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第百四十八話 突入!


 久藍タクミは現在、ミサキを狙っている新たなる敵を討つために行動を起こしていた。そして、奇妙なことかもしれないが、自分は今はかつて殺し合った敵と共に行動をしている・・・・・電車で・・・・・。


 「まさかお前と電車に乗るなんてな・・・」

 

 タクミは電車内の椅子に座りながらそうぼやく。

 そんな彼の隣では、レイヤーが座って流れる外の景色を眺めている。

 

 「歩いて移動じゃ疲れるし、こっちの方が良いでしょ?」

 「それはそうだが・・・」


 確かに徒歩での移動よりもこちらの方が効率がいいのだろうが、仮にも殺し合いをした二人が並んで電車に乗るなど普通は考えられないと思うのだが・・・・・。


 「それで、F地区の具体的にはどの辺りなんだ。その敵の根城は・・・」

 「F地区の都市部から少し離れた町外れの人気が少ない場所よ。そこに巧妙に隠された敵のアジトがあるわ」

 

 やはり人気の少ない場所に敵は拠点の確保をしているようだ。

 まあ、当然と言えば当然だろう。人口が集中していそうな場所に堂々と拠点の確保を行う訳も無い。


 「そのアジト、どんな外観なんだ?」

 「言ったでしょ、巧妙に隠されているって」


 レイヤーは指で自分の足元を指差す。

 彼女のジェスチャーでタクミはすぐに察した。


 「地下か・・・」

 「そう、モグラみたいに地中に隠れている訳」


 レイヤーは再び外の移り行く景色を眺める。


 「そろそろ着くわね・・・・・」


 レイヤーはそう言うと、席から立ち上がり目の前の吊り革を掴んで立ち上がる。

 彼女に釣られてタクミも席を立った。そしてそれから数分後、電車はF地区内へと入って行った。







 電車を降り、目的地まで移動を開始するタクミとレイヤー。しばらくは人ごみの中を移動していた二人だが、徐々に人気が少ない場所に移動して行っている。

 移動の最中、タクミはレイヤーにずっと気になっていたある事について話しかける。


 「お前、どうしてミサキを庇ってくれているんだ?」

 「どういう意味?」

 

 レイヤーが自分の後ろに付いて来ているタクミにそう返す。


 「敵の狙いはミサキの力だ。お前が今でもミサキを狙っているのならばまだしも、今のお前にとってはミサキは標的でも何でもない」

 「・・・・・」

 「ミサキに関する情報を明け渡せばお前がもう狙われることも無い筈だろう」


 レイヤーにはもうミサキを狙う理由がないのであれば、情報を教えればそれでもう彼女が襲撃を受ける事もなくなるはずだ。だが、彼女はミサキに関する情報を一切敵に与えてはいない。


 これではまるで、レイヤーがミサキを守っているかのようだ。


 「何故だ、レイヤー?」


 タクミが改めて何故かと聞くと、レイヤーは振り返ることなく小さく呟いた。


 「黒川ミサキはともかく、アイツの姉には借りがあるから返しているに過ぎないわ・・・」

 「・・・センナさんか」

 「エクスよ。黒川センナは偽名だってもう黒川ミサキから聞いているんでしょ」

 「俺にとってはミサキのお姉さんだ」


 タクミがそう言うと、レイヤーは小さく「そう」とだけ呟いた。

 

 「・・・・・」


 この時、タクミはレイヤーの中で何かが変化している事を微かにだが感じていた・・・・・。







 「着いたわ・・・」


 中々の長時間の移動の末、ついに目的の場所に辿り着いた二人。

 現在二人は辺りが木々に覆われた自然豊かな場所に居た。そんな場所を改めて見回すタクミ。


 「なるほど。確かにこんな場所に基本人は訪れないな・・・。だが、お前よくこんな場所に敵が潜伏している事を突き止めたな」

 「ああ、それはね――――――」




 今から数日前、レイヤーはE地区の路地裏で一人の男を痛めつけていた。


 「それで、そろそろ吐く気になった?」


 痛めつけられている男は三十代半ばといった中年の男性。

 彼は顔面が腫れ上がり、青あざだらけの痛々しい姿となっている。そんな彼の周りには複数の男が同じく痛めつけられた状態で転がっている。


 「うぐぅ・・・」

 「うぐぅ、じゃなくてさぁ」


 倒れている男の腹部を蹴りつけるレイヤー。


 「うぐっ!」

 「アンタが人形共を使って私を狙う理由を吐きなさいよ」

 「わ、わがっだ・・・」


 男は観念したかのように血濡れの顔をレイヤーに向けて全てを白状する。

 

 男は〝不死鳥の炎〟の情報を持っているレイヤーからその情報を奪う為、彼女に襲撃を掛けていた事を話した。彼女を捕獲し、自分たちのアジトに連れ帰えようとしていたらしい。


 「そう。でも、どうして私がその情報を持っている事を知っている訳?」

 「そ、それは分からない。俺たちはただ、この人形達がアンタを倒した後、アンタをアジトに運ぶように雇われただけで・・・」

 「そう・・・。じゃあまあ、とりあえず知ってる事は全部吐いてもらおうかしら。ゴロツキ君?」




 「どうやら私をアジトに連れていくために人形以外に金目当てのゴロツキも雇っていたみたいでね。ソイツから色々と聞き出したのよ。その後は敵さんも私に情報を与えたくないのか、人形共だけで襲撃をかけて来た訳だけど」

 「成程ね・・・」


 レイヤーが敵の情報を幾つか掴んでいる理由を知り納得をするタクミ。

 

 「ここよ・・・」


 そして、ついにアジトの入口を見つけるレイヤー。

 一面が緑の茂った地面の中、唯一鉄板でできた扉と思しき物が地面に埋め込まれていた。


 「ここか・・・」

 「ええ、他にもアジトがあるみたいだけど、敵さんが居るのはここよ」

 「他にもアジトがある? それなら此処に敵が居るとは限らないんじゃ」

 「言ったでしょ、金目当てで雇われたゴロツキから聞いたって」


 最初は痛めつけた相手は偽のアジトの場所を伝え、そこにレイヤーをおびき出そうとしていた。しかし、彼女もまた闇で生きて来た女。あっさりと漏らした情報がダミーである可能性は考えており、その後も男を痛めつけて全てを吐かせたのだ。

 

 「骨を数本へし折って、歯を数本砕いてようやく全部喋ってくれたわ」

 「おま・・・えぐい事を・・・」

 「あら、おかげで黒川ミサキを狙う相手の所在地を掴めたのよ。文句を言われる筋合いはないと思うけど・・・」

 

 レイヤーが僅かに笑いながらそう言うと、タクミもなにも言えなくなる。

 

 「それに、外道相手にはそれくらいのお仕置きは必要よ」

 「・・・・・」


 お前が外道と言うのか、と内心で思ったタクミであったが、ここで彼女と揉めるわけにもいかない為、無言を貫く。しかし、レイヤーにはそんなタクミの考えなどお見通しであった。


 「何を考えているかお見通しよ。お前が言うなって顔しているわよ」

 「う・・・とにかく行こうぜ」


 そう言うとタクミは右腕に魔力を集中して鉄板制の扉を思いっきり殴りつけた。

 タクミの拳で扉はひしゃげ、地下へと続く入口が開いた。






 

 タクミが扉を破壊したと同時に、その破壊音は地下の最深部に居る一人の男の耳にも届いていた。


 「ん・・・?」


 男は手元のコンピュータをいじり、入り口付近の監視カメラの映像を画面に映した。


 「これは・・・河川レイヤー。遂に直接乗り込んできたか。隣に居る男は奴の仲間か?」


 レイヤーとは違い、タクミに関する情報は持ち合わせていないため、彼の存在に少し疑念を抱く男。


 「まあいい、いずれ直接乗り込んでくることも想定していたさ」


 そう言って男は映像に映るタクミとレイヤーを眺める。


 「さて、まずはこの二人を大人しくさせるか」


 そう言って彼は、自身の作り上げた人形達を向かわせるのであった。


 


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