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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
一学期 銀色の少年編
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第五話 風紀委員

今回は少し短いです。

 タクミが学園に転校してきてはや一週間が経過していた。

 小林との決闘でタクミの名はそこそこ学園中に広まっていた。 そんな噂の彼は現在学校も終わり、家へと足を運んでいた。


 「ん?」


 不意に足を止めるタクミ。彼の前方ではなにやら複数の人間が言い争っていた。うち一人は自分と同じ学園の制服を着ている、青い髪をした少女だった。


 「だからッ、こんな所にたばこの吸い殻や空き缶を捨てるなと言っている!!ここはアタラシス学園の通学路だッ、ごみ箱ならば近くに設置してあるだろう!!」

 「んだとぉッ!!」

 「テメーには関係ねぇだろうがッ!!」


 ガラの悪そうないかにもヤンキーといった容姿の男たちが口汚く反論、否、少女を威圧する。しかし、少女は臆することなく言い返す。


 「貴様らも社会人ならば世間一般のルール位守ったらどうだッ!」

 「(気の強い奴だなぁ~)」


 そんな少女を見ながらタクミがそう思っていると・・・・


 「このアマ、上等だぁッ!!」


 男の一人が少女へと襲い掛かる。


 「ちっ・・」


 さすがに黙っているわけにもいかず、止めに入ろうとするタクミ。しかし、少女は男の手を躱し、逆に腹部に拳を入れる。

 そのままその場に崩れ落ちる男。


 「て、テメェ!?」

 「やりやがったな!!」

 「フン、先に手を出してきたのはコイツだ。文句を言われる筋合いはないぞ」

 「くそ、やっちまえ!!」


 完全に頭に血が上ったヤンキー達は一斉に襲い掛かる。少女はため息を吐きながら魔力を少し開放する。


 「≪換装≫・・・・」


 そう言った少女の手にはいつの間にか竹刀が握られていた。

 そして――――



 

 「フン・・・・愚か者達め・・・・」


 男達は瞬く間に地面に沈められた。

 少女は手から竹刀を消し、倒れたヤンキー達を見下ろす。そこに複数の生徒達がやって来た。


 「神保さん!なにやら揉め事が発生していると聞いたのですが・・・・この状況は?」

 「・・・・学園周辺に陣取り、学園を害する屑共です。こいつらのことは以前から多くの生徒から相談されていましたので」

 「事情は分かりましたが・・・・暴力は・・・・」

 「正当防衛です」


 神保と呼ばれた少女は即答で返す。そんな彼女に周りの皆も少し困り顔をしている。


 「とにかく、風紀委員会の一員である以上単独で問題解決に当たらないように」

 「・・・・了解」






 翌日、タクミはクラスで昨日の出来事をミサキ達に話していた。


 「なんてことが昨日あってさ」

 「ふ~ん、それってたぶん神保シグレっていう子だよ。そこそこ噂になってる子だよ」


 風紀委員、神保シグレ。タクミ達と同じ1年生なのだが、レンは彼女が苦手だった。


 「私も注意されたことがあるんだ。も~うるさかったなぁ」

 「でも、レンが間違った事したんだし」


 ミサキの言葉にレンが頬を膨らませる。


 「空き缶を間違ってペットボトルの所に捨てただけじゃん」

 「いや、一応悪いのはお前だろ」


 呆れ顔で言うタクミ。その言葉にレンの頬はますます膨らんだ。

 

 




 授業が終わり、待ちに待った昼休み。

 今回、タクミは食堂に来ていた。この学園の学食にタクミが行ってみたいということで足を運んだのだ。


 「さ~て、何頼もうかな?」


 メニューを見ながらタクミが選んでいると、不意に誰かと肩がぶつかった。


 「あ、悪い・・・・」

 「いや、こちらこそすまん」


 ぶつかった相手を見ると、それは今朝話題にしていた神保シグレだった。


 「あ・・・・」

 「ん、お前は・・・」




 食堂の丸型テーブルに座り食事をするタクミとシグレ。昼食を取りながら二人は軽く昨日の1件についての雑談をしている。


 「昨日は大変だったな・・・・ああいう輩って今時珍しいだろ」

 「ああ、まったく・・・・困ったものだ。風紀委員の仕事を余計に増やしおって」


 そう言って白米を橋で掴んで口に入れるシグレ。


 「(なるほど)」


 少し話しただけだが、シグレの性格は大よそ分かった。まじめで正義感が強い子だ。


 「(こりゃレンとは合わないな・・)」


 レンが苦手意識を持っていることに思わず納得するタクミ。

 その後、タクミは風紀委員会について質問した。


 「神保も風紀委員なんだよな、結構大変か?」

 「ああ、少しな。だが、苦ではない」

 

 シグレの顔には微かな笑みが浮かんでいる。


 「よりよい学園を創るため、私が自ら望んだ道だからな」


 タクミの質問に口元に笑みを浮かべながら答えるシグレ。しかし、次の言葉を言う際、彼女の顔つきが変わった。


 「それに・・・・ああいう屑を掃除することもできるしな・・・・」

 「・・・・・・・」


 このときタクミは、シグレの中に何か黒いモノがあるように感じた。正義感とは違う何かが・・・・・・






 学園長室では深刻な顔をしたアナハイムとAクラス担任のチユリが居た。チユリは信じられないことをアナハイムから聞き、その顔は驚愕に染まっていた。


 「そ、そんな!では学院長は〝あの人〟が関わっていると!?」

 「動機は不明ですが、魔の森で起こった事件。状況から考えると・・・・もちろん証拠はありませんが」

 「では、学院長は・・・・・・」

 「ええ・・・・」


 チユリの言葉に静かに頷くアナハイム。その顔は険しさに満ち溢れていた。


 「魔の森での魔物の出現は恐らく〝彼〟の仕業です。そして狙いは――――


 ――――黒川ミサキさん――――


 アナハイムの一言に、チユリの表情が凍り付いた。


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