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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
一学期 銀色の少年編
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第十五話 勉強会

 もうすぐ春が明け、季節は夏に移り変わる五月の中頃。

 アタラシス学園の生徒達は心なしか浮かない顔をしている生徒が増えていた。その理由はもうすぐ学園で行われる一つの出来事にあった。

 

 「はぁ~~っ」


 休み時間、ため息を吐きながら机にだれるレン。普段の彼女から想像できない姿だ。

 そんな姿を見て苦笑するミサキ。


 「レン、いつもの元気はどうしたの?」

 「そんな事いっても、もうすぐ〝アレ〟があるんだよ」

 「大げさだなぁ、もう」


 何故彼女はここまで弱り切っているのか、それは全学年が行うあるものが原因だ。


 「もうすぐ、あれが始まる・・・・!」


 レンのいうあれ・・・・・・それは――――


 「もうすぐ、中間テストがあるんだよ!!」


 学園の中間テストであった。




 アタラシス学園では一学期、七月の夏休みが始まるまで中間、期末の二大テストがある。レンが頭を抱えていたのはこのテストが原因である。

 失礼な話、レンは成績が余りよろしくない。

 小テストでもいい点数を取れる事も少なく、今回の中間テストでも自信がなかった。


 「ど~しよ~」

 「もう、ちゃんと勉強しないからそうなるんだよ」

 「勉強しようとはしてたんだよ。ただ・・・・ダメだと分かっていてもついつい他の事に意識が持っていかれてさー」


 レンも一応勉強しようとはしていたのだ。しかし、勉強に集中できずついつい他の事に手を伸ばしてしまったのだ。

 そして、頭を抱えているのは一人ではなかった。


 「あ~、やばいな」


 ミサキと同じよう自分の席で唸るタクミ。彼もまたもうすぐ始まるテストで気が重くなっていたのだ。

 そんな様子を見てミサキがタクミに尋ねた。


 「あはは、タクミ君もテストが原因かな?」

 「ああ、俺は数学が少しな。計算は苦手でな・・・・他の教科なら平均点は取れると思うけど」

 「久藍は数学か、俺は歴史と英語が少しまずいんだよな」

 「津田」


 タクミ達の会話を聞いていたマサトも入って来て自分もテストで不安要素がある事を話す。

 テストで不安を抱える者同士、ミサキ以外の三人が揃ってため息を吐く。


 「はあ・・・・落ち込んでる場合じゃないよな・・・・家に帰ったら勉強だ。テストまで二日しかないし」


 赤点を回避するため残り二日、必死で勉強するしかないと思うタクミ。

 しかし、レンはまた自分の集中が切れ、他の事に意識を持っていって勉強をほとんどしない恐れがあると自分で思った。分かっていても嫌いな勉強に集中する自信がないのだ。自分の事を見張ってくれる人でもいれば違うだろうが。


 「あっそうだ!」


 その時、レンに一つの案が浮かんだ。


 「ミサキ、お願い!今日アンタの家で勉強教えて!解らないところも教えてほしいし、一人でやるよりも絶対にはかどるから!!」

 「私の家で・・・・別にいいけど」

 「あっミサキ、俺もいいか」

 「えっ、タクミ君も!」

 「ああ、数学で解らないところとか教えてほしいし、だめか?」

 「えっ、ううん!全然いいよ!」


 自分の想い人が自宅に来るとゆう事態に少し焦るミサキ。もちろん嫌ではないがいきなりの展開に少し動揺してしまう。

 

 「一緒に勉強か。俺もメイに勉強見てもらおうかな。あいつ俺と違って頭良いし」


 そう言うとマサトはメイの席まで行き頼み込む。

 メイはミサキと同じような反応を取りながら、マサトの頼みを了承した。

 その際、メイの頬は赤く染まっていた。


 こうして、二日後の中間テストに向け、各々が勉強会の開催を決定したのだった。




 「うん、それで友達が二人来るの」


 ミサキは自宅に向かいながら電話で友達が来る事を報告していた。

 タクミとレンは後ろからミサキのそんな姿を見ながら会話をしていた。

 

 「そういえば、同級生の女の子の家に入るのってこれが初めてかも」

 「え、そうなの。タクミ君かっこいいし色々女の子達からお誘いがあったと思ったんだけど。中学時代とかけっこー遊んだんじゃない?」

 「お前・・・・俺をどんな奴だと思ってんだよ」


 レンの事をジト目で見るタクミ。

 そうこうしている内にミサキの家へと到着するタクミ達。

 ミサキが扉を開け、二人を家の中へと招く。


 「二人共入って」

 「「お邪魔します」」


 ミサキに続いて家の中へと入る二人。すると玄関にミサキの母親が出迎えてくれた。


 「あらいらっしゃい、二人共。ミサキから話は聞いてるわ」

 「あ、おばさん久しぶり」


 レンは顔見知りのため普通に挨拶をしていたが、タクミはミサキの母親の姿を見て思わずこう思った。


 「(は、母親?、お姉さんじゃないのか?)」


 タクミがそう思うのも無理はないだろう。彼女の姿は二十台の前半、あるいは後半位に思える程に若々しい見た目をしているのだ。

 そんな事を思っていると、彼女はタクミに笑顔で挨拶をした。


 「貴方が久藍君ね、ミサキから話は聞いているわ。私はミサキの母の黒川モエよ。よろしくね」


 優しそうな笑顔で挨拶をするモエ。

 慌てて挨拶を返すタクミ。


 「く、久藍タクミといいます。こちらこそよろしくです」

 「礼儀正しくていい子ね。ミサキもすみにおけないわね♪」

 「もう、お母さん!二人共、私の部屋に早く行こう!」


 モエの軽い冗談に反応し、すぐに自分の部屋に案内しようとするミサキ。

 タクミとレンも軽く会釈し、ミサキについて行った。

 

 「じゃあ二人共入って」


 ミサキに促され部屋へと足を踏み入れる二人。

 レンは何度も来た事があるため特に何も感じはしなかったが、タクミは違う。自分と同じ歳の異性の部屋に初めて入った事で内心は緊張していた。


 「(なんか・・・・いい匂いがする。少し甘い香りだ)」


 部屋の中は女性特有のホルモンから発せられる甘い匂いが充満していた。その香りにタクミの緊張が高まった。

 

 「(うぅ、これが女の子の部屋なのか?)」

 「タクミ君?」

 「!?」


 意識が完全にミサキ達から離れていたため、急に声を掛けられた事に僅かに驚くタクミ。

 ミサキは不思議そうな顔をしてタクミを見ていた。


 「どうしたの?タクミ君、なんだか様子が・・・・」

 「いやいやなんでもない!それよりさ、早く勉強を開始しようぜ!そのために集まったんだし!」

 「う、うん」


 少し不思議に思いながらも準備を始めるミサキ。

 隣ではレンがにやにやしていた。


 「(くっ、レンの奴、楽しそうにしやがって!!)」


 レンの顔を見て、彼女が自分の反応を面白がっている事に少し恥じらうタクミ。

 そんな出来事の後、三人はようやく勉強を開始した。




 勉強を開始して三十分経過・・・・

 その中で一人、唸り声を出している者がいた。


 「うぅ~~、そろそろ集中切れそう・・」

 「もうレン、貴方から言い出したのよ。みんなで勉強しようって」

 「そーだけどさー」


 最初は静かに勉強していたレンであったが、時間がたつにつれて集中力が低下していった。

 すると、タクミが二人に提案する。


 「一旦休憩にするか?」

 「う~~ん、じゃあ少しだけ休憩にしようか」


 タクミの案にミサキも賛成する。

 すると、今まで項垂れていたレンは急に元気になる。


 「あ、じゃあミサキさん、ジュースでも出してくれませんか」

 「も~~、はいはい」


 不満の声を出しながらも、立ち上がり台所から飲み物を取りに行こうとするミサキ。

 

 「じゃあちょっと飲み物取って来るね」

 「おねがいしまーす」

 「ああ、ありがとう」


 部屋を出るミサキ、残される二人。

 すると、レンがタクミに話しかける。


 「ねえ、タクミ君・・・・」

 「ん?」

 「ちょっとさ、聞きたい事があるんだけど・・・・いい?」

 「なんだ?」


 自分に何を聞くんだろうと思いながらレンの方に顔を向けるタクミ。そして、レンの顔を見て僅かに驚いた。

 先程までとは違い、レンの顔は真剣なものとなっていたのだ。


 「あのさ、タクミ君――――」


 レンは気になっていた〝ある質問〟をタクミへと投げかけた。





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