは目をゆっくりとつぶり、呼吸を整え、意識を集中し、そして――――


 「ハアアアァァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」


 個性魔法を発動した。


 その時、訓練場は眩い黄金の光に包まれた。




 個性魔法をしばし発動したその後、魔力を収めるタクミ。

 タクミは僅かに動揺しながらも先程の自分の力に喜びを感じていた。マサトとの勝負をきっかけに自分の手に入れた新たな力に・・・・・・。


 「これで俺は・・ミサキをまだ守ることができる」


 しかし、先程の個性魔法を発動させ、そして身に着けた新たな力は今の自分ではまだ完全なコントロールが出来てはいなかった。ひとまず今の自分の課題は新たに手に入れた力の制御を完全に出来る様になる事である。

 考えをまとめると、タクミも訓練場を後にした。






 その頃、ある廃墟では複数の人間が集まり、怪しげな会議をしていた。

 集まっている者達の人数は全部で四人、そして全員が黒装束を身にまとっていた。

 その中の一人が他の一人へとある質問をした。声色から男性の様で、この男がこの集団のリーダーを務めていた。


 「おい、黒川ミサキの様子は現在どうだ?」

 「ガードが固いわね・・・・金沢を倒した銀髪の子や親友と思われる友人、特に銀髪の子が登下校の最中傍にいる事が多いわね。それに死んだ金沢の話では転送の指輪とやらも常に着けているみたいだし」

 「めんどくさいわねぇ、直接あの女の家に乗り込んだら?」


 別の黒装束の女がそう言うと、質問をされた黒装束の女がその案を否定する。


 「前にも言ったはずよ・・・・極力関係のない人間には手を出さないようにと・・・・」

 「部外者って訳でもないでしょ。身内なんだからさ」

 「妹はともかく、彼女の両親は魔法使いではないわ」


 二人の女性の言い合いを横で聞いていた最後の黒装束の男はめんどくさそうに言った。


 「やめろって二人共、別にそう急ぐ事でもないだろ。黒川ミサキ自身は気付いていないんだろう、自分の個性の秘密に」

 「とにかく、今はまだ様子を見よう。俺も魔法世界に関係の無い者を巻き込むのは賛成しかねる」


 リーダーの言葉に三人は頷いた。だが、他の二人とは違い、直接乗り込む提案を出していた女は内心不満を洩らしていた。


 「(ほんッとうに甘いはねリーダーは・・・・誰かを襲う以上そんな些細な事を気にしてどうすんのよッ!!)」

 

 こうして四人の黒装束は解散し、それぞれ姿を消した。

 だがその内の一人の不満を洩らしていた女、名は河川レイヤーといい、彼女は会議終了後にある行動を起こそうとしていた。


 「黒川ミサキの取り巻きが邪魔だっていうんなら、先にその取り巻きを殺せばいいんでしょ」


 彼女はミサキの前にある男を始末すべき標的とした。

 その人物は銀色の魔法使い――――久藍タクミであった。

 


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