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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
一学期 銀色の少年編
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第八話 俺がいるから

 「喰らえぇぇぇぇぇッ!!」


 高速で接近してきた金沢が魔力の込めた拳をタクミへと振るう。タクミはその拳を腕をクロスして受け止めたが・・・・


 「ぐっ、重い!!」


 金沢の拳は先程とは比較にならない程に協力なものへと変わっていた。


 「受け止めるか!!ならばッ!!」


 金沢の手からは獣の様な鋭い爪が生えて来る。


 「おいおい、もう人間じゃないぞ・・・・」

 「ガァァァァッッ!!!」


 鋭い爪をタクミへと連続で振るい、タクミを切り裂こうとする金沢。タクミはその攻撃を避け続け、逆に拳を叩き付けていくが金沢はほとんどダメージを受けていなかった。


 「無駄だァッ!オラぁッ!!」


 金沢の蹴りがタクミの腹部へと吸い込まれる様に蹴りこまれる。


 「あぐぅっ!?」

 「タクミ君!!!」

 「こいつもくれてやる!!」


 金沢は大口を開け、口から魔力の塊である光線が発射された。その攻撃はタクミを直撃し、そしてタクミを遥か後ろへと吹き飛ばした。


 「さあ、切り裂いてやる!!」


 タクミに止めを刺そうとする金沢。しかし、そんな金沢の体に炎の弾丸が直撃する。


 「ん~~~~~~?」


 しかし、ダメージは見受けられない。攻撃が来た方向を見てみると、ミサキがこちらに手をかざしていた。


 「た、タクミ君はやらせない!!」


 そう言うとミサキは大量の炎の弾幕を放つ。


 「≪火炎連射弾≫!!」


 金沢に炎の弾が大量に当たる。しかし、金沢は不敵な笑みを浮かべている。


 「ふん・・・・ガァッッッ!!」


 ミサキに向かって思いっきり腕を振りかぶる。その衝撃でミサキの炎は弾かれる。


 「くうっ・・・・!」

 「無駄だ。今の俺にはキカ・・ナイ・・!?」

 「え・・・・?」


 突然金沢の声が普段のものとは違う低くいものになる。そして・・・・


 「うぐぅ~~~~~!?」


 頭を押さえ、苦しみ出し始めた。


 「(くそ・・・・やはり魔物を長時間体内に入れておくのは危険すぎる・・・・早くかたを付けないと・・飲み込まれる)」


 金沢は体内で暴れる魔力を押さえつけ、無理やり沈める。


 「ふう・・・・・・」

 「ハアァァァァッッ!!」


 金沢が油断した一瞬の際、すぐ傍までタクミは接近し、横腹に蹴りを叩き入れる。


 「グァッッ!!」


 先程とは逆に、今度は金沢が吹き飛ぶ。金沢は空中で一回転し地面に華麗に着地する。


 「大丈夫かミサキ!!」

 「う、うん。タクミ君の方こそ・・・・」


 自分の事を心配そうな顔で見ているミサキを落ち着かせる為にタクミは笑って「大丈夫だ」と答える。


 「フフフ・・・・タフな奴だな。だが久藍、何故お前がそこまでする必要がある」

 「はあ?」

 「俺の狙いはそこの黒川だ。お前の事など正直どうでもいいんだよ」


 金沢の言葉にタクミは呆れた様な顔をしてため息を吐いた。


 「友達を助けるのに小難しい理由がいるのかよ」

 「タクミ君・・・・」


 タクミのその言葉に金沢は大笑いをする。


 「ハハハハハハハハッッッ!!!!」


 聴いているだけで不快になる笑い声にタクミが顔をしかめる。


 「今時こんな奴がいるとはな!お前の様な馬鹿な男は珍しいぜ!!」

 「好きに言え」


 再び構えるタクミ。すると、金沢がニヤニヤしながら言った言葉にミサキが凍りついた。


 「そこの黒川の姉の様な奴がまだ居たんだなぁ~」

 「へ・・・・・・」


 ミサキの間の抜けた声に反応し、金沢が続けて言う。


 「黒川の姉もお前みたいな奴だったよ。他人の為に自分を犠牲にする。損な性格だよな」

 「なんでミサキの姉さんが出て来る?」


 タクミの疑問に金沢は答えた。


 「アイツは俺のクラスの生徒だったからな。あんな馬鹿は珍しいから印象に残っている」

 「お姉ちゃんは馬鹿じゃないッ!!」


 自分の大切な家族を侮辱された事に激高するミサキ。そんなミサキを見て金沢が下衆な笑みを張り付けながら言った。


 「そうか~?この現実世界で他人を優先する奴が愚かではないと?」

 「私はそう思っている!だからこそ、お姉ちゃんを尊敬できた!!」

 「だがもう死人だ。正しく生きていたにもかかわらず若くして死んでいった。この女の生き様は俺からすれば愚か者一点だ。久藍、お前もそんな惨めな最期を迎えることになるぜ。ハハハハハッッッ!!」


 金沢の言葉にミサキは奥歯を噛み締めながら金沢を睨む。悔しかった、こんな男に自分の大好きな姉を侮辱された事が。

 響き渡る金沢の笑い声にミサキが拳を強く握っていると、突然隣から凄まじい魔力を感じた。

 金沢も笑うのを辞め、目を向ける。

 二人の視線の先には凄まじい魔力を放っている銀色の少年が映った。その顔には明らかな怒りが浮かんでいる。


 「・・・・何がおかしいんだよ」


 タクミの声は決して大きいものではないが、二人の耳にはっきりと聞こえてくる。


 「すごい人じゃないか。誰かの為に必死になれるなんて・・・・憧れそうだよ」

 「な、何!?」


 タクミのどんどん上昇する魔力に怯みながら金沢が僅かに後ずさる。


 「それを・・・・人の命を平然と奪うお前なんぞに笑う資格があるのか?」


 すると、タクミの魔力が変化を表す。その反応に金沢が驚きを露わにして叫んだ。


 「こ、この魔力!まさかお前も、こ、個性使いだったのかッ!?」


 すると、タクミから黄金の光が放たれ、周囲を黄金一色で包み込んだ。


 「キャッ!?」

 「うおっ!?」


 余りにも眩いその光に二人は目を閉ざした。




 「これは・・・・凄まじい魔力ね」


 戦いの行方を見ていた黒装束の女が呟く。


 「これほどの魔法使いが学生、それも1年生から放たれているなんてね・・・・」


 すると、女は金沢に目を向けながら呟いた。


 「これは・・・・あの男では無理ね」


 そう言って彼女は哀れなモノを見るかの様に、金沢に視線を移した。




 光が収まると、そこには黄金に輝くオーラを纏っているタクミの姿が在った。そこから感じる魔力は金沢を遥かに上回っている。


 「ば、馬鹿なッ!こんな事が・・・・!!」

 「す、すごい・・・・」


 驚愕する金沢とミサキ。金沢の方はその圧倒的な強さの余り、内心では恐怖が沸き上がっていく。


 「いくぞ、金沢」


 超高速で金沢へと向かっていくタクミ。金沢はなんとか対応しようとするが――――


 ――バキィッッ!!――


 早すぎる余り、対応できずにモロに拳が顔面へと入る。


 「(お、重い!さっきまでとは別人じゃねえか!?)」

 「うらららららららららッ!!!!」


 流れるように次々とタクミの拳が、蹴りが、攻撃が入っていく。


 「ぐあぁぁぁぁぁぁ!?」


 その連続攻撃を浴び続け、金沢が苦悶の声を上げる。


 「だりゃッ!!」

 ――ガシィッ!!――


 眉間にタクミの拳が突き刺さり、意識が一瞬飛ぶ金沢。その時、金沢の魔力が体内で暴走を始めた。


 「うごぉぉ!?」


 体内の魔力が突然暴れ出し、金沢の意識が段々と薄れ始める。


 「(や、やば・・い、魔物の魔力が暴走を、ぐっ・・・・制御・・でき・・な・・・・い)」


 この瞬間、金沢の意識は闇の中へと消えていく。そして・・・・


 「グオオオオオオオオオオオッッ!!!!」


 魔物の本能だけが肉体を動かした。


 「・・・・暴走しているのか」


 白目を剥きながら吠える金沢。タクミはそんな金沢を睨み、魔力を更に高める。

 そして、静かに金沢という名の魔物に告げる。


 「来い、魔物」

 「ウガアアアアアアアッッ!!」


 何も考えずに突っ込んでくる魔物にタクミが拳を構え、技を打つ。


 「≪金色百裂神拳≫!!!!」

 ――バキィッ!!――


 一撃目が魔物の頬へと突き刺さる。しかし、タクミの拳は止まらない。


 「オオオオオオオオオッッ!!」


 二撃、三撃、四撃、次々と強烈な拳が魔物の体へ叩き込まれていく。一撃一撃の余りの重さに魔物は吐血しながら後ろへと押されていく。そして――――


 「これが最後だぁぁぁぁッ!!」

 ――ドズゥゥゥゥゥッッッ!!!――


 最後の百撃目の拳が決着をつけた。拳を引き抜くと、魔物は地面へと倒れこむ。そして、金沢の姿は元の姿へと戻った。


 「・・・・ふう」


 一息つき、体から発しているオーラを収めるタクミ。すると、ミサキがタクミへと小走りで近づいて来る。


 「タクミ君・・・・」

 「終わったよ、ミサキ」


 タクミのその言葉にミサキはホっとした顔をするが、すぐに悲しそうな顔をする。


 「どうした?」

 「ううん、ただ、お姉ちゃんとの思いで、また色々と思い出しちゃったなって・・・・」

 「すごい人だったんだな。お前の姉さんは・・」


 タクミのその言葉に、ミサキの瞳に涙が浮かぶ。


 「ぐすっ・・・・よかった。お姉ちゃんの事、そう思ってくれる人がいて・・・・」

 「・・・・・・」


 ミサキのそんな今にも悲しみが溢れそうな顔を見て、タクミは思わず優しく頭を撫でた。


 「タクミ君・・・・」


 まるで、割れ物を扱うかの様に、優しく・・・・・・


 「ミサキ、お前の姉さんはもういないけど、レンや他の皆が・・・・・・俺がいるから」

 「!!」

 「ちゃんと、お前を見てるから・・・・」

 「う、わあぁぁぁぁっ!!」


 タクミの胸に顔を埋め、涙を流すミサキ。様々な感情が滝の様にミサキから流れていく。

 タクミは、そんな彼女を優しく撫で続けた。

 森の中に、少女の泣き声が響き渡る。それを、銀色の少年が優しく受け止めた。

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