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第百二十三話 禁忌を犯した代償は重く

※今回、少し残酷な表現があります。

 別の空間へと跳び、無事にケシキ達から離れることに成功したホセ。

 人形達は恐らく・・・いや、連中の実力を考慮すれば十中八九全滅させられるだろう。だが、自分の目的は〝この世界〟で生きていく事ではない。


 「〝あの世界〟や〝この世界〟ともまた違う世界へ跳ぶ・・・そして自由を・・・」


 ホセが移動した場所は先程までとは違う森林地帯だ。

 そして彼はこれまで大勢の人間から搾取し続けた魔力を解き放った。


 「これだけの魔力を使えば・・・!」


 本来ならば人目の少ない夜に行おうと考えていたが、アヤネ達の襲撃のために予定が狂ってしまった。

 ケシキとの戦いでも、戦闘は人形達に率先させ、自分は魔力を温存していたために大した抵抗が出来なかった。


 「全てはこの魔法を発動する為・・・・・」


 そしてホセは手元に魔法陣を展開する。

 すると、その魔法陣から一枚の紙が出て来た。

 その紙面にはなにやら大掛かりな魔法陣が描かれている。


 「大魔法・・・≪別世跳躍≫・・・自分の今居る世界から別の世界軸へと跳ぶ魔法。これで・・・・・」


 ホセは全ての魔力をその魔法陣の紙へと注いでいく。

 すると、彼の目の前に巨大な半透明の扉が出現した。


 「おお・・・出たッ!!!」


 透明な扉は魔力を注ぐほどにより鮮明な物となっていく。

 そして、その扉が開き始める。


 「これで・・・・ついに・・・」


 目の前に開かれた新たな自分の道に手を伸ばしながら進んでいくホセ。

 そして、その扉に足を踏み入れようとした瞬間――――


 ――ザシュッ・・・・・――


 「あれ・・・?」


 その時、ホセの視界に不可思議な現象が起きた。

 彼の見ている視界が二つに割れたのだ。


 「あれ・・・?」


 二つに別かれた視界は徐々に左右に広がって行き・・・・・。


 ――どさぁ・・・・・――


 ホセの体が地面へと倒れる。

 彼の肉体は目に映っている視界同様に二つに別かれていた。


 そう、彼の体は・・・・二つに切断されていたのだ・・・・・。


 二つに切断されたホセの体からは、大量の真っ赤な血で彩られた色々な物が地面に溢れ出る・・・・・地面がホセの〝中身〟によって汚された。

 辺りには鉄の濃い匂いが充満して行く。


 「な・・に・が・・・・・・」


 二つに別れたホセの片方の肉塊がそう口にする。

 それが、暗夜ホセの最後の言葉であった。


 そこへ、二つの人影が近づいて来た。


 「愚かな事をしましたね暗夜ホセさん・・・別の世界軸へと跳ぶことは本来であれば禁忌中の禁忌・・・それを実行しようとしてしまえば手を下さざる負えませんよ」


 二つの内、白い髪の人影が地面で溢れ、散らかっているホセに向かい冷たい瞳で語り掛ける。

 その隣の赤い髪の人影が侮蔑を含んだ瞳で散らばっているホセを見ながら言った。


 「まったく・・・これは自業自得と思いながら逝きなさい。それにしても、まさかここまで簡単に獲る事が出来るなんてね・・・」

 「恐らく予想外だったんでしょう。俺達がここに現れた事が・・・・・」


 そう言って白髪の少年、久藍タツタはホセの体を一刀両断した刀を鞘に納めながら、ポケットの中からある魔道具を取り出した。


 「魔道具〝空間切断〟、自分以外にもこのような魔道具を持っている追跡者が居るとは思いもしなかったんでしょうね」


 彼らはホセの魔力を常に探知し続け、そしてケシキ達との戦闘で放たれたホセの魔力を特定し、そして彼が一人となったタイミングで彼と同じ方法で移動し、ホセを捕らえた・・・否、仕留めたのだ。

 

 地面に溢れているホセだった肉塊にタツタは語り掛ける。


 「暗夜ホセさん、アナタは〝俺達の居る世界〟で計三十を超える罪を犯し、その上に別の世界にまで跳んで逃亡を試みていたため、残念ながら処理させてもらいました」

 「でもよかったわね暗夜ホセ、別の世界へと飛び立つ事は出来たわよ・・・・・まっ、そこは罪人を釜茹でにする地獄だけどね」


 タツタの隣にいる女性、ルアーネはクスクスと笑いながら皮肉を告げる。

 そんな彼女に対してタツタが注意をする。


 「ルアーネ、不謹慎ですよ」

 「は~い」


 ペロっと舌を出して反省するルアーネ。

 もっとも、タツタにはふざけている様にしか見えないのだが。


 「まったく・・・」


 タツタは地面に溢れて汚れている箇所に手をかざし、魔力を溜める。


 「証拠隠滅」


 その一言と共に、少し大型の魔力弾を放ち、その一撃はホセの体とその周辺の大地を飲み込み、消し去っていった。


 「さて・・・戻りますか。やるべきことも終えましたし」

 「いいの?」


 自分たちの世界へと帰還しようとするタツタ。

 そんな彼にルアーネが疑問の声を投げかける。


 「どうせならお兄さんに人目でも会いに行けばいいのに・・・」

 「本気で言っていませんよね?」

 

 タツタは振り返りながら、呆れた様な目をルアーネへと向ける。

 

 「あの人に直接会うのはあくまで元の世界に連れ戻す時です。今ここで顔を合わせれば、その瞬間に確保に動かなければなりません」

 「それが何の問題だと言うの?」


 どうせ連れ帰るのならば同じことではないかと首を傾げるルアーネ。

 タツタは少し複雑そうな表情をした後、彼が接触を渋る理由を述べる。


 「あの人は確かに〝この世界〟の住人ではありません。しかし、こちら側で色々繋がりが出来ているようなので・・・もう少し位は堪能させて上げようと思っただけです」

 「兄想いなのね・・・」

 

 ルアーネがそう言うと、タツタは首を横に振って否定する。


 「もしそうなら、そもそも連れ戻そうとはしませんよ」


 そう言うと彼はこの世界から離脱し、元の世界とこの世界の狭間であるあの一面白い世界へと消えて行った。


 「・・・・・どうなるのかしらね、久藍タクミ」


 それに続き、ルアーネの体も消えて行った・・・・・。






 その頃、タクミ達は人形を全て片付け、ひと段落ついていた。まるで不死身の様に何度も立ち上がって来た人形達であったが、その体は突然崩れ出し、元の宝石に戻って行ったのだ。タクミ達はその理由が解らないでいたが、その真実はホセの死であった。彼が死んだ事により、魔道具の制御が解かれ、宝石達が人型を維持できなくなったのだ。


 「急に収まったが・・・どういう事だ?」

 「分かんないけど、でも良かったじゃん」


 理由は不明ではあるが、とりあえずは一難去った事に安堵の息を吐くレン。

 タクミとミサキもとりあえずは一息つくが、しかし、まだ終わりではない。


 「全員、今すぐに暗夜ホセの捜索に当たれ! このまま逃がす訳にはいかない!・・・・・そこのキミ達には少しここに来た経緯を聞かせてもらおうか」


 アヤネは部下たちに捜索を命じる。

 彼らはすぐさま行動を開始し、そしてこの場にはアヤネとタクミたちだけとなった。


 「さて、いろいろと話を聞かせてもらおうかな」 

 「うへぇ・・・事情聴取~?」


 レンがうんざりといった表情でアヤネのことを見る。

 だが、さすがに突然ここに現れた事情の説明はしておくべきだろう。三人を代表し、タクミはここまでの自分たちの経緯をアヤネに話し始めた。



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