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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
一学期 銀色の少年編
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第十七話 連続殺人

※今回の話では少し残酷な表現があります。

 深夜の夜の世界、場所はJ地区。

 空に散らばる星や街頭の明かりで僅かな光が照らされた世界。

 その微かな光が降り注ぐ夜の街を一人の女性が必死で走っていた。

 

 「ハアッ、ハアッ!!」


 女性は汗だくになりながら必死で走っていた。

 まるで〝何か〟から逃げている様に。


 「(誰か!誰かッ!!)」


 女性が走っている場所の周囲には人の姿はなく、民家も確認できなかった。女性の自宅は、ここから数キロ離れた場所に住宅街があり、そこに建設されているマンションに住んでいた。

 しかし家に帰る以上に彼女は今、人が居る場所を目指していた。


 「はあ、はあ、・・・・んっ、はあ、はあ・・」


 彼女は一度立ち止まり、息を整えようとする。

 乱れた息を整えながら背後を振り返る女性。そこにはただ暗闇が広がっていた。


 「お、追ってこない・・・・撒いたかしら?」


 彼女は現在、〝何か〟から逃げていたのだ。しかし、自分がその〝何か〟から逃げきれたかと思うと安堵の息を吐いた。

 

 「よかった。とにかく人の居る場所まで・・・・」


 ――グルルルルルルッ――


 「ひいっ!!?」


 獣のうめき声が女性の耳に響き、悲鳴を漏らす女性。

 うめき声が聞こえて来たのは女性が逃げて来た方向とは反対、自分の進路先から聞こえて来た。

 ごくりと唾を飲み込み目を凝らす女性。その瞬間であった。


 ――ガアアアアアアッ!!――


 〝何か〟が前方の暗闇から姿を現し、女性へと走って来た。



 ――いやぁぁぁぁぁぁっっ!!!!――


 

 女性の悲鳴が暗闇の世界に響き渡った。




 翌日、女性が居た現場には魔法警察官が大勢集まっていた。

 昨夜の女性もその場に居た・・・・変わり果てた姿で。

 女性は下半身から上、上半身が無くなっていた。亡くなった女性の遺体の断面からは臓器が溢れ、道路に散らばっていた。

 すると、一人の女性が新たに事件現場にやって来た。


 「すまない、待たせてしまったか?」

 「おおアヤネ刑事、来たか」


 現れた女性は魔法警察の刑事である星川アヤネという女性であった。スタイルがよく、凛々しさを感じさせる女性だ。


 「・・・・害者は?」

 「絵美里カミと呼ばれる24歳のOLだ。見ての通り、遺体は上半身上がバラけている。これは、刃物で切断というよりも、まるで食いちぎられた様に見えるのだが・・・・」

 「・・・・遺体の上半身は?」


 アヤネの言葉に同僚が首を横に振る。


 「彼女の上半身は見当たらなかった。今も部下が捜索しているが」


 同僚の言葉にアヤネが一つの可能性を導き出す。


 「食われたのかもな、犯人に」

 「・・・・お前もそう思うか」

 「ああ、これは人と言うよりも魔物の様な者に食い殺されたという感じだ。遺体の断面から見てもそう感じる」


 無残な遺体に目を向けるアヤネ。


 「これで、三件目だな・・・・」


 アヤネは苦々しい顔で、被害者の亡骸を見ながら言った。




 アタラシス学園では、昨夜、J地区で起こった事件についての話題がちらほら上がっていた。

 六月に入ってから三週間。その間に悲惨な事件が同じ地区内で三度も起こっていた。

 若い女性が惨殺されるという惨たらしい事件だ。

 この事件の共通点は、被害者が全員若い女性であるという事だ。

 ニュースや新聞でも連続猟奇殺人事件として扱われ、魔法警察が現在も必死で犯人捜索に走っていた。

 



 「おっかないよね~」


 アタラシス学園では、レンがこの事件についてミサキとタクミの三人で話し合っていた。

 

 「ニュースでも何度も報道しているし、犯人も未だに手がかりすら見つけられず・・・・物騒だよね」

 「ああ、しかも若い女性ばかり狙われている」


 タクミのその一言にレンが真剣な顔をする。


 「ねえ、これってまさかさ・・ミサキを狙った犯人と同じなのかな。新聞では遺体はまるで魔物に襲われた様に損傷していたらしいし」


 レンの不安は魔物を使った犯行ではないか、そこにあった。

 自分の親友は何者かに襲われ、その際に魔物を利用していたため、レンは同一犯ではないかと思っているのだ。

 しかし、金沢の一件を知っている二人はそうは思わず、この事件は別の人間の犯行だと思っていた。


 「(ミサキ、金沢の事はいい加減レンにも教えないか。レンだって無関係じゃないし)」

 「(うん、そうだね。なんだかいつまでも黙っているのも悪いし)」


 ミサキから許可をもらうと、タクミはレンに金沢の一件を話す事にした。


 「なあレン、少し話があるんだが」

 「えっ、何?」


 タクミはレンに、金沢との一件の出来事を話した。


 「そっか、そんな事が・・・・」

 「黙っていてごめんねレン」


 申し訳なさそうな顔で謝罪するミサキ。

 しかし、レンは首を横に振って言った。


 「謝る必要ないよ。でも、それならミサキはもう安全ってこと?」

 「いや、まだ断定はできない。金沢の死、これが自殺か第三者の仕業か分からないからな」

 「・・・・、ミサキ、大丈夫?」


 不安そうな顔を向けるレン。そんな彼女を安心させようと笑顔で答えるミサキ。

 

 「大丈夫、花木先生から新しい指輪を貰ったし、それに、最近はタクミ君が送ってくれるから」


 ミサキが未だに狙われている可能性があるため、ここ最近ではタクミが登校や下校の際に警護を兼ねて一緒に居る事が多く、ミサキも以前よりも安心感を抱いていた。


 「・・・・そっか」


 ミサキのその言葉にレンはタクミに対して心の中で呟く。


 「(ねえタクミ君、ミサキを守っているのは友人だから?それとも・・・・)」




 一年Bクラス、そこではシグレが難しい表情をして携帯を眺めていた。携帯を使い、あるニュースを見ているのだ。

 そんなシグレにトコトコと白猫が近づいてきた。

 

 「ん、どうしたのシグレ?変な顔してる」

 「・・変な顔とは失礼な」


 シグレに声を掛けた生徒はタクミと同じく転校生としてやって来た星野カケルであった。

 彼は相変わらず猫を連想させる格好をしている。


 「最近、猟奇的殺人が立続けに発生している。場所は私たちの居るE地区から離れているJ地区ではあるが、この辺りにもこの犯人が来ないとは限らんからな。犯人は未だに捜索中らしいし・・」

 「ん、犯人捜しするの?」

 

 カケルの言葉にシグレは首を横に振るう。


 「いや、さすがにここまで離れた場所の事件にまで絡むわけにはいかん。(それに、風紀委員長にも釘を刺されているしな)」

 「そう」


 短く一言で返すカケル。シグレは彼と会話しながらもこの事件について一つの疑問点があった。


 「(しかし何故犠牲者は皆、若い女性なのだ?)」




 J地区――――

 そこでは一人の青年が誰も居ない路地裏で何かを食べていた。

 

 「くちゃ・・くちゃ・・」


 いや、誰も居ないというのは少し誤りがあるかもしれない。

 そこには青年以外にもう一人若い女性がいた。

 そして―――


 

 その女性は青年に〝喰われていた〟。



 青年の口回りには赤い液体が付着している。それは間違ってもケチャップなどと、可愛らしい物ではないだろう。


 「・・・・おいしい」


 口元に邪悪な笑みを浮かべながら少年は呟いた。

 その後青年は食べかけの女性の遺体を路地裏のゴミ箱の中に入れ、口の血を拭いその場を立ち去った。




 路地裏を出て、人通りの多い場所を歩く青年。

 周りの人間は全員考えもしないだろう。この青年が先程、人間を食べていたなどと。


 「(このJ地区でこれ以上の食事はやめた方がいいな。警察がそろそろ嗅ぎ付けそうだ)」

 

 青年は近くのベンチに腰を下ろした。

 そして、ポケットから地図を取り出す。

 

 「(次はF地区・・・・いや、もう少し離れたE地区にしようっと)」


 青年はポケットに地図をしまい歩き出す。

 次の狩場、E地区へと・・・・。

 


 

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