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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
夏休み 結ばれる二人編
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第二十五話 拳の語り合い

 アタラシス学園には魔法使いとして自己を高めるため第一から第五までの訓練場が存在する。訓練場はAクラスが第一、Bクラスが第二と、Cが三、Dが四、Eが五と振り分けられ、基本的に指定されている訓練場を利用している。

 そして夏休みの最中、指定された日はその訓練場を使用する事が認められている。その訓練場の一つである第一訓練場に一人の生徒がいた。


 「ハアッ!ダリャッ!ハアァァァッ!!!」


 肉体を魔力で強化し、訓練用に作られた対魔法使い用の魔道人形を複数相手し、圧倒しているタクミの姿が在った。

 魔道人形は遠距離から攻撃するがタクミはそれを正面から向かいながら回避し、うち一体の人形を殴り飛ばす。人形はその一撃で機能停止に陥る。

 背後から拳を振るう人形、その攻撃を紙一重で回避し至近距離で魔力を一点集中した魔力弾を腹部に放ち人形を拭き飛ばす。二体目の人形の機能が停止する。

 残り三体の魔道人形が一か所に集まり三対同時による魔力を組み合わせた魔力砲を放つ。

 魔力砲は魔法使いが複数集まり、その魔力を一点集中して放つ技である。大抵の者は三人は人数が必要な魔法であるが――――


 「ハアァァァァァァッ!!」


 タクミはたった一人で魔力砲を放ったのだ。

 両者の攻撃がぶつかり合い、しばしの間拮抗する・・・・だが――――


 「まだまだぁぁぁぁぁッッ!!」


 タクミの放つ魔力砲の威力が跳ね上がり、相手の攻撃をどんどん押していく。そのまま攻撃は人形達に向かって行き、ついには人形達を飲み込んでいった。

 タクミの攻撃が止んだ後、その場には機能停止した人形達が倒れていた。

 すべての人形を倒した事を確認すると、タクミは大きく息を吐いた。




 一通りの自主訓練が終わった後、近くに設置されている自販機でスポーツ飲料を買い、訓練場に設置されているベンチに座り、スポーツ飲料を飲み喉を潤すタクミ。

 彼が夏休みにこの訓練場を利用しているのには理由があった。・・・・それはミサキのためであった、そのために彼は今以上の力を身に着けようとしているのだ。

 ミサキに対する襲撃は金沢の一件以降は特になかったが、まだ狙われている可能性は拭い切れない。金沢の死に様、あれは自殺か第三者か・・・・第三者ならばまだ敵となる存在が居るという事となる。

 タクミがそんな事を考えていると、訓練場に他の人間がやって来た。


 「(ん、あれは・・・・)」

 「あれ、お前も来ていたのか?」


 訓練場に新たにやって来たのは同じクラスのマサトであった。

 彼はタクミの姿を確認すると近くまでやって来てベンチに座る。

 

 「夏休みにわざわざ訓練場に来る奴が他にもいたなんてな」

 「ふっ、同じく」


 そんな風に軽口を言い合う二人、するとマサトからある提案が出された。

 マサトはタクミを見ながら挑戦的な顔でタクミに言った。


 「丁度いいや久藍、良かったら俺とやり合ってみないか?」

 「ん、勝負しろって事か?」

 「ああ、一人でやるよりもいい訓練になるんじゃねえか?それに、前の決闘を見てから一度やり合ってみたいと思っていたんだよ・・・・」

 「・・・・いいぞ、俺も人形相手じゃ物足りなかったんだ」

 「決まりだな」


 その場を立ち上がり二人は訓練場の中心地まで歩いて行く。

 タクミ対マサト、彼らの戦いが今始まろうとしていた。




 訓練場で向かい合う二人の男、その体からは魔力が力強く溢れ出していた。

 二人が同時に構える・・・・・・そして――――


 ――ドオォォォンッ!――


 戦闘前は距離を取っていたはずの二人が一瞬で接近し、拳をぶつけ合っていた。二人は拳を引き再びぶつけ合う!!


 ――ドゴオォォォォォォォッッ!!――


 先程よりも大きな拳の衝突音が訓練場に響き渡る。

 たった二発の拳のやり取りであったが、この時二人は相手の力量を瞬時に悟った。


 「(分かっちゃいたが、やっぱり重い!!へっ、やっぱり強ええな!!)」


 内心でタクミに賞賛を送るマサトであったが、タクミにも同様の想いがあった。


 「(コイツの拳、以前の決闘でやりあった小林って二年よりも強力だ!やるなッ!!)」


 自分が過去にこの学園で倒した小林ケント以上である事を理解し、その強さに笑みを浮かべる。

 そして、次の攻撃では二人は拳を高速で無数に放ち、ぶつけ合った。


 「オオォォォォォォォォッ!!」

 「ウラアァァァァァァァッ!!」






 第三訓練場では一人の生徒が訓練を終えていた。

 Cクラス、桜田ヒビキである。

 彼の使用した訓練場は所々が凍りつき、辺りには大量の氷の破片と無残に破壊された魔道人形が大量に散らばっていた。


 「フン・・・・・・」


 訓練場を出て行こうとするヒビキだったが、別の訓練場から強力な魔力の衝突を感知した。

 その魔力のぶつかり合う衝突に僅かに反応するヒビキ。だが一瞬立ち止まった後、すぐに歩みを進め訓練場を後にした。


 その時、彼の口元には微かな笑みが浮かんでいた。






 第一訓練場での戦闘は苛烈さを増していた。

 二人は肉体を極限まで強化し、高速で訓練場を縦横無尽に駆け回り、激しくぶつかり合っていた。

 二人の拳が訓練場中心地でぶつかった。そしてマサトはタクミの拳を空いている手で掴み、上空へと体ごと放り出し、さらに魔力弾の追撃を加える。


 「喰らえぇッ!!」


 魔力を集約した巨大な弾丸はタクミへと一直線に向かって行く。しかしタクミは右腕に魔力を集中し、迫りくる弾丸を強烈な一撃において殴り飛ばす!


 「だあぁぁぁぁぁッ!!」

 ――ドゴォオンッ!!――


 殴り飛ばした弾丸の軌道はマサトに一直線だ。

 マサトはその場を飛びのき攻撃を回避するが、タクミは地面に降りると同時に地面を全力で蹴りマサトに向かって行く。

 

 「くッ!?」


 高速で迫るタクミに拳を振るうマサト、だがタクミはそれを回避。

 逆に左頬の辺りに拳を突き刺した。


 ――ガスゥッ!!――

 「チィッ!!」


 僅かに後退してしまうマサト、追撃を加えんと距離を詰めるタクミ。

 だが、すぐさまマサトは体制を立て直し迎え撃って来た。


 ――ドゴォオンッッ!!――

 「ぐっ・・・・!」

 「ぎっ・・・・!」


 両者の頬に強烈な拳がそれぞれ綺麗に入った。

 二人は一瞬よろけ、跳躍し互いに距離を取る。

 二人の顔には笑みが浮かんでいた。それはこの勝負に対し、目の前の相手の強さに対し歓喜しているからだ。互いの持つ力を全力でぶつけ合うという行為、これが二人のこの勝負に対する喜びを与えていた。

 そして、二人の魔力が同時に更なる高まりを見せる!!


 「「オオォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!」」


 二人の雄は巨大な方向を上げながら再びぶつかり合った。






 訓練場を出て、学園の玄関を出たヒビキは、一度振り返り外から学園に目を向ける。

 先程感じた魔力の衝突、両者共に力強さを感じる良い魔力だった。

 ヒビキはまたも小さく笑みを浮かべる。


 「どうやら、俺が思っている以上に一年生にもおもしろそうな連中はそこそこいるようだ」


 そう言って彼は学園の校門から出て行った。そのさい、彼は小さく呟いた。


 「楽しみだな・・・・夏休み明けが・・・・・・」


 アタラシス学園では夏休みが明けた後、学園であるイベントが行われるのだが、それはもう少し後の事である。

 学園の方からは、二つの巨大な魔力が今もぶつかり合っていた・・・・・・。 



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