第二十二話 真夏のプール
レジャー施設として建設された巨大プール場、〝アクアセブンランド〟。
その名の通り、巨大な七つの種類のプールが存在する娯楽施設である。その入り口の前では一人の男子生徒がやって来た。
「ミサキ達はまだ、だな・・」
今日ここで一緒に遊ぶ約束をしていたタクミである。
待ち合わせ場所に指定していた入り口にはミサキたちがまだ来ていない事を確認すると、入り口の付近で彼女たちを待つ。
外壁に背を預け、ミサキたちが近くに来ているか探す。
「ねえ、あの子いいんじゃない」
「銀髪イケメン、よっしゃ、声かけてみよ」
近くでタクミの事を見ていた二人組の女性。見たところタクミと歳も余り変わらないようだ。
「ねえ、キミキミ!」
「えっ?」
目を向けるとそこには二人組の女性が居た。
一人は茶髪の短髪の女子、もう一人は黒髪の長髪の女性。
二人共ラフな格好をしており、露出の少し高い服装であった。
「え~と、何か用ですか?」
「キミさ、良かったら私たちと遊ばない?私たちさぁ、本当は男友達も来る予定だったんだけど急に来られなくなったんだ。別に代わりって訳じゃないけど、どうかな?」
嘘である、彼女たちは男友達と約束などしていない。
入り口で気に入った男を見つけ一緒に遊ぼうとここで張っていた・・・・つまりいわゆる逆ナンをするためである。
しかしタクミはそんな誘いには乗らず断る。
「悪いですけど友達と待ち合わせしてて・・」
「ごめーん、お待たせ!!」
「おっ、レン!」
タクミの姿を見つけ声を掛けて来たのは約束をしていたレンであった。隣にはミサキの姿も在る。
「あらら、先約いたの、仕方ないわね・・・・」
ミサキとレンの姿を見てナンパして来た二人組は身を引いた。
その事にそっと安堵の息を吐くタクミ。
「誰、今の二人?」
「いやさ、突然絡んできてな。助かったよ二人共」
二人に礼を言うタクミだったが、ふと見るとミサキが不満げな顔で自分の事を見ていた。
「タクミ君、なんだか少し嬉しそうじゃなかった?」
「ばっ、そんな事ないって!!」
「ふ~ん、そう・・」
なんだかいつもと違いミサキの態度が冷たい事に疑問を感じるタクミ。
ミサキはどこか不貞腐れたまま先に入場して行く。その後ろ姿を困った様に見つめるタクミ。
親友のそんな姿にレンも驚いていた。
「どうしたんだ、ミサキのヤツ?」
「(へ~、ミサキが嫉妬するなんて・・何気に初めてかも)」
二人もミサキに続き入園する。
中に入るとプール場は賑わっており、皆が楽しそうに満喫していた。
三人は更衣室まで移動し、そこで一旦タクミとミサキたちが別れる。
「じゃあ二人共、また後でな」
「うん」
「あ~い」
女子更衣室に移動して着替え始める二人だが、隣にいたレンがミサキの胸を見て言った。
「あららミサキさん、また少し大きくなった?」
「えっ、ん~少し、そうかな」
「ふ~ん」
――むにょん――
「ふひゃあっ!?」
大きな声を上げるミサキ。
彼女の豊満な胸をレンが横から突っついたのだ。その柔らかな感触にレンは衝撃を受けた!
「すごいなぁ~、大きいだけではなくマシュマロ並の柔らかさ。いい物持ってるねえ~」
「レ、レンッ!!貴方ねぇ!!」
親友の取った行動に怒るミサキ。
しかし、レンはそんな彼女にさらに油を注ぐ。
「いーじゃん触る位、タクミ君に触ってもらう前の予行練習だよ♪」
「~~~~~~ッ!?」
顔を真っ赤にしながら声にならない怒りの叫びを上げるミサキ。
「やっぱり男の方が着替えが早いな・・・・」
先に更衣室で着替えを済ませ二人を待つタクミ、そして・・・・
「タクミ君、お待たせー!」
レンの元気の良い声が聞こえてきて顔を向けるタクミ。
そこには着替えが終わり水着姿の二人が居た。ミサキは白いフリルのついている水着、レンは髪と同じ赤い水着を着けて立っていた。
「おぉ、二人とも似合っているな」
「え、ほんと。良かったねミサキ」
「う、うん・・・・」
褒められた事に素直に喜ぶレン、そしてミサキは嬉しさと恥ずかしさが入り混じっていた。
ミサキの恥ずかしさを表す表情や仕草に少しドキッとするタクミ。
「(ミサキ恥ずかしがってるのか・・なんか、いいな)」
「(タクミ君が褒めてくれた。う、嬉しいけどやっぱり恥ずかしいな)」
タクミとミサキの様子を見てレンが手を叩いて言った。
「はいはい、見つめ合うのはそこまで。せっかく来たんだからめいっぱい遊ぶよ!!」
「「べ、別に見つめ合ってるわけじゃッ!!!」」
二人が声を揃えてレンに言う。
そんな息のあった二人を見て早くくっつけばいいのに・・・・と思うレン。
そんなやり取りの後、ようやくプールへと三人は向かったのであった。