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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
一学期 銀色の少年編
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第十一話 全てを消す力

主人公が2話続けて出てきませんでした。

 「ぐ・・・・、粘液が、消えた?」


 自分を包んでいた粘液が消え去り、自由の身になるシグレ。辺りに散らばっていた粘液も全てきれいさっぱり無くなっていた。


 「お前、何をした!?」


 自分の個性の力が突如として消えた事に白猫へ喚く念斗。

 白猫はすまし顔で平然と言った。


 「別に、消しただけ」


 そう言う白猫からは魔力を感じ取る事が出来た。しかも、その魔力の質は個性使いの者だった。


 「お前も魔法使いか。しかも個性が使えるとは」


 思わぬ邪魔に苛立ちながらそう言う念斗。

 白猫に意識が向いている間に切りかかろうと試みるシグレだが、急速に魔力を吸い取られた事で思う様に体が動かなかった。


 「(クソ、まだ体が・・)」

 「消えろぉぉぉぉぉッ!!」


 大量の粘液の弾幕を白猫へと向かい展開する。しかし、白猫は落ち着いて手をかざし、かざされた手から白い光が溢れ出す。


 ――ボシュゥゥゥッ――


 攻撃が届く前に念斗の攻撃は消えていく。


 「ぐ、くそ」

 「・・・・≪ホワイトライト≫、低級な攻撃なら届く前に打ち消せる」

 「て、低級!?」


 自分の個性が軽く見られた事に怒りを表す念斗。しかし白猫は気にする事なく淡々と答える。


 「見たところ魔力を吸収するのは厄介だけど、攻撃力事態は全然だから」

 「そうか・・・・だったらッ!!」


 念斗の右腕に大量の魔力が集中する。それを感じたシグレが叫ぶ。


 「まずい、逃げろ!大技が来るぞッ!!」


 しかし、結界で覆われ逃げ場などない。勿論シグレとてそんな事は分かっている。しかし、それでも叫ばずにはいられなかった。


 「喰らえッ、粘え・・・・」

 「≪ホワイトライト・angel≫」


 念斗が技を繰り出すよりも一寸早く白猫の技が解き放たれた。

 辺り一面、世界が一瞬にして真っ白に染まった。


 

 その間際、シグレは白猫の背に美しい羽根が生えてる様に見えた。



 「ん・・・んぅ」


 自分の視界が白一色に染まった後、シグレは意識を少し失っていた。しかし、それもほんの僅かの事。意識は戻り、目を開けるシグレ。その瞳には自分をじっと見ている白猫が映った。


 「ん、起きた?」

 「・・、あぁ・・・・」


 寝ている体を起こすシグレ。すると視界の端に念斗の姿が映った。


 「!、ぐっ!!」


 手元に刀を呼び出すシグレ。しかし、それを白猫が手で制す。


 「大丈夫、気絶してる」


 白猫の言う通り念斗は倒れ、ピクリとも動かなかった。


 「どうする?」


 こくんと首を傾けてシグレに問いかける白猫。

 シグレは刀を消し、ポケットから携帯電話を取り出した。




 その後、シグレの通報により駆けつけて来た魔法警察官の手によって念斗は連行されていった。前科がある以上、あの男も終わりだろう。

 後には二人だけが残され、シグレが白猫へ礼を言う。


 「ありがとう、キミのお蔭で助かったよ」

 「ん」


 こくんと頷く白猫。そこでシグレがある事に気づく。


 「ああそういえば、キミの名前を教えてくれないか。恩人の名も知らないというのはちょっとな」

 「・・・・星野、カケル」

 「そうか、改めてありがとう。星野カケル」


 そう言ってシグレは手を差し出す。カケルは少しシグレの手を見つめた後、差し出された手を握り握手をする。


 「ん・・温かい」

 「ふふ、私の手は湯たんぽではないぞ」


 自分の手を握るカケルの姿はなんだか小さな子供の様に見えた。


 「(こんな小さく感じる子が私を救ってくれたとは・・・・)」


 だがそこでシグレは奇妙な事に気づいた。


 「(しかし、何だろう?彼の魔力はどこか違和感が)」


 すると、握手していた手を離し、カケルが言った。


 「ん、じゃあ僕は家に帰っていい?」

 「え・・、ああ、すまなかったな呼び止めて」

 「ん」


 軽く頷くとカケルはそのままどこかへ歩いて行く。彼の自宅の場所はおろか、素性も一切シグレには分からない。

 もう二度度会う事はないのだろうと彼女は思った。


 「不思議な少年だったな・・・・」


 シグレの目に映った白猫の姿はもう豆粒の様に小さくなっていた。




 次の日、シグレは朝早く学園へと登校していた。その理由は風紀委員長、天羽ネネからの呼び出しを受けたからだ。

 会議でいつも利用する空き教室へと入るシグレ。そこにはすでに先客が居た。


 「・・・・来たわね、神保さん」


 腕組をしながら椅子に腰を下ろし、厳しい目でシグレを見ているネネだ。


 「呼び出された理由は、解っているわね?」

 「・・・・はい」

 「昨日、私のクラスの担当教師から電話があってね、風紀委員の一人が件の不審者を捉えたらしいと」

 「・・・・・・」

 

 目を逸らしてしまうシグレ。そんなシグレにネネはため息を吐く。


 「もしかしたらこうなるなると予想はしていたけど・・・・神保さん、何故貴方は〝悪〟というものに強く反応するの?」

 「・・・・・・」

 「まだ知り合って大してたってもいないけど、貴方は悪というモノに少し過敏すぎるわ。勿論、悪というモノを快く思う人間などいないわ。でも、貴方は普通よりも過剰に反応する傾向がある」


 ネネの言葉を聞き、シグレが口を開いた。


 「私が悪を忌み嫌うには理由があります・・・・しかし」


 ネネの目を真っ向から見つめながら次の言葉を続ける。


 「貴方がその理由に興味を持つ必要はない」


 そう言ったシグレの瞳からは光が消えていた。




 ネネから軽い注意を受け、その後自分の教室へと移動したシグレ。

 自分の席でシグレはネネからお説教とは別にこのクラスに関する一つの報告を受けていた。

 

 『神保さん、実は今日貴方のクラスに新しく転校生が来るらしいの』

 『転校生ですか・・・・また急ですね』

 『ええ、それが理由で貴方にも報告が遅れたのよ。中途半端な時期の転校、少し気にかけてあげて』


 「(どんな者が来るんだろうな)」


 内心で微かな興味を抱くシグレ。

 やがて朝のホームルームの時間が近づき、教室の扉が開く。


 「(あれは・・・・)」


 そこでシグレの目に映ったのは、自分のクラスの担当教師と・・・・白猫を模様す改造制服を着た少年だった。



 


次回は主人公が復活します。

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