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第百四十二話 縮んだ少年達4

 学園が終わり帰路へと着くタクミ。

 そんな彼の隣にはミサキの姿も在った。


 「ミサキ、別にそこまで心配しなくても・・・」

 「うん、でも夕食くらいは作らせてよ。家には前もって連絡入れてあるから」


 タクミとしてはそこまで気を使わなくてもよかったのだが、ミサキの厚意を無下にするようなことは出来ず、彼女の気遣いを受け入れた。

 家につくと、ミサキはタクミの許可を貰い冷蔵庫の中身を確認し夕食の準備に取り掛かる。タクミもそれなりの料理は作れるがミサキよりは遥かに劣る為、出てくる料理に少し気持ちが高揚していた。


 「(ミサキの料理は何度か食べているが、どれもうまかったな~)」


 彼女の手料理を思い出しながら料理をしているミサキの後ろ姿を見つめる。

 そこから漂ってくる食欲をそそる匂いが部屋の中全体へと漂い始めて来た。


 「よし、完成ッ」


 ミサキは完成した料理を運んでタクミの元までやって来た。






 数十分後、食事も済んでまったりとするタクミ。


 「あ~、おいしかったぁ~」

 「ふふ、お粗末様です」


 食事が終わり、食器の後片付けを始めるミサキ。

 タクミも片づけを手伝おうとするがミサキに止められ、今は座っておとなしくしている。

 片づけを終えた後、タクミの隣に座り込むミサキ。


 「とりあえず食事はこれで済んだし、他に心配する事もないからあとはタクミ君だけで大丈夫?」

 「ああ、というか食事だって俺一人でどうにでもできたぞ」

 「う、ごめんね・・・余計なお世話だったかな?」

 「なっ! いやいや全然そんな事ないって!! むしろすごい得した気分です!!」


 落ち込むミサキに誤解を与えてしまったと思い焦るタクミ。

 そんな彼の姿を見てミサキが小さく息を吐いて喜んだ。


 「本当、よかった・・・」


 タクミはそんなミサキの頭をいつもの様に撫でようとするが、背丈がだいぶ低くなっている為、いつもの様に上手くミサキの頭を撫でる事ができない。

 しかし、いつもと比べるとつたなく、そして小さい手に頭を撫でられているミサキがそっと呟いた。


 「おんなじだ・・・」

 「え?」

 「タクミ君の手・・・」


 ミサキは自分の頭の上に乗せられている手を掴んで優しく握った。

 小さくなっても彼の手のぬくもりは変わらない。とても温かく、そして安心感を抱かせてくれる。


 「えへへ・・・」

 「うお、ミサキ・・・」


 ミサキは包み込むようにタクミのことを抱きしめた。


 「ミ、ミサキさん・・・?」

 「家に帰るまでもう少し余裕もあるし・・・少しこのままでいい?」


 普段とは違いとても愛らしい恋人の姿となったタクミ、しかしそれは今日一日だけのものだ。ならば今の内にもう少し堪能してもバチは当たらないだろう。

 こうして約数分間、テディベアの様に抱き着かれているタクミであった。

 だが、抱き着かれているタクミも――――


 「(小さいってのも・・・悪くないかもな・・・)」


 などと考えていたのであった・・・。






 そして、タクミ同様に幼くなった一人である桜田ヒビキ。

 彼は現在、マンションの自分の部屋の扉前で待機して中には入ろうとしなかった。

 入りたくても入れないと言った方が良いだろうか。


 「くそ・・・こんな姿・・・やはり素直に入れんぞ・・・」


 部屋の前にすでに数十分前から辿り着いているにも関わらず、その扉を中々開くことが出来ないヒビキ。 その理由は部屋で自分の帰りを待っているであろう一人の半獣人、彼女に今の姿を見られることを躊躇っているからだ。


 「(こんな情けのない姿、とても見せられん)」


 しかし、だからといってこのままここで一日を過ごす訳にもいかない。

 ヒビキが中々踏ん切りがつかずに部屋の前で待機し続けさらに数分後、扉の取っ手が動き出した。


 ――ガチャ・・・――

 「!!」


 目の前の部屋の扉が少しづつ開いて行き、そして扉という遮断物が取り払われ部屋の外にいるヒビキ、そして部屋から出て来た猫香が顔を合わせた。


 「え・・・・・?」

 「・・・・・」


 扉を開けたその先に居るヒビキを見て固まる猫香。

 そんな彼女を見てヒビキの肉体もおもわず硬直してしまう。


 それからしばらくの間、二人は無言の状態のまま佇んでいた・・・・・。




 「いやぁ~、まさかご主人様がこんなに可愛らしくなっているなんて♡」

 「く・・・離せ・・・ッ」

 「嫌です♡」


 猫香はヒビキのことを自分の膝上へと乗せ抱きしめている。

 そんな猫香の顔を手で押しのけながら、彼女の拘束から逃れようと抗うヒビキ。しかし、体格が違いすぎ、思う様に振りほどけない。

 

 「も~、照れないで下さいよ~」

 「くそッ! 今日はとんだ厄日だッ!!!」


 部屋に中にヒビキの苛立つ声が響き渡った。


 こうして、今日一日の間ヒビキは猫香に愛でられながら過ごす事となった。


 翌日、元に戻ったタクミが保健室へと顔を出すと、ヒビキが保健室へとやって来ており、自分や周囲の記憶が消せる薬品がないか、なければ作ってほしいとビョウに頼みこむ姿が保健室で見られた。

 


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