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第一部最終話 この先も二人で歩む

 一面が白い世界で、白い髪のおかっぱ頭の少年、久藍タツタが自らの愛刀を磨きながら、自分たちとは異なる世界で過ごしている一人の少年、自分の兄である久藍タクミの事を考えていた。


 「・・・・・」


 彼はまだ知らない、自分が本来は今居る世界の住人ではない事を・・・・・。


 「・・・・・」


 そして彼は知らない、自分には弟と言う存在が居る事を・・・・・。


 「・・・・・」


 タツタは刀を鞘に納めると、この世界から姿を消して行った。






 タクミの恋人である黒川ミサキ、彼女はタクミの家へと足を運んでいた。


 「タクミくん、喜んでくれるかな?」


 彼女の手には手作りの弁当の入った袋が握りしめられていた。休日の今日、タクミの家に遊びに向かっているミサキはタクミに弁当を作り持って行く事を話している。

 ミサキが手作りの弁当を持参する事を告げると、タクミはとても嬉しそうな顔で楽しみにしていると言ってくれた。


 「ふふふ・・・・♪」


 ミサキは昨日のタクミの反応を思い出し、嬉しそうな表情をしながらタクミの家へと向かう。


 その時――――


 「少しいいですか?」

 「え・・・?」


 声を掛けられた事で足を止めるミサキ。

 振り返ると、そこには白髪のおかっぱ頭の少年が立っていた。


 「黒川ミサキさんですね」

 「はい、そうですけど・・・」


 少年、タツタは彼女が黒川ミサキである事を確認すると、彼女に告げる。


 「久藍タクミさんとこれ以上、一緒にいない方が良いですよ」

 「・・・・・え?」


 何を言われているのかよく分からず、呆けた声を出すミサキ。

 

 この人は突然、何を言っているのだろう? タクミ君と別れる? 何を言っているのだろうか・・・・・。


 「何を・・・言っているんですか?」


 ミサキは直接口に出し、タツタへと疑問の声を掛ける。

 

 「突然現れて、タクミ君と一緒に居ない方が良い?」

 「・・・・・」

 「ふざけないでください!!!」




 話題の中心となっているタクミは、自宅でミサキのことを待っていた。


 「ミサキ・・・遅いな・・・」


 約束していた時間がもうぎりぎりまで迫っていた。もちろん遅れてくることを攻める気はないが、何かあったんじゃないかと不安にはなる。


 「早く来ないかな・・・」


 タクミは居間のテーブルに突っ伏して呟いた。




 「あなたはタクミ君とどういう関係なんですか? そんな事を言うってことは彼と係わりがあるんですよね?」

 「それについてあなたに話すつもり・・・というより意味もありません」

 「でしたら私も話す事はありません!」


 ミサキはそう言うとタツタに背を向け、その場を立ち去って行く。

 その後ろ姿を見てタツタはミサキには届かない声量で言った。


 「これ以上、兄さんと一緒に入れば深くなりますよ――――」



 ――兄さんと別れ、切り離された時に生じる痛みが・・・・・――



 タツタはそう言うと、その場から離れて行った。

 近い未来、彼女は後悔するだろう。タクミと言う人物に深く接し、そして愛してしまったことに・・・・・。


 「まあ、言うべきことは言いました。ですので、彼がこの世界から消える際、あなたが泣いて懇願しても躊躇う事なく兄さんを連れて行きますからね・・・・・」


 すでに小さくなっているミサキに振り返り、タツタは冷酷な言葉を彼女に送り、そして消えて行った・・・・・。




 「もう、なんなのあの人は」


 ミサキは先程、彼に言われた事に怒りを覚えながらタクミの家へと向かって行った。

 すると、道中でミサキの携帯が鳴りだした。ポケットから携帯を取り出し、画面を開くとミサキの顔がほころぶ。


 「タクミ君からだ♪」


 ミサキは携帯の通話ボタンを押して、電話に出る。


 「もしもし、タクミ君。うん、うん、遅くなってごめんね。もうすぐそっちに行くから」


 ミサキは電話の終わり、辺りを見渡し人が居ない事を確認すると、小さな声で電話越しに居るタクミに囁いた。


 「タクミ君、大好きだよ・・・」


 ミサキがそう囁くと、電話越しでタクミの慌てたような声が聴こえてくる。突然の大胆な彼女の発言に驚いているのだろう。

 普段のミサキらしくないと言えばらしくないだろう。先程あんな事を言われたが故に、タクミに言っておきたかったのだ。


 「じゃあ、今から行くね・・・」


 そう言って電話を切ると、ミサキはタクミの待つ彼の家へと足を運んで行った。




 ミサキとの通話を終え、タクミは顔を赤らめながら頭を掻く。


 「ミサキのヤツ、急にどうしたんだ・・・?」


 なんだか彼女らしくないと思いながらも、先程の発言を思い返し、タクミは嬉しそうにミサキの到着を待った。






 タツタは自分の住んでいる元の世界へと戻ると、自分が現在、身を置いているある場所へと足を運んだ。

 そこはタツタ達、〝始末使い〟と呼ばれる存在のつどる場所であった。


 タツタが巨大な建物へと入って行くと、そこには自分以外の〝始末使い〟が揃っていた。


 「遅かったわね、ダーリン」


 その中の一人、ルアーネ・ネウロがやって来たタツタへと声を掛ける。


 「少し野暮用で・・・」


 タツタはルアーネにそう返すと、意識を切り替える。

 兄のことは一先ず置いて置き、今は自分の仕事に意識を集中する。






 タクミの家の前までやって来たミサキ、彼女はタクミの家のインターホンを押した。

 そして、それから約十秒後、玄関を開けてタクミが出て来る。


 「こんにちは、タクミ君」

 「ああ、待っていたよ」


 タクミの顔を見て安心感を抱くミサキ。

 これまで何度も自分を救い、そしてここまで共に歩んできた銀色の少年。自分はこの先の未来も彼と供に歩んでいく。たとえ周りが何と言おうとも・・・・・。


 「タクミ君・・・」

 「ん?」

 「これからも・・・よろしくね」

 「? どうしたんだ今日は?」

 「えへへ、何でもないよ♪」


 そう言ってミサキとタクミは家の中へと入って行く。



 しかし、この二人にはそう遠くない未来、大きな試練が降りかかることとなる。今の幸福に満ちている二人には、そんな事は想像もしていない。 


 だが、今はこの話はここまでにしておこう。どれほど大きな試練が、壁が立ちはだかろうともきっと乗り越えられるだろう、心から通じ合っているこの二人ならば・・・・・。




 魔法ができてしまったこの世界で   第一部完結




 物語は一度ここで終わりますが決して完結ではありません。少し間が空きますが、必ず連載は再開しますので、ここまで読んでくれた皆さん、今後のタクミやミサキの描く物語を少しの間お待ちください。

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